ここはどこ
暑い風が吹き付け、直射日光が体内から水分を奪ってゆく。今すぐにでも水を飲みたい気持ち──以上に目の前の光景が衝撃的過ぎて、青年はただただ立ち尽くしていた。
「な……な? なんなんだ、此処はッ!?」
青年──聖龍の血を受け継ぎし勇者・ノヴァク=ファリアの眼前に広がっている景色は、どれも今まで見た事も無い景色だった。
「───────────」
「────────」
「──────────」
しかも、往来する人間の言葉もからっきし分からない。これらから、推察するに魔王との決戦の際に何処かに飛ばされたってのが一番しっくりくる。
と言うか、この人間達は何をさっきからジロジロと。何を言っているのかも気になったノヴァクは、言語理解魔法・ゼノンを唱えた。
「ねぇねぇ、あのコスプレ、クオリティ高くね?」
「まじそれ。勇者カフェとか出来たんか??」
「ん~そんな広告見てねぇけど……んな事より、早くツンデレ喫茶行こうぜ」
「この人達は一体……何を言ってるんだ?」
言葉は分かっても、所々理解ができない。意味のわからない言葉を聞くのは、ちょっと気持ちが悪い。
「わっちにも訳が分からぬよ。こやつらは、オヌシと同じ人間なのか?」
「んや、わからねぇ……。俺にも何がなんだか。見た目は俺達と同じだが……グローリア大陸にもまだ未開の地があったのか?」
「オヌシが魔法を行使して、こうなったんじゃないのか??」
「そんなこと言ったら、エルドラだって……エル……」
なにを無意識に忌まわしい名前を口にしているのだろうか。これも魔王と繰り広げた激戦の弊害か。事も有ろうに、仲間達ではなく魔王・エルドラの名前を口にするなんて。
時間にして数秒。その間に戦い時の情報がノヴァクの頭に流れ込む。そして至る、否定。
きっと目の前の常軌を逸した光景にあてられたのだろう。
「わっちだって、なんじゃ?」
「いやだから……んぁ?! エルドラ!?」
「おーおー。気持ち良いぐらいに驚いてくれるではないか。よ、さっきぶり」
「さっきぶり! じゃねえよ!」