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第3話 背中を預ける者


翌朝。


王都リュミエールは、

昨日の騒動が嘘のように

再び活気を取り戻していた。


聖女選定戦。


護衛役選抜大会。


中止などあり得ない。


王国にとって、

それほど重要な儀式なのだ。


バルトは

大会用の簡易控室で

鎧の留め具を確認していた。


「団長。

寝ました?」


ダニエルが

心配そうに尋ねる。


「少しな」


嘘だった。


一睡もしていない。


ミレーヌの周囲には、

常に二重の警備を敷いている。


それでも、

不安は消えない。


「今日の予選は

二対二の模擬戦です」


ダニエルが

資料を差し出す。


「団長と俺。

同じ組ですよ」


「好都合だ」


バルトは

短く答えた。


同時に、

遠くで歓声が上がる。


試合開始の合図。


闘技場へ出る。


観客席は

昨日以上に埋まっている。


そして、

最前列の貴賓席。


ミレーヌが座っていた。


周囲には

王国騎士が並ぶ。


だが、

彼女は

孤独そうだった。


視線が合う。


すぐに

そらされる。


バルトは

気付かれぬよう、

小さく頷いた。


――必ず守る。


その意思表示だった。


「次の試合!

王国騎士団長バルト、

副団長ダニエル組!」


対戦相手は、


冒険者Aランク、

アラン。


冒険者Bランク、

マーク。


観客が沸く。


「豪華すぎるだろ!」


「実質決勝じゃねえか!」


バルトは

剣を抜く。


ダニエルも

双剣を構える。


アランは

細身の剣。


マークは

斧を担ぐ。


「手加減はしねぇぞ」


アランが笑う。


「こちらもだ」


合図。


マークが突進。


巨大な斧が

頭上から振り下ろされる。


バルトは

正面から受け止めず、

横へ流す。


同時に、

ダニエルが

懐へ飛び込む。


「はあっ!」


双剣が

マークの鎧を削る。


だが、

アランが割り込む。


バルトは

即座に間に入った。


剣と剣が

ぶつかる。


火花。


「さすが団長さん」


「悪くない」


短いやり取り。


戦場は

四人分に分断される。


ダニエル vs マーク。


バルト vs アラン。


アランは

速い。


剣筋が鋭い。


だが、

バルトはさらに速い。


一歩、

半歩、

踏み込む。


アランの体勢が崩れる。


その瞬間――


観客席の上段。


バルトの視界に、

黒い影が映った。


昨日と同じ装束。


二人。


「ダニエル!」


叫ぶ。


ダニエルも気付いた。


「くそっ!」


バルトは

アランの剣を弾き、

強引に距離を取る。


「試合放棄か!」


アランが叫ぶ。


「事情が変わった」


バルトは

地を蹴る。


観客席へ向かって

一直線。


黒装束の男たちは

ミレーヌへ向かう。


「させるか!」


ダニエルが

マークを蹴り飛ばし、

追従する。


一人目。


バルトの剣が

胸を貫く。


二人目。


ダニエルの双剣が

首元を裂く。


血が噴き出す。


観客が悲鳴を上げる。


だが――


三人目がいた。


貴賓席の真下。


ミレーヌの背後。


バルトは

全力で跳んだ。


間に合わない。


そう思った瞬間。


光。


眩い光が

ミレーヌの周囲を包む。


刃が、

弾かれる。


「……何?」


ミレーヌ自身が

一番驚いていた。


バルトは

着地し、

彼女の前に立つ。


剣を構える。


「下がれ」


三人目の男は

後退した。


「聖属性……」


男が

呻く。


バルトの背後で、

ミレーヌが

震えていた。


彼女は

気付いてしまった。


自分の正体に。


バルトは

振り返らなかった。


ただ、

低く言った。


「俺がいる」


その言葉が、

彼女の心を

初めて支えた。


試合は、

無効試合となった。


だが、

大会の意味は

変わった。


聖女選定戦は、

もはや儀式ではない。


戦争の前哨戦だった。


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