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極小線状降水帯

作者: 横洲ジュン

俺は雨から逃げている

ゲリラ豪雨に遭って雨宿りしてるんじゃない

1メートル四方の雨雲に追いかけられてる

全力疾走してやっと突き放せるスピードの土砂降りを落とす黒雲がずっと後をつけてくる


大した手当も出ない残業を終え会社エントランスから一歩外に出ると頭にぽつんと一粒当たった

傘は無い

ツイてねぇなと見上げると『それ』はいた

我が目を疑いエントランス内に戻ったが雨雲もくぐって入り肩を濡らした

頭上から降る大粒の雨に急速に湿り始める俺


無機物に明確に狙いを定められていることに内臓がぞわりとする

疲れきった身体に鞭打って走り出した

脳は理解し終わってないが今すぐ『それ』から逃れたい

運動不足で若くもない脚はすぐ縺れ息が上がってきた

それでも本能が止まるな逃げろと煩く警笛を鳴らすので必死に腿を上げる

気味悪さに吐きそうだ


もう何時間逃げ回っているんだろう

東の空は薄明るくなってきたが俺の背後は変わらず雷を伴う豪雨がいる

重くなった脹脛が濡れてきている

視界がグラつき半身に衝撃を喰らう

躓き転んだことに気づき更に自分が頭を置いたのが道路の凹みだと気づきザッと血の気が引いた

待っ、


超局地的土砂降りが俺の頭を押さえつけ凹みに溜まる雨水に顔を漬け込まれた

埃とアスファルトで焦げ臭い水が鼻腔と喉に流れ込む

藻掻く手脚も勢いを増す雨が地面に縛りつける

いたいいたいくるしいきもちわるいたすけてたすけてたすけて



朝が来た

雨粒を落としきった雨雲は形を崩し蒸発して消えた

動かなくなった彼の頭が浸かった水溜まりに鮮やかな青空が映っていた

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