敗者
記録、第22回世界魔術大会--格闘の部--
これは、今から十年前の事だった。当時22歳の僕は、この大会に出場した。二度目の出場だった。
昨今魔族の襲撃が活発化したのを受け、各国の優秀な魔術師達を育てる。いわば大会というより、”練習試合”のような物だった。
そんなただの練習試合が、俺の人生を一変させた。
準決勝 ジャーロ・ハルビン対サイネス・カラン
昨日、ハルビンが会場に向かっている最中、魔術による”通り魔”事件によって、
大腿骨骨折
両足の脛骨粉砕骨折
軽度の脳震盪
大動脈の損傷
回復魔法での改善も認められず、その他計二十箇所の重傷。ハルビンの辞退により、”不戦勝”となった。犯人は、まだ見つかっていないが……
………ハルビンはもう、魔術師を続けられないだろう。
これから十年が経った今でも、俺は未だ回復しきれていない。それこそ、今まで培ってきた不屈の精神が、根こそぎ奪われたようだった。
今日は、とある友人とご飯を食べに来た。最近行きつけの小さな食堂だ。
「ハルビンって、今何やってんの?」
そう友達から聞かれた時、ついあの十年前の事を思い出してしまっていた。
「………まぁ、なんとなく生きてるよ。」
そう云った瞬間、少しだけ友達の顔が暗くなった。
「ふ〜ん………まぁ自殺だけはするなよ。」
そんな何気無い一言が、僕の心を傷つけたりする、
「じゃあな!」
友達が手を振っているのを傍観しながら、少しばかり会釈をした。
多分友達も、あの時から落ち込んでいるのを察して僕に付き合ってくれるのだろう。時々、友達からも食事に誘ってくれるけど……
僕が、毎回変な空気にしてしまう。
「はぁ、なんでこんな事になったんだ。」
あの時の華やかな魔術師は、無精髭を生やした無職に成り果ててしまった。そんな現実が僕を襲う。
なんとなく、街を歩いていると、”一つのポスター”が顔面を掠めた。
「うわっ!」
慌てて取ってしまったそのポスターは、焦って掴んでしまったからか、所々がくしゃくしゃになっていた。
よりにもよってそれは魔術師の勧誘ポスターだった。だが、そんなポスターが、もう一度僕の人生を変える事になる。
カルーフ魔法道場、コーチ募集中
気づけば手に職もなかった僕にとって、これは、最後の人生の分岐点だった。