放課後ガールズトークこっそり聞いてみない? その2
「勇者とは?」
「ポニョ腹を気にせず、ヘソ出しで街を歩く人」
「強ぇ……」
「勝てる気がしない」
「安心しろ。お前のお腹なら勝てる」
「勝っても全然嬉しくない。それに外でヘソなんて出さない」
「出しちゃえよ。そんなことできるのは若いうちだけだぞ。あとで後悔する」
「絶対黒歴史になる」
「先駆者は理解されないものだ。そのうち時代が追いつく」
「本当? 私の時代はいつ来る?」
「約200年後」
「死んでるわ」
「価値あるものは死後に評価される」
「生きてる間は笑われっぱなしじゃん」
「気にするな」
「気にする!」
「お前ら、もっとJKらしい話しろよ」
「勇者なんて無茶振りされたから合わせただけ」
「そうそう」
「悪かったよ。じゃあJK定番の彼Pトークでも」
「なに……!?」
「こいつらに彼Pなんているわけないだろ。私を除いて」
「男子との生涯会話時間、二十分くらいだぞ。私以外は」
「自分だけ例外みたいに言ってるけど、お前も彼Pいないだろ」
「いるわ!」
「ほう、証拠は?」
「無理」
「やっぱりいないじゃん」
「いるって」
「どこに?」
「脳内 (ドヤぁ)」
「イマジナリー彼Pだと!?」
「……実体ないじゃん」
「それでどうしてドヤれるんだ?」
「大切なのはハート」
「ただの妄想だろ」
「いいから聞け。彼Pとの出会いを語ってやる」
「長そうだな」
「ショートで」
「アキバで紳士と子犬系男子がイチャイチャする本を買いに行った時のこと」
「ストップ」
「何?」
「設定からしてヤバい」
「JKでも読める本だから平気」
「そこじゃない。彼Pが出てくる気配ゼロなんだけど」
「焦るな。ちゃんと登場する」
「信じるぞ」
「両手いっぱいに本を抱えて、前が見えないまま歩いていたら――」
「……どれだけ、けしからん本を買ったんだ?」
「レジへ向かう途中で人にぶつかって、本を全部ぶちまけた。その相手が今の彼P」
「出会い方がひどいな」
「『大丈夫ですか?』って声をかけてくれて、私がうんって答えたら、一緒に拾ってくれたの。さらに『大変そうだから』って、そのままレジまで運んでくれた」
「紳士と子犬系男子がイチャイチャする本を、何も知らない男子に持たせたのか?」
「うん」
「どんな罰ゲームだよ」
「しかも彼、よく見たら本に出てくる子犬系男子に少し似てて、私のハートがトゥンク」
「妄想の解像度が上がっただけだろ」
「レジに着いたら、店員さんが今度は本に出てくる紳士そっくりで、またトゥンク」
「……予想外すぎるけど、ときめき過多だな」
「買い物が終わったあと、近くのマァクドでお昼をご馳走して、意気投合。そのまま付き合うことになりました」
「意気投合する要素あったか?」
「それ以来、デートでは出会いの本屋へ行って、男子イチャイチャ本を彼に持ってもらい、レジの紳士店員と遭遇するまでがルーティン」
「彼P、お前の妄想に付き合わされてるだけじゃん」
「何か問題でも?」
「問題しかない」
「紳士×子犬系男子はマジてぇてぇ。仕方ない」
「ダメだ。腐ってやがる」
「いいでしょ? 私の彼P」
「全然羨ましくない」
「えっ、どうして!?」
「だって妄想だし」
「リアル男子は無理」
「だよな。幼児舎からずっと女子しかいない環境だったし、今さら難しいか」
「まだ分からないだろ。高校生活はあと二年半ある。彼Pの一人や二人、余裕だって」
「……中等部の頃も同じこと思ってた」
「ふむ」
「大学、大学院へ進んでも女子しかいない」
「そういう学校だからな」
「でも世界の半分は男でしょ?」
「うん。そして私たちは男がいない、もう半分の世界で暮らしてる」
「男のいる世界には行けないの?」
「うん」
「どうして!?」
「さっき自分で『リアル男子は無理』って言ってただろ」
「あ……そうだった」
「さて、そろそろ帰るか。今日もスタイルバッハ寄る?」
「またラテ奢らせる気か?」
「もちろん」
「みんなも行く?」
「もち」
「ゴチよろ!」
「今日も奢らねーよ!」
「腐ってるくせにケチ」
「腐ってるのは、あの一見おしとやかそうな奴だ」
「……ん?」
「どうした?」
「また誰かに聞かれてた気がする」
「気のせいだって。さて行こっか」
「うぃ」
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