表に立たざる者達である
ハルビンは、道場で旧友と話した直後、抱いた疑問を基に、通り魔の手掛かりを求めて大会の出来事を回想していた。
何故”職業差別”が起こるのか。それには、大きく3つの事柄が関係している。
その職業にある露骨な欠如。
(給与、社会的地位)
その職業に就く人々の民度や能力の過失。
(単純作業がメインである仕事に多い。)
そして、その職業に抱かれている”イメージ”。
(表舞台に出る仕事に多い。)
魔術師は、その3つ目に当てはまっていた。
そんな事について、昔同じ魔術師と喋ったことがある。
「俺たちって、なんであんなに嫌われてるんだ?」
始めに語り出したのは、相手の方だった。
「多分だけど、勇者とか、武闘家みたいな人達には、派手な仕事やら不屈の精神やらで、カッコいいと思う人が大勢。 だけど、魔術師をカッコいいと思う人より、地味な印象や、簡単になれそう、という印象が、先走ってしまう。みたいな感じの事を本で読んだな。」
だが、そんな現実を僕ら魔術師が受け入れようとする訳が無い。これまで、数々の人間が”職業差別”に立ち向かった。
「へぇ〜、まぁでもお前には当てはまらないだろ。あの波動攻撃凄かったじゃん。」
そして、僕の代にして、その”職業差別”が終わる可能性がある。というのも、魔術界にとある転機が訪れていたのだ。
『魔術の可能性』
これは、とある科学者が書いた論文である。要約すると、魔術師にも勇者を超えるような攻撃魔法を繰り出せる。その証明である。
そして、その発見をよく思わない人々に、一つ心当たりがある。
僕は、昔の曖昧な記憶を頼りに、事件を手繰っていた。