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第百二十七話


一五三二年五月 丹波八上城(やかみじょう)



風雲急を告げるとはまさにこの事である。

前の年に公方・足利義晴と管領・細川高国との戦が勃発していたわけだが、その戦闘も散発的で小規模なものだった。

しかしながらついに公方(がた)による大規模な丹波侵攻が行われたのだ。



「公方(がた)の兵は如何ほどか?」



ここは丹波国八上城(やかみじょう)

丹波国の有力国人である波多野氏の居城である。

軍議の間には波多野氏一族や数名の重臣達が詰めていた。

上座にはその上役にあたる管領・細川高国が戦装束に身を包み眼前の将を見ていた。



「はっ、物見によりますと公方様方の兵は凡そ三万程。古坂峠と天王峠方面に軍勢を分け進軍中との事です。」

「ふむ、中々に多いの。一向一揆衆(ぼうずども)が多く動員されているようだな。公方様が単独でこれ程の数を揃えられるとは思えぬ。」



伝令の報告を聞いて、丹波波多野氏当主であった波多野秀忠が唸り声を上げた。



「…孫四郎よ。苦労掛けるな。」



その様子を見た管領・細川高国が苦し気な声を上げた。



「いえ、道永様。我等波多野家としましても易々と負けるつもりはござらん。我が波多野は道永様支持で一致しており申す。」



ここが史実と大きく異なる点だ。

史実では細川高国が細川尹賢の讒言によって波多野秀忠の叔父である香西元盛が殺害されたことで管領方を離反した。これが細川高国が敗れる切っ掛けになったと言っても過言ではない。

しかし本来は波多野氏は細川高国に重用され勢力を拡大してきたのだ。

ここにいる波多野秀忠はそれに大きな恩義を感じていたのだ。



「道永様。周辺諸国の諸将にはお声掛けされておるのでしたな。」

「うむ。現在の所救援に応じてくれるのは浦上や赤松と言ったところじゃ。」

「…であれば我が波多野の一万と合わせ、二万の兵を都合できることでしょう。」



それでも管領方か数で劣っていた。



「山名は浦上や赤松と揉めてる故日和見じゃ。」

「若狭武田は如何か?」

「武田は朝倉の支援を受け丹後の一色に対して優勢に戦いを進めておるが、我等の救援には来られんだろうな。」



若狭武田は細川高国にとっては友好的な大名家であった。

しかしながら数年に渡る一色との紛争で疲弊して来ているのは事実だ。



「…朝倉と言えばかの軍神殿が下剋上を果たし、越前を統一されたのでしたな。しかも元々の宗家当主であった朝倉孝景殿は軍神殿の下に付き、若狭武田への援軍を率いておるとか。」

「ほう、良く調べておるではないか。」



細川高国は感嘆の声を上げた。

波多野秀忠は先程の述べたが丹後の実力者として波多野氏の最盛期を築いた実力者だ。

その実力はかなりものであったと言えよう。



「…朝倉を言えば越中の神保家と盟主とした陣営を組んでいると聞いておりまする。かの陣営に支援を求めることはできませぬか? 道永様は神保殿らとは知らぬ仲では無いのでありましょう。」

「…だが公方様らも同じことを考えるだろうな。」

「なるほど。神保殿は公方様とも良好な関係であると言う事ですな。」



波多野秀忠の言葉を受け、細川高国は腕を組んで目を閉じた。

細川高国はあの神保長職と言う人物は先を見ている様である反面、義理堅い性格でもあると思っていた。

しかしその行動原理は外向きなものでは無いように見えた。



「だが朝倉を通して繋ぎは出来ている。既に支援物資の手配をしてくれているようだな。」

「何といつの間に…」

「孫四郎もいつもの商人以外の者を何度か城下で見たであろう?」

「…なるほど。あれは神保殿の手のものでありましたか。」



波多野秀忠が頷きながら答えた。



「…であれば今我等が出来るのは援軍が来るまで籠城して耐える事でありましょうな。」



丹波八上城(やかみじょう)は典型的な山城であり、山全体が要塞化されている堅城であると言えた。

…救援が来るまでは籠城戦で耐えるしかない。

出来れば神保らの支援が欲しいところだが…


細川高国は腕を組んで瞑目した。












ついに管領と公方の大きな戦が始まりそうです!

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