第三話『果物ナイフ』
トテ、トテ、玄関まで出迎えに来たツクモに、
「はい、お土産、ひとりで持てる?」
と、たずねれば、コクリと頷いて両手を上にのばすものだから、「重いよ」と一声そえて、なるべく優しく手渡してあげると、ペコリ、お辞儀をひとつして、クルリと向きを変えたら、イチニ、イチニと、左右に揺れながら奥へと運んでいく。
「落としちゃダメだからね」
小さな後ろ姿に声をかけて、ツクモの後についていく、すると。
「うぅぅ、いらっしゃい」
家主が自室の戸から、ぬそっと顔をだした。
「いや、どうしたの?」
「ツクモの学習したデータとサーボアクチュエーターの制御プログラムのフィードバックをちょっとね」
「うん、何を言っているのかはわからないんだけれど、寝てないのはわかった」
「要するに、力加減とか、どれくらい上達してるか調べてたの」
「それで、どんな塩梅だった?」
「成長、著しいね」
ドヤっている彼女のズボンの裾を、くだんのツクモが引き返してきて、クイクイと引っ張って気を引いている。
「ああ、そっか、果物ナイフがほしいの?」
「えっ?」
思わず聞きとがめる。
「果物ナイフをどうするの?」
「そりゃ、お土産の皮をむくのに決まっているよ」
「なんだって!」
つい声をあげてしまう。
「大丈夫、大丈夫、あのコ最近練習してるんだよ」
「いや、いくらなんでも・・・」
言いかけたものの、楽しげな彼女と、そこはかとなく張り切っている様に見えるツクモに、つい言い淀んでしまう。
まあ、ツクモに限っては、ケガの心配はいらないかもしれないけど。
やがて、ツクモがみてみてーっという感じで、成果を掲げる。
「うん、上手にむけたねー」
「うそ!」
「ねっ、ほらね」
彼女は誇らしげだが・・・
「おみやげ、スイカだったよね?」