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決戦は食後にやってくる?

ささやかなるぼくの願いより。本編最終話から約1ヶ月位たったエピソードになります。本作は、ピクシブで2次創作になっていますが、今回の企画に合わせて加筆修正されています。

「ただいま…葵…いる?」

私は、久しぶりの大学の授業から少しだけ寄り道をしてから自宅に戻ってきた。

大学の授業と言っても、卒業に必要な単位取ったし、卒論も年末に提出したから特に行く事はない。

けれども…すっかり忘れていた。結婚して、引っ越した事を大学に報告していなかった事に。

今日はその事務手続きとかもあって、年が明けてから初めて大学に顔を出したのだ。

久しぶりの大学は、卒論提出前の緊迫感が溢れていた。

ゼミに顔を出して、入籍が終わった事を皆に報告。結婚記念で撮った写真を見せた。

私達の突然の結婚には皆驚いたみたいだけども、私が一人でないことに安心してくれた。

教授も、驚いていたけれども、私達が高校時代の同級生で互いに同じ職場になること、同棲を経てから入籍しようとしていたが、不動産屋で気に入った物件が同棲に難色を示されたので、年内に入籍をすることで契約したという経緯を説明した。

先生は、できちゃった婚かと思ったみたいだけども、流石にそれはないですと私は笑って流した。

だって、やっとなれた管理栄養士と公務員。いきなりの妊娠で先延ばしに何てしたくない。



もっと早く帰る予定が時間以上に長引いたので、彼との待ち合わせを駅前から自宅に変更してもらって急いで戻ってきたつもり。

玄関で私が呼ぶと、お風呂場の方向から微かに彼の声がした。お風呂掃除しているのかな?

「お帰り。楓…遅かったね」

「うん、先生達がなかなか解放してくれなくって」

「俺もそうだったから…そんなものか」

「お風呂洗ってくれたの?」

「うん、たまには俺もやらないとね。ついでに、今夜は俺が用意したから。鍋だけども…いいだろ?」

「十分だよ。ようやく二人分が分かってきたよね」

私がそう言うと、彼は照れ臭そうにはにかんだ。

一緒に暮らし始めてから、二人分作るとちょっと足りなくて、4人分にするとちょっと余る。

お昼をお弁当にしたりすれば、この悩みは解消されるねなんて言っていたっけ。



ダイニングに入ると、既にカセットコンロの上にお行儀よく鍋が座っていて、具材もちゃんと治まっている。

私は少しだけ不安になった。あれっ?今日は大学休みだったのかな?

「葵、今日は大学…」

「行ったんだけども、先生がインフルエンザでいなかったから、すぐに戻ったんだ。だからその分家事をやっていたって訳」

彼の説明を聞いて私はほっとする。通学時間も私は1時間電車に乗るけど、彼は10分で大学に到着する。

すぐに自宅に戻ってきたのなら、ご飯の支度してお風呂掃除はできると私は納得した。

「楓は、後何回位大学に行くの?」

「卒論が通らないと、もう暫く行くことになるけど…多分平気だと思う」

「そっか。年内に出しちゃったんだものな」

「その分、ちゃんと早くから準備したんだから。今焦っている子達と一緒にされたくないね」

私は公務員試験と並行して卒論の為の実験をしていた。あの本当にしんどかった夏はもう過ごしたくない。

「とりあえず、少し早いけどご飯にしようか」

私達はダイニングに座って、夕食を取ることにした。



「御馳走様でした」

「明日は雑炊にするのね?私が準備するわ」

夕食が終わって、私はキッチンで食器を洗う。それから、明日の朝食の準備を少しだけした。

「一杯ご飯食べたけど…デザート食べたくない?」

「そんなに一杯入らないよ、葵」

「分かった。それじゃあ、俺と一緒に食べようよ。コンビニで新発売だったんだ」

彼が冷蔵庫からカップに入ったケーキとスプーンとフォークを持ってきた。

「はい、どうぞ」

私はそのケーキを見る。ええっと、これってなかなか買えない…話題のアレだよね。

私はそのケーキをマジマジと眺めた。



「楓…買ってきたんだ。よくあったね。中々買えないってニュースにもなってるのに」

「うん、コンビニに行った時に丁度入荷していたんだ。ラッキーだったよ」

そうだったんだ。彼は淡々と黒い蓋になっているパッケージを丁寧に開けた。

葵は意外にもこういう所は几帳面だったりする。一緒に暮らして初めて知った。

「でさ、楓。試してみない?」

「へっ?」

私は呆気に取られた。彼に言われた事の意味は十分に分かる。

ケーキの蓋には『初恋ショコラ』と書かれている。

今話題のアイドルグループ…総勢14人が代わる代わるCMをしていて、大学でも話題になっていた。

食物学専攻の教授は早速食べたらしいのだが…おいしかったとしか言ってくれなかった。

教授のお嬢さんは確か…教授の家庭事情を察して私は苦笑いをする。

「楓だって、こないだCMに釘づけだっただろう?」

どうやらCMを見ていた私を覚えていたようだ。その時の事を思い出して、私は一気に顔が赤くなるのを自覚した。

だって…どのCMもセクシーであんな風に迫られたら、靡かない女の子はいないと思うもの。



「本当に可愛いなぁ。で、どうする?」

「どうするって?何を」

私はあえて答えなかった。すると彼は私の隣に座ってその身を乗り出す。

「うんとね…こういう事だよ」

私の頤を軽く持ち上げて、顔が近付いてくる。私はそっと目を閉じた。

触れるだけのキスから徐々に深くなっていく。やがて名残惜しむように離れた。

「えっと、そのドヤ顔はどうなの?ねぇ?ねぇ?そこは必須なの?」

私は少しだけ頬を膨らませて反論をする。

「まあまあ。それじゃあ、ケーキをどうぞ。あーんして」

彼は微笑みながら、私にケーキを差し出してくる。仕方なく、私は口を開けるとひんやりと冷えたケーキが口に中に押し込まれる。

確かに濃厚なチョコレートケーキ。甘さ控えめだから、お酒と一緒でも食べられそうだ。

私はそのパッケージを見る。通常のものよりカロリーが控えられていると書いてある。

ターゲット層はお昼休みのOLさんといったところだろうけど、これなら甘いものが好きな男性も好きだろう。

「で、どうだった?」

「何が?」

「俺達のキスとケーキ。どっちが濃厚?」

「私だけが答えるのは…ずるいと思います」

今度は私が彼の頬を両手で包み込んで顔を近づけて唇を合わせる。



彼とキスするのも、ケーキを食べるのも好きだけども…この食べ方を奨励していないと思うの。

それに、このままじゃケーキ…食べ終わるのいつになるんだろう?

キスをしながら私が思ったのは、ここだけの話です。


すみません…今回の企画の元ネタをリメイクさせて貰いました。

元ネタが気になる方はヘッポコですが探して下さい。


8/21 ささやかなる僕の願いに転載しました。

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