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彼女の事情 彼氏の行動

今回は、甘くありません。本当に甘くありません。

そんなの認めません!!って人はブラウザーバックです。

でも……後悔してない(笑)

「ひっく……ひっく……」

私は涙でぐしゃぐしゃになった顔で、ベッドにうつぶせになっていた。

どうしてこうなったんだろう?理由がはっきりと分からない。

もう一度、数日前から今日の放課後に起こった事をもう一度思い出すことにした。


三日程前、は朝から弱い雨が降っていて、放課後になると一気にいなくなる運動部の子たちも練習が休みになって皆でのんびりと雑談をしていた。

女の子が集まるとアイドルの話とか好きな男の子の話になるのは、ごく自然な話。

私達の話のお題も、アイドルの新曲から、新作の初恋ショコラのCMの話になっていた。

中学生な私達にはちょっとお兄さんアイドルのビビッドの新作。秋の今は学園祭のワンシーンのCMだ。

金曜日の深夜にCMをモチーフにしたドラマも放映が決まっている。丁度今夜から始まるって事で皆の興味はそこに集まる。

「最初は誰かな?」

「最初は正樹だったでしょ?」

「次は双子で」

「夏が樹だったよね。……ってことは?」

「今回は楓太?」

皆はどんなドラマになるのか話題にしている。今分かっているのは、学園ドラマということだけ。

私……夏海はビビッドは皆程好きな訳ではない。けれども、このドラマだけはDVDを買っている。

まだ、人が好きになるってよくわからない。皆が読んでいる恋愛小説も漫画も何となく……な状態。

そんな私を皆はおこちゃまって言うけれども、私にもそんな日が来ると思っていた。


私の活動している茶道部は元々お休みの日。学校帰りにピアノのレッスンに寄る為、時間まで図書室で時間を潰すことにした。

放課後の図書室は、昼休みに比べると静かで宿題をやるにも、読書をするにも最適な場所だ。

いつも座るテーブルに荷物を置いて、椅子を引く。私が利用しているのは入り口から一番遠いテーブルだ。

私の背後にある書棚は貸し出し禁止の本が多いから、普段は人の出入りが少ない。

私は今日の宿題になっていた生物のワークをやることにした。

文化祭前には中間テストがある。来週にはテスト範囲が発表されるはずだ。

私は課題は終わったけれども、テスト勉強としてテストの範囲になりそうな箇所を復習することにした。

その時、背後でボソボソと声が聞こえるのを感じた。

あまり大きくはないけれども、人の利用のほどんどない時間帯だからか凄く声が響いている。

男女何人かが固まって話しているようだ。振り向けば誰か分かるけれども、特に気には留めなかった。


「そういえばさ、お前の好きな女……えっと誰だっけ……」

「茶道部のあの子だよ」

茶道部は全員で10人程のどちらかというと小さい部だ。ここでそんな話をしていると私に筒抜けなのにね。

「あぁ……見た目大人しそうな女子の集団な」

「だけどさ……ああいう子達程、陰で何をしているか分からないんだから」

ある女子の棘のある一言が心に刺さる。陰で何をしているか分からない……か。

あなた達、自分達のしている事を棚に上げてよく言えるよ……と逆に感心する。

この時間に聞いた事のない声だから、普段は運動部に入っているのだろう。

「何だよ……それ?」

「おしとやかに見えて、遊んでいるかもしれないでしょ?クスクス……」

遊んでいるって?どこでどんな遊びをしているって言いたいの?

言われている内容も内容で反論したくもなるけど、直接自分が言われていないからどうにもならない。

内心ムカムカしながらもその会話と聞くしかないのだ。残念なことに。


「じゃあ、地味な子ほど遊んでいると?」

「皆とは言わないけど、あながちあり得るでしょう?私達だといつもハードな練習しているのに、あの子達は違うんだから」

うーん、運動部よりは楽かもしれないけど、礼儀作法には厳しいよ?

部活のない日の皆は流石に知らないけど、私もピアノのレッスンの日以外は寄り道しないし……。

「だったらさ、告ったら余裕かもしれないってこと?」

「ないとは言えないねぇ。やってみなよ」

「お願いしたらやらせてくれるって訳?」

「さあ?それは本人次第でしょ?」

何か……変な話に進んでいない?これ以上ここにいるのは嫌だったから、私は彼らに悟られないようにそっと席を立った。


そして今朝の事。いつもの通りに登校すると下駄箱に一通の封筒が入っていた。

ノリづけされていないそれを開くと、放課後体育館裏に来てほしいと書いてある。

放課後の体育館裏って普通なら警戒最大値モノだと思うんだけども。

それに差出人の名前もない。受取人……は私だ。

一時期、こういう悪ふざけが学年を通して流行った事があった。今回もそれだと思って私はスル―することにした。

放課後、いつものように茶道室での部活をして、最終下校時間前には解散になった。

いつもなら皆と一緒に帰るのだが、その日に限って顧問の先生と文化祭の打ち合わせの為に居残りになってしまった。

茶道室は、特別教室のフロアーにある。隣は生徒会室で、文化祭前の準備で忙しそうな声がする。

今日の部活を休んだメンバーがいた為、残ったお茶菓子を差し入れる為に生徒会室に立ち寄る。

「こんにちは。茶道部ですけど……」

「いらっしゃい。五月蠅かった?」

「いいえ。文化祭の打ち合わせで居残りなんだけども、良ければ差し入れにと思って……」

私は懐紙に包んだ今日のお茶菓子を側にいる役員に渡した。

「いいの?貰っても?」

「うん。まだ時間かかるでしょ?良ければどうぞ」

「それじゃあ、好意を有難く頂きましょう。ご馳走様です」

その後、顧問の先生が来られたので打ち合わせをして、文化祭当日の予定を簡単に決めた。

今度の部活で皆で役割分担を決めればお終いになるはず。

私が昇降口に向かう事が出来たのは、最終下校時間だった。

私が茶道室の鍵をかける時、生徒会室ではまだ作業をしていた。

生徒会だけは最終下校時間は免除されている。それだけ多忙なのだ。

皆の為に頑張ってくれるメンバーにはいつも凄いなぁと感心するだけ。


下駄箱でスニーカーを取り出そうとした私の腕を急に掴まれた。

「ねえ、放課後待っていたのに」

「えっ?」

そこにはバスケ部のエースと言われている男の子がいた。

皆はカッコいいって言っているけれども、私はそうとは思っていなかった。

「それとも忘れていたのかな?」

「だって……名前がなかったから。悪戯かと思ってた」

「ハハハ。それは御愛嬌。俺、君の事好きなんだ」

「はあ」

徐に始まる会話は完全に成立していない。思い切り空回りだ。

「付き合ってくれない?」

「それは……即答できません。好意は有難いけれども、あなたの事良く分からないから」

好みのタイプでもないし、良くも知らない人に告られたからって付き合うのは私は嫌だから断った。

「なんだよ!それ?自分がいい女だと思い込んでる訳?」

何で……そうなるんだろう?この人……もしかしたら自意識過剰なのかな?

掴まれている手に力が込められる。

「ちょっと……止めて下さい」

「嫌だね。女なんて、力では勝てないんだよ」

スチール製の下駄箱に背中を押しつけられる。背中がぶつかって痛くて一瞬目を閉じた。

その瞬間、目の前が暗くなった気がして、更に何かに塞がれた。

「んん!!」

「黙れよ。このアマ。調子に乗ってんなよ」

今度は顔が近付いて、唇に冷たい感触がした。


えっ?ナニ?私……今……何が起こったの?

やがて、茫然とした私を残して彼は去って行った。

「んだよ。お高く止まりやがって」

そんな捨て台詞と共に。

私……彼に……キスをされたんだ……。

一気に自分に起こった事にようやく理解できた私は、声にならない声を上げた後、意識を手放した。


「大丈夫?昇降口で倒れたのよ」

保健室で、不安げに私を見つめていたのは顧問の先生だった。

「瀬……せんせ……」

「いきなり悲鳴が聞こえて、慌てて行ったらあなたが倒れていたの。ねえ、何があったの?」

どこまで話していいのか分からないのと、自分に起こった事を話すのが恥ずかしくって私はパニックになる。

「えっと……その……」

言葉にできないけれども、唇を擦っていた私の手を先生が止めた。

「何となく……分かったわ。今はこれ以上聞かない。落ち着いたら……その時は教えてね」

「はい……」

今は何て言っていいのか分からない。唯一言えることはファーストキスが奪われたこと。


その後、どうやって学校を出たのか分からない。気が付いたら私の目の前にビビッドのポップが目に入った。

3日前に放課後、皆で初恋ショコラの話をしていた事を思い出した。

私のファーストキスも、CMの様にドキドキしたり、キラキラしているのだと思っていた。

なのに、こんな形で奪われてしまった。相手が好きな人ならまだ良かったのに。

そう思うと、どんどん視界が歪んでいく。私の両目から涙があふれ出した瞬間だった。

交差点で、信号待ちをしていた見知らぬお兄さんが、『使って』とハンカチを貸してくれた。

私は拒否したんだけども、『そんな顔じゃお母さんが心配するんじゃない?』って言われて納得して借りることにした。

男の人って、こんなに優しい人もいるんだ。こんな人が彼氏だったら、泣く事も無かったかもしれない。

やがて信号が青に変わる。お兄さんと一緒に信号を渡った後に、お兄さんが私に語りかける。

『辛い事だけじゃないよ。頑張って』そう言ってお兄さんはいなくなった。


なんとか家に帰って、すぐに顔を洗って、具合が悪いから寝ると言って自分の部屋に引きこもった。

張りつめていたモノがプチンと切れてしまった様な気がして、再び涙が流れる。

このキスを涙でなかったことにできるのなら……そうしてしまいたい。

ラジオの電源を付けると、初恋ショコラのCMが流れる。

今は……ケーキもぼくのキスもいらない。欲しくない。

暫く泣いて、私の頭の中にはさっきのお兄さんの言葉がストンと落ちてきた。

このキスが、私の何かを変えてくれるのかもしれない……そんな気がした。


女の子は名前がありません(違った。名字だった。訂正です)

お兄さんは……今日のお茶菓子で既に登場しているある人ですが伏せます。

なぜか?新作のネタが降臨したからです。

その前に、手つかずどうにかしろよ!とか2次どうすんだよ!って言わないで

(もちろん頑張りたいです。でも浮かんだんだもん♪)

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