第7話 光の名の下に
大聖堂前広場。
戦いの痕は、
まだ生々しく残っていた。
砕けた石床。
血に染まった地面。
倒れ伏す黒衣の死体。
だが、
人々の視線は
一点に集まっている。
白い光に包まれた
一人の少女。
ミレーヌ。
彼女の周囲に、
無数の小さな光粒が
舞っていた。
聖属性が、
安定している証。
「……奇跡だ」
誰かが呟く。
聖光教会の上級司祭たちは、
蒼白な顔で
その光景を見つめていた。
王子リュートが
一歩前に出る。
「聖女ミレーヌ・アルセリア」
その声は、
広場全体に響いた。
「本日をもって、
王国公認の聖女とする」
一瞬の静寂。
次の瞬間、
大歓声が爆発した。
「聖女様だ!」
「本物だ……!」
ミレーヌは
戸惑ったように
周囲を見回す。
バルトは、
少し離れた場所で
その姿を見つめていた。
肩に巻かれた包帯。
顔色は、
まだ悪い。
「団長」
ダニエルが
隣に立つ。
「生きてて
良かったです」
「お前もな」
短く答える。
王国騎士団が
生き残った黒衣の者を
次々と拘束していく。
「教会関係者も
含めろ」
バルトは
指示した。
「例外はない」
その頃。
ミレーヌは
リュートの前に立っていた。
「……私、
聖女なんですか」
「そうだ」
リュートは
優しく微笑む。
「君が
望むかどうかは
別として」
ミレーヌは
視線を落とす。
「……怖い」
リュートは
少し考え、
言った。
「君には
盾がいる」
そう言って、
バルトを見る。
ミレーヌも
振り返る。
目が合う。
バルトは
小さく頷いた。
ミレーヌの胸が
少しだけ
温かくなった。
数日後。
王城・裁判室。
聖光教会の
過激派幹部たちが
並べられていた。
証拠は
十分すぎるほどある。
判決は、
即日。
「反逆罪により、
死刑」
室内に、
重い沈黙が落ちる。
バルトは
それを
静かに見つめていた。
正義感よりも、
責任感だった。
「終わったな」
ダニエルが
ぽつりと言う。
「いや」
バルトは首を振る。
「始まっただけだ」
王国は、
変わる。
聖女が誕生したことで、
均衡が崩れた。
それを
良しとしない者は
必ず現れる。
王城の回廊。
ミレーヌは
一人で歩いていた。
豪華なドレス。
豪華な装飾。
だが、
足取りは重い。
「ミレーヌ」
声をかけられる。
バルトだった。
「……何」
「護衛は
俺だ」
「知ってる」
少し間があって、
ミレーヌは言う。
「……逃げない」
バルトは
少し驚く。
「私、
聖女になる」
「ちゃんと」
バルトは
頷いた。
「なら、
俺は剣になる」
ミレーヌは
小さく笑った。
「……変な人」
だが、
その笑顔は
もう、
偽物ではなかった。
光は、
確かに
ここにある。




