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第一部 第一章 第壱話「プロローグ」

皆さん初めまして。コップの納品書と申します。名前は適当に変換してたらこうなりました。まだまだ初心者ですが、頑張ります。

死とは、全生物に訪れる人生と言う名の物語のエピローグである。例外はない。生物は死ぬ。一匹残らず、まずは肉体の消滅、肉体に限界が訪れ、死に至る。


続けて来るのは記憶の消滅。偉人でもない限り教科書に載ることもなく、人々の記憶から忘れさられる。しかし、その避けようのない結末に抗う方法がある。


とても正気とは思えない、狂った方法だ。


ある人は言った、自己という一つの存在を永遠に後世に残すには、転生を繰り返せばいい!と

馬鹿げてる、イカれてる、そう思っていた。



二人の子供が無邪気に草原を駆けていた。空からはギラギラと太陽が二人を照らし、セミの鳴き声だけが周囲に響き渡る。少女は少年を置いて一人でどんどんと先に行ってしまう。


まるでうさぎとかめを両者の性格を入れ替えて再現したような構図だった。


「待ってよ、ルカ!」

少年は少女へと呼びかける。少年の肩にかけている虫かごには、既にいっぱいに蝶が入っている。少女「ルカ」は自分の背丈の2倍はあるような坂を、一瞬で登ってしまった。


少年もルカに続いて少年も坂を登ろうとするが、途中でバランスを崩してしまった。体重が後ろ向きにかかり、頭から倒れそうになる。その拍子に青空が目に入った。


人の脳は深刻な状況に陥った時、脳がフル回転して周囲の情報をとにかく集めようとするというのを聞いたことがある。これもまたそうなのだろう。


ああ、なんて奇麗なのだろう。そんなことを考えている間にいよいよ地面がそこまで迫っている。その時、ルカが少年の手を取り、そのまま坂の上まで引き上げてくれたのだ。


少年の体は平均より軽かったが、同い年の子供が子供一人を持ち上げるなんて信じられなかった。

「流石は魔族だな。」


息を切らし、膝に手を置きながらルカを見上げる。白く透き通った肌、美しい漆黒の長髪の下から、異様にとがっている耳が見え、種族の違いを痛感した。ルカは魔族だった。


人間に比べて身体能力で勝り、寿命も人間とは比べ物にならない、そんな種族であったが、今や見下され、搾取され、奴隷のような扱いを受けている。その理由は簡単だ。魔族は人間との戦争に負けたのだ。


始まりは一つの殺傷事件だった。革命暦511年のある結婚式場で、魔族の男性と人間の女性が結婚式を挙げていた。そこに一人の魔族の女性が乱入し、人間の女性を刃物で殺してしまったのだ。


それが直接的な引き金となった。そして、長く続いた「ノスフェラトゥ戦争」は魔族の敗北で決着した。


ルカも例外ではなく、少年の家系「シュバルツァー家」の使用人だった。

「やめてよルーク。」


ルカは苦笑いを浮かべながら少年「ルーク」にそう言葉を吐く。ルカの両目はまるで宝石のように青く光っていて、ルカの性格を表しているようだった。


そして、またルカが走り出そうとした、その時だった。二人の頭上を黒い何かが目にもとまらぬ速さで通り過ぎて行った。


戦闘機だ!しかも10や20なんてもんじゃない!それはまるで巨大な昆虫が群れを成して餌場に向かっているようだった。ルカの持つラジオの電源をつけると、ノイズと共に声が聞こえてきた。


”速報です!我々ネクロポリス帝国は、ユドラル共和国とデラシュベラ王国に宣戦布告しました!!”


革命暦1862年、ネクロポリス帝国という国家に新しく即位した皇帝が、共和国と王国に宣戦布告した。


帝国は3つの覇権国の中で最も力を持っており、これは事実上人間の支配者に相応しい国を決める戦争だった。



共和国や王国をはじめとする、ラピス公国や、鏡明連合、帝国による統一を望まない国が参戦して、戦争はどんどんと肥大化していった。


それによる兵力の不足を懸念した皇帝が、魔術を扱うことが出来る魔族を強制的に徴収した。


魔術を使うには魔力はもちろんのこと、体内に存在する魔力回路というものが必要なのだ。その魔力回路に異常がある者は、魔術が撃てない。ルカは魔術が使えた。


それによりルカとルークは離れ離れになってしまった。



革命暦1863年、帝都カリジュリア、アレウス宮殿

「シュバルツァー様、御入来!」

重厚な扉が開かれ、ルークはカーペットの上を歩いていく。ここは謁見の間。ルークは皇帝に戦争をやめるように言いに来たのだ。ルークの父は公爵で、皇帝への謁見なども認められている。


ルークに向かって貴族たちが頭を下げるが、その口から出るのは心無い言葉ばかり。


「はたまた何故ルーク様は謁見を?」

「何でも戦争をやめるように言いにきたとかですってよ。しかも魔族のためって、ドシェール卿。」


「魔族?嗚呼口に出すだけで腹立たしい、触れらるだけでももう生きていけない。あの下劣な輩に情を?シャバルツァー家も落ちたものだな。」

そんな貴族に目もくれず、ルークは皇帝の前に立つ。


皇帝は玉座にふんぞり返り、自身の権力を示すかのように宝石や金などが付いた服を着ている。長いその黒髪はオールバックに纏められていて、そして緑色の鋭い目玉がギラリとルークを睨む。


それに臆することなく、ルークは皇帝に向けて言葉を吐く。


「お初にお目にかかります、皇帝陛下。アラン・シュバルツァー公爵が長子、ルーク・シュバルツァーと申します。」

「シュバルツァー?ああ、名前は聞いているよ。」


「それはどうも、ありがとうございます。大変失礼ではございますが、単刀直入に質問させていただきます。何故戦争を?」

ルークはすぐに本題に取り掛かった。何とかして戦争をやめさせ、ルカを取り戻すために皇帝に立ち向かう。


「たわいもないことを。領土のためだ。」

「領土?何故それほどまでに領土を欲するのですか?」

「子供には分からないことだ。」


皇帝の煮え切らない回答にルークは徐々に皇帝への怒りを募らせていく。嗚呼、ここで皇帝を殴って屈服させてルカを取り戻すことが出来ればどれだけいいだろう。


しかし、そんなに簡単にはいかない。ルークは拳を握りしめると、皇帝に言葉を返す。


「では、せめて魔族の徴収を任意性にしていただきたいのです!あなたにとっては魔族がどれだけ死のうと平気なのでしょうけど、そんな身勝手に命を.......!!!!!!」


「ルーク・シュバルツァー、貴様、虫を殺したことはあるか?」

「へ!?」

皇帝の意図が見えない質問に、ルークはそんな素っ頓狂な声を上げてしまう。


魔族の徴収と虫を殺すことに何の関係があるのだろう?そんなことを考えても、これは皇帝の質問、答えなくてはいけない。

「それは、1、2回くらい........。」


ルークは勢いを失い、たどたどしく答える。何か言い返そうとルークは考えたが、いくら考えても返す言葉が見つからない。


金魚のように口をパクパクさせるルークを視線で制した皇帝は畳み掛けるように言葉をぶつける。

「その虫たちは殺されていいなどと言ったのか?言ってないであろう?すなわち、貴様は身勝手に命を弄んだんだ!!」


皇帝は激昂して立ち上がる。その姿に恐怖し、ルークは一歩下がってしまった。先ほどまでの勢いはどこえやら、ルークは格の違いを感じ、怖気ついてしまう。


「この者をつまみ出せ!!」

皇帝の命令に従い、部屋の壁際で待機していた兵隊たちが、ルークをつまみ出そうとする。このままつまみ出されるわけにはいかない!そもそもこうしている間にでもルカは戦地で戦っているんだ。


事態は一刻を争う。ルークは迫りくる兵士たちを一瞥すると、両手に魔力をため、風魔法を周囲に放った。


「エアロス!」

ルークを中心として螺旋状に放たれた波動が兵士たちを襲う。風圧に耐え切れず、兵隊たちはバランスを崩して転んでしまう。


「まだ話は終わってません!」

ルークは皇帝を睨みつける。その紫色の眼にはルカを絶対に取り戻さんとする確固たる意志があった。皇帝はただ冷たくルークを見つめる。


その時、ルークの首元に何か冷たいものがあてられた。ルークの顔が一気に引きつる。その何かはルークの首に掠ると首から赤い液体が垂れた。


今、自分の首には刃物が突きつけられている、直感的にそうルークは感じた。気配すら感じなかった。


「ガレタッソク、それくらいにしておけ。それくらい驚かせれば十分だ。」

皇帝はルークの真後ろにいる人物に目をやり、その人物はルークの首元から刃物を離した。ルークは咄嗟に振り返りながら後退し、自分に刃を向けた人物を確認する。


ルークの後ろにいたのは皇帝直属の騎士である「ガレタッソク・メイビー」だった。


既に60を過ぎているであろうその体には、[衰え]という2文字を全く感じさせない威圧感があった。身長は2mを超えているであろうほど高く、右手にはルークに突きつけたと思われる刃渡り150㎝くらいの剣が握られていた。


髪は長くはないものの、右目にかかった黒髪が、ガレタッソクの不気味さを飛躍させているのはだれの目から見ても明らかだった。


「貴様、皇帝陛下に無礼を働くとは何事か!!ここで切り捨てられても、文句は言えぬぞ。」

その言葉にルークは圧し潰されそうになった。あまりの恐怖で足が竦んでしまう。起き上がった兵士たちがルークを拘束し、外へ連れ出そうとする。


ルークは抵抗を試みるも、大の大人数人にかなうはずもなく、ズルズルと引きずられていく。そんなルークをあざ笑うかのように、皇帝は言葉を吐いた。


「ルーク・シュバルツァー、私のことが気に入らないのならいつか挑んでくるがいい。この帝国は強者こそが正義である。今のお前はどうしようもないほどの弱者だ。


だから、次会う時までに力をつけてくるがいい。私は君を歓迎するよ。」


その日、ルークは誓った。絶対に皇帝をこの手で葬り去ってやると、必ずルカを助けてみせると。そう、その誓いが後に世界を巻き込むことになろうとは、今はだれも、知る良しもなかった。


革命暦1870年

太陽が照り付ける下で、二人の学生が帰路をたどっていた。一人は少々カールの入った茶髪で、タレ目の男性。そしてもう一人、その学生こそが15歳に成長したルークなのだ。


目はややつり目でとても凛々しく、黒髪は前髪が目にかかる程のミディアムヘアである。学生服に身を包み、右手には戦争の歴史について書かれている本、左手にはバックが握られている。


「なあルーク、お前の風魔術で涼しくしてくれよ。」

ルークの同級生である「カミテル・タビト」は、手で自身をあおぎながらそう要求した。しかし、ルークにしてみれば断りたいお願いである。


ルークは魔力量が多いわけではないので、そうやすやすと魔術を使いたくないというのが本音だ。それでも友人の頼みなので、嫌々ルークは本をバックにしまい、カミテルに右手を向けた。

「今回だけだぞ。エア」


ルークの右手からそよ風程度の風が出現し、カミテルの頬をやさしくさわる。

「ヴぁーー、ずずジーーー!!夏には風魔術が得意な奴がうらやましいよ。俺なんか炎だから夏最悪!」

「まあ、得意不得意は仕方ないさ。冬は炎が便利だろ?」


ルークはそう言いながらバックの中から本を出して読み始めた。少し本から視線を外して周囲を見渡すが、魔族の姿がそれなりにあった。そのほぼ全員が荷物持ちをしている。


魔術が使えない魔族は便利な労働力とされ、四六時中働かされている。魔族は人間に比べて魔力や魔術で劣るかわりに異常なまでの身体能力をしていて、加えて平均寿命300歳とかなり長寿なこともあり、こうなることは避けられなかっただろう。


わかっていることだが、魔族への迫害は無くなりそうにないとルークはつねずね思う。生き物は自分が不利な状況に立たされることを忌み嫌うが、他人がそうなることを望む生き物だ。嘆かわしい。


その時、前で何かがぶつかる音がした。目線をそっちに移動させると、魔族と帽子をかぶった貴族らしき男性が言い争いをしていた。


「カミテル、少し俺のバックと本、持っていてくれないか?」

ルークが自身の持ち物をカミテルに差し出すと、カミテルはいつものことのようにそれを受け取った。するとルークは言い争いをしている二人の間に入りにいった。

「どうされたんですか?」


やさしく微笑みながら貴族らしき人に話しかけるルーク。貴族らしき人は右手に持つ杖をふるわせながらルークに怒鳴った。力任せの大声が、ルークの耳を攻撃する。


よく見ると、その人は「ドシェール・トンプソン」という貴族間での知り合いだった。


「この魔族が私にぶつかって来たんだ!そのうえ、俺を罪人扱いしてきたんだ!!」

トマトのような体で顔を赤くしながら怒鳴るドシェールをなだめると、魔族のほうに向きなおった。魔族のほうはよぼよぼのおじいちゃんで、ドシェールとは別の用途で杖を持っていた。


「どちらがぶつかったかは正直どうでもいいんじゃが、ぶ、ぶつかった拍子に妻の形見のネックレスを取られたんじゃ。」


「だから、俺はお前のもんなんて、盗ってねえよ!てかこの俺に触れたお前が罪人だよ!!」

年配の魔族との会話に割り込んできてまでそう叫ぶドシェール。馬鹿はよく叫ぶと聞くがこれほどとは。耳がおかしくなったらどうしてくれるんだ。


まあここでキレてもめんどうくさくなるだけだ。感情にまかせて叫ぶなんて子供っぽいことはしたくない。振り上げられたドシェールの杖を下ろさせる。


「まあ落ち着いてくださいドシェール卿、正直私はぶつかる瞬間は見てないのでどっちがぶつかったかは分からないのですが、盗難はいけませんよ。」


「なっ!?君まで私を疑うのかよ!!!何度も言うけどよ、証拠もなしに罪人扱いしてんじゃねえ!!」

ルークに言われたことが相当心外だったらしい。ドシェールはさらに声を張り上げて叫んだ。


しかし、証拠はあるのかと問われたらルークは頷くことが出来る理由がある。

「ドシェール卿、自分が罪人ではないと言いたいのならその杖の中身を見せてくれませんか?」

「っはぁ!?」


目に見えて顔が引きつるドシェール。単純な奴というのはわかりやすい。顔をさらに赤くして叫ぶドシェール。たのむから少しは音量を下げてくれ!!

「な、何でいきなり俺の杖の話になるんだよ!」


「その杖、中空洞ですよね?盗ったもの、転送魔法でそこにいれてますよね?」

「な、何を根拠に!!」


[では見せていただけますか?それがあなたの潔白を証明する一番の方法だと思いますが?」

当たり前である。疑われている物を見せる。これ以上の身の潔白の証明方法はないだろう。


しかし、どうやらドシェールは見せるのが嫌らしい。


そうなれば誰がネックレスを盗ったかは明白だ。ルークはドシェールから杖を奪い取ると、持ちての部分にある切れ目を境に左右に引っ張る。


ルークを止めようとドシェールが杖に向かって手を伸ばすも、間にカミテルが割り込み、ドシェールを妨害する。


しばらく引っ張っていると、ポンという音お立てて持ち手が取れた。中は空洞で、ネックレスもその中から出てきた。ルークはそのネックレスを手に取ると、お年寄りの魔族に見せた。


「おお、それじゃそれじゃ!いやあありがとうございます!」

ルークはネックレスを魔族に手渡す。魔族の方からドシェールの方に向き直り、自分のからくりがあばかれて、目が点に思えるほど縮んでいた。


「ご老人はこう言ってますが、ドシェール卿、いかがですか?」

「ち、違う!それは俺のだ!!」


この状況になっても悪あがきをやめないとは。もはや尊敬の儀すら感じてくる。こいつは腐っても貴族である。


それなのにこんな子悪党のようなことをするとは同じ貴族として恥ずかしい。しかし、世間を生き抜くためにはそんな図太さが必要なのだろう。それだけは見習いたい。


「ドシェール卿、それはおかしいですよ。」

「はぁ!?なにがだよ?」


「あなたはさきほど言いましたよね、{魔族のものなんて盗ってない}と。」

証拠を見つけたらあとは簡単だ。言い訳をしてくる相手の言葉の矛盾を指摘すればいい。大きな嘘を覆い隠すために小さな嘘をつく。


しかし所詮はその場で作った根も葉もない嘘だ。その理論を潰すのは難しくない。後は畳み掛けるだけだ。


「もしネックレスが貴方のものだったとするならば、否定の言葉は{もともと自分のものだ}というようなものになるはずです。それに、さかほど杖を見せるように要求したときに出し渋ったのもおかしいですし、いいかげん諦めてください。」


「..........おぼえてろよ!」

「ええ、善処します。」

ドシェールは最後にそんな捨て台詞を吐いて杖を回収して走って行った。重い体をどたどたと動かし、一目散に逃げていく。


「流石、視覚の資格は使い勝手がいいですねぇ。」

ニヤニヤと笑いながら、カミテルはゆっくりルークに近づく。そして、持っていたルークの荷物をルークに返した。ルークは荷物を受け取ると、バックを背負って本をバックから出して本に目を落とした。


2人はまるで何事もなかったかのように歩き出す。老人の魔族は何度も頭を下げていた。


ここら辺では、こんなことが日常茶飯事である。それにいい加減ルークはうんざりしていた。魔族と人間の支配関係は極めて単純かつ、残酷である。


使って楽をするのが人間、使われて苦しむのが魔族。魔族は人間に逆らうことはできない。


世間にとって、人間の言うことは正しく、魔族の言っていることは間違っているということになっている。そのような思考が他国にも感染していく。まるでウイルスだ。


それにより魔族はさらに追い詰められていく。魔族の間では薬物が横行していると問題になっている。中には救世主を求めて希望的観測に溺れる者もいる。


ルークが人間と魔族の関係について嘆いていると、違うことでカミテルが嘆いていた。

「あーあ、俺にもそんな資格が欲しかったなぁ~。」

「しようがないさ、資格は生まれたときに神から与えられる祝福、どこまで行っても運だ。今更なげいてもどうにもならないぞ。」


「あ~!!!!自分がいい資格持ってるからって偉そうにして!!お前の資格一つよこせよ!!!!!」

カミテルは両手を振り上げながらルークに襲い掛かる。ルークもカミテルから逃げ回る。


ルークは資格を2つ以上持っていた。それに対しカミテルは資格を持っていない。だからこそカミテルはルークのことを羨んでいた。


「視覚の資格か聴覚の資格、どちっかよこせ!!」

子供のように涙目になりながらルークを追いかけるカミテル。周囲の人達が何事かと2人を見るも、2人は気にしなかった。


「俺だってこの2つ使いこなすのに10年かかったんだぞ。お前だったら50年かかってもつかえるかどうか.........!」


「お前殺してやるーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」

ルークの言葉に怒りのメーターが限界突破したカミテルは血に飢えた獣のごとく、まるで親の仇のようにルークを追いかけ続けた。腕をぶんぶんと回し、鬼の形相で走る。


追いかけっこを続けること5分、両者の体力切れという形で追いかけっこは幕を閉じた。ルークとカミテルは近くの公園のベンチで息を切らしながら座っていた。


互いの顔はタコのように赤く、息の切れ方も死にかけの魚のようだ。


「やめだやめだ。こんなことしても疲れるだけだ。」

「最初からそう言っただろ.........。」

カミテルとルークは立ち上がり、帰路に戻った。すると、カミテルがさっきのいざこざの疑問についてルークに問いかけた。


「なあ。なんであの時ドシェール伯爵の杖が怪しいって思ったんだ?」

「ああ、簡単さ。俺の父親とトンプソン家は昔から関係があって、よくドシェール卿ともあうことがあるんだ。で、そん時杖を持って来る時と来ない時があるんだ。おかしいなってドシェール卿の使用人に問い合わせてみたら、杖を持つときはドシェール卿が歩いてうちに来た時ってのが分かったんだ。」


「えっ!?でもそれじゃ.......。」

「ここからだよ。俺も最初は足の補助のためだって結論づけたんだが、使用人が言うにはやたら魔族とぶつかったりすることが多いらしい。おかしいだろ?あいつ魔族に触れられるのがあんだけ嫌いで魔族に近づいたことすらなかったのに。」

「なるほどなぁ。」


ルークの意見に面喰い、カミテルは口をあんぐりと開けたままにしてしまう。すると、視界の奥にあるポスターが目に入った。それは最近このベルグス区を騒がせている殺人鬼の警告ポスターだった。


「そういえば今朝新聞見たけどさ、昨日また犠牲者出たってな。」

「ん?嗚呼マーク事件のことか?」


ルークもカミテルが見ているポスターに目を向ける。ポスターに書かれているのは事件発生の場所が記された地図と、現場に残された奇妙なマークだった。不格好な円の中に三角形が正位置と逆位置で重ねられて描かれている。


「こういうの怖いよなぁ。しかも殺された家の魔族がこぞっていなくなってるんだぜ。お前も気をつけろよ。」

「分かってるよ。お前も必要以上の夜遊びはやめとけよ。」

最後に互いに最近の事件にいて話し合うと、曲がり角で別れて行った。


ルークは少し気だるそうにあくびをすると、周囲を軽く確認した後、足早に大通りを外れて山道を歩き始めた。人通りは全くなく、歩いている内に道の舗装もされなくなっていく。草木が生い茂りルークの体力を奪っていく。


毎度こんなにくたくたになるのなら、常日頃から筋トレでもして筋肉を鍛えておけばよかったと後悔しながらも足を進める。日はすでに傾いており、少し肌寒い。


そんなことを考えている内に、山の中腹まで歩いて来ており、目的の場所までたどり着いた。


そこには魔族が隠れ住んでいる小さな村だった。最近起きている殺人行方不明事件、その犯人こそがルークだった。あの奇妙なマークはいわばヘルプマークである。


ルークは魔族の間に{深夜11時に壁に円のマークを描いて、屋上で待っていると悪魔が助けてくれる}という噂をあらかじめ広めておいたのだ。


噂とはかなり都合がいい。一人に感染すれば波紋状に広がっていく。視覚の資格を持つルークは透視の力でマークを見つけ、その家に向かう。


後はもう簡単だ。視覚の資格で人々の視界からルークを消し、聴覚の資格でルークから出る音を消し去る。


そして屋上にいる魔族をかかえ、風魔術で空を飛びながら山奥の広場に匿う。そうしている内に出来たのがこの村だ。ここには子供からお年寄りまで老若男女がいる。


家は簡易的な造りで、畑などの自給自足の生活を余儀なくされているが、村は来るたびに活気を増していた。


今日は魔族の生活と「ある物」を受け取りに来たのだ。息を整え、一つの家へと足を進める。すると、一人の魔族がてくてくと近づいてきた。それは、先月助けた「サリー」という少女だった。


彼女は前の主に相当ずさんにされていたらしく、初めて出会った時には体中にアザがあり、服もボロボロで、死人のような目をしていた。この世の全てに絶望していた。


しかし、今はパパラチアのようなピンクの目を輝かせ、肩まである金髪をなびかせながら走っている。サリーはルークに抱き着くと、上目遣いでルークを見上げた。

「おにーさん!来てくれたの?」

「ああ、だけど今日はベラットさんに用があるんだ。」


離れようとしないサリーをなんとかなだめ、体から離してベラットさんの家に向かった。途中、走り回る子供二人が目に入った。それを見ていると、昔の自分とルカを思い出す。


そう、全てはルカのため、幼馴染を戦争という鳥かごから解放してやるのだ。

「お邪魔します、ベラットさん。ルークです。この前頼んだもの、出来てますか?」


ベラットの家の門をくぐり、奥にいるベラットに声をかけた。奥には人間でいうと50歳あたりの髭をはやした男性がいた。目はややより目の丸目で、髪は灰色で女性のように長かった。


「出来てるよ、これだろ?」

ベラットは隣にある棚の中に手を突っ込み、ゴソゴソと何かを探す。そして、取り出したのは一つの鉄の塊だった。


「お前さんが盗んできた軍用ショットガンを改造した汎用戦闘ショットガン{アロンダイト}。装弾数は20発、銃弾はショットシェル、弾もごまんとあるぞ。」


鈍く光る太い銃身の先には、無骨な銃剣が牙を剝いている。ルークの眼前に差し出されたそれは、単なる武器というよりは「鉄の凶獣」そのものだった。


「ありがとうございます。すいません、ベラットさんにばかり武器制作の負担をかけてしまって。」

「いいってことよ!お前は命の恩人だ。しかしお前さんもクレイジーな事考えたよね、皇帝を殺すなんて。俺たちを助けているのも半分俺みたいな人材が欲しかったんだろ?」

「あなたにはかないませんね。」


そう、ルークがこのような事をするのは、もちろん魔族を助けてやりたいという気もあった。しかし、それ以上に帝国に反逆するために役に立つ人材を探していた。


このベラットという魔族、「武器製造の資格」を持っていて、どんなものからでも武器を製造できるという人材はルークにとってかけがえのないものだった。


アロンダイトを持ってきた紫色の布に包み、満足気に立ち上がる。用事は済んだ、家に帰ろう。まだまだやる事はいっぱいだ。


帝都カリジュリアの地図の入手、ルカの居場所、アレウス宮殿の見取り図。その全てが揃った時、それが反逆の時。必ずや皇帝を殺し、戦争を止め、ルカを救い出す!!


「では失礼しました。」

「おう、気い付けろよ。」

ベラットに一礼し、家を後にしようとする。その時だった。まるで巨大怪獣が近くを歩いたような衝撃、遅れて外から聞き馴染んだ魔族たちの大勢の悲鳴がルークの耳を殴る。何が起こったのだろう?嫌な予感が頭の中で反芻する。


今、考えていることが間違いであってほしい。いや、間違いじゃなきゃ洒落にならない。ルークはその頭に浮かぶ最悪な回答を振り切るようにベラットの家から飛び出した。


そして、嫌でも視界に飛び込んでくる。燃え盛る炎、狂気に支配され、無秩序に逃げ惑う魔族達、無造作に転がる死体、脳が理解を拒む。夢だと思い込みたい。


しかし現実はいつだって残酷で、容赦というものは存在しなかった。


武装した帝国の兵士たちが、この地獄と化した空間の中心に鎮座していた。

もしよければ感想や、アドバイスなどを書いてくれたら幸いです。あと、ガレタッソクを反対から読んでみてください。

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