四角い魔道具
に、しても此処は一体どこなのだろうか。今は横に立つ、魔龍との混血・エルドラといがみ合う気力もない。
「まあいいや、まずは情報を」
「なら、わっちの出番じゃな」
自信満々な声をだすと、角のが額かラ伸び、背中からは翼が生え、黒いドレス身にまとった少女はスタスタと人間の元に向かおうとする。だが、コイツはばかか。
自分の立場をわかっちゃいない。仮にも魔王が、人間に接触しようとしたならここら一帯は大混乱に陥ってしまう。
ノヴァクが肩を掴もうとするより先に、エルドラは一人の女性に話をかけた。
「ちょっとすまぬ」
「え? あ、私……ですか?」
それ見たことか。女性は困惑した様子を浮かべていた。
「うぬ。ここはグローリアのどこに当たる地域なんじゃ?」
「グロー……ん? ここは秋葉原だよ」
「アキ……アキはバラバラとはなんぞ??」
エルドラの言葉に他の大人が笑いを堪えている。
「秋はバラバラだって。百人一首にありそうだな?」
「ねぇよ、馬鹿!」
エルドラの目線に合わせ屈む女性は、困った様子で口を開く。
「んーと、迷子なのかな? パパやママは??」
「なっ!? 子供扱いじゃと!!」
「ごめんね。そんなつもりじゃなかったんだよ。それで、パパやママはどうしたのかな?」
まあ見た目は間違いなく子供だな。
「父上も母上も殺されたんじゃ」
「殺ッ……?!」
女性は表情を引き攣らせる。今どき、死に対してこんな顔をする人は珍しい。明日生きる為に頑張るのではなく、明日死なない為に祈る世界にしては。
「ごめんなさい……じゃあ、一人で来たのかな??」
「んや、一人ではないぞ。ほれ」
女性と目が合い、軽く会釈をした。
「君のお兄さんかな??」
「んなわけあるか! あやつは仇じゃよ! 父上と母上を殺した!!」
「ふざけるな! お前達が人間を!」
「え……ちょ……え? それは本当の話なの?」
「当たり前だ!」
「当たり前じゃ!!」
「ひ、人殺し!! 確かによく見たら血がいっぱい……」
顔面が蒼白した女性は、徐にポケットから何かを取り出す。四角い形をした魔道具かなにかか。それを耳に当てると一人で喋り出す。
『事件ですか? 事故ですか?』
「じ、事件です!!」