第五話『ロボット三原則』
真夜中に呼び出された僕が聞かされたのは・・・
「突如、ツクモが反乱を起こした!」
武装蜂起、もとい、武装した箒で、近づいた途端に襲いかかってくる。今も、キッチンの前に陣取っていて、てこでも動かない構えだ。
「君は、ちゃんとロボット三原則は知っていて作ったんだよね?」
問いかけた僕に、彼女は、胸を張って答える。
「もちろんだとも」
えーっと、と、指折り数えながら。
「第一条、光を浴びせてはいけない」
「第二条、水をかけてはいけない」
「第三条、真夜中過ぎに食べ物を与えてはいけない、だよね?」
言い切った、いい笑顔だった。
「あー、うん、なんで反乱を起こしたのかが、わかったような気がするよ・・・」
「本当?」
「多分、第三条を破ったせいかなあ」
というわけで、容疑者に尋問をする。
「で、君は、何をしたの?」
「少々、小腹が空いて、チョコレートをちょこっと」
「こんな時間に食べたら体に毒だよ」
それで、食べ物を与えまいと、ツクモは頑張っているわけか。
「ついつい、ひとつが、ふたつになり、ふたつが、よっつになって・・・」
何をガマの油売りみたいなことを。
「いや、不思議なポケットかな、叩いたら、どんどん増えそうだね、ホコリが」
ポケットに手を入れて、視線をそらす彼女は、一体どれだけ食べたやら。
「ほらほら、包み隠さずに白状しなさい」
【アイザック・アシモフのロボット三原則】
①ロボットは人間に危害を加えてはならない。
②第一原則に反しない限り、人間の命令に従わなくてはならない。
③第一、第二原則に反しない限り、自身を守らなければならない。