第4話 聖なる嘘
夜。
王城の一室。
窓の外には
静かな月光が差し込んでいる。
ミレーヌは
ベッドの端に腰掛け、
膝を抱えていた。
部屋の隅には、
無言で立つバルト。
護衛という名の、
見張り役でもある。
「……見ないで」
小さな声。
「何をだ」
「私の顔」
ミレーヌは
俯いたまま言う。
「私は……
気味の悪い存在なんでしょう」
バルトは
首を振った。
「そうは思わない」
「嘘」
即答だった。
「闇属性の女。
悪役令嬢。
誰もがそう言う」
ミレーヌの指が
強く握られる。
「私は……
ずっと閉じ込められてた」
「屋敷の地下室に」
バルトの眉が
わずかに動く。
「魔力検査を
受けるたび、
違う結果が出た」
「闇。
聖。
光。
でも、
教会は言った」
「闇に決まっている、って」
ミレーヌの声は
震えていた。
「だから私は
闇の令嬢にされた」
「都合のいい
悪役に」
バルトは
黙って聞く。
「私は……
普通に生きたかった」
沈黙。
しばらくして、
バルトが口を開く。
「光は、
恐れられる」
「闇よりもな」
ミレーヌは
顔を上げた。
「どういう意味?」
「聖属性は、
王国の象徴だ」
「王の力を
脅かす存在でもある」
「だから、
管理できない聖女は
排除される」
ミレーヌの目が
見開かれる。
「私は……
邪魔だから
殺されるの?」
「させない」
即答だった。
ミレーヌは
息を呑む。
「どうして……
そこまで」
「俺は騎士だ」
「守ると決めた」
それだけだった。
ミレーヌの目から
涙がこぼれた。
「……ありがとう」
その声は、
初めて素直だった。
翌日。
バルト、
ダニエル、
リュート王子は
密かに集まっていた。
「教会の文書庫を
調べた」
リュートが言う。
「過去二十年で、
聖属性の子供が
三人消えている」
ダニエルが
歯を噛みしめる。
「全員、
事故死扱いだ」
バルトは
静かに言う。
「組織的だな」
「おそらく、
教会内部の
過激派」
リュートは
拳を握る。
「連中は、
管理できる聖女だけを
欲している」
「ミレーヌ嬢は
規格外だ」
バルトは
立ち上がる。
「大会を
利用している」
「護衛役を選ぶふりをして、
処刑役を
決めるつもりだ」
沈黙。
「決勝までに、
裏切り者を炙り出す」
バルトは言った。
「ミレーヌは
俺が守る」
リュートは
ゆっくり頷く。
「王族として、
協力する」
ダニエルが
笑う。
「じゃあ俺は、
団長の背中を
守ります」
三人の意思は
固まった。
その夜。
ミレーヌは
窓辺に立ち、
月を見ていた。
部屋の外で、
バルトが見張る。
「……ねえ」
小さな声。
「何だ」
「私が
聖女だったら」
「あなたは……
嫌?」
バルトは
即答しなかった。
少し考え、
言う。
「関係ない」
「ミレーヌは
ミレーヌだ」
沈黙。
それから、
小さな声。
「……変な人」
だが、
その声は
少しだけ
嬉しそうだった。
決勝戦まで、
あと二日。




