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第百二十六話


一五三一年八月 能登七尾~越前敦賀航路



「新三郎殿よ、近江に帰るなら儂らと一緒せんかね?」

「ええ、急ぎでもありませぬ故お言葉に甘えまして。」



新三郎こと浅井亮政は領国への帰路、朝倉宗滴ら敦賀朝倉家の一行と同道することとなった。

越中で設計され能登七尾で建造された敦賀朝倉家の船は、当時のものとしては立派なものであり、船団の船倉には七尾や氷見で運び入れた物資でいっぱいだ。

それだけでも越中を中心とした陣営の隆盛を伺い知ることが出来た。



「新三郎殿、酒でも一杯どうだね?」

「は、いただきます。」



ある日の夕餉の時間、浅井亮政らは朝倉宗滴の歓待を受けていた。



「しかしあれですな。我が北近江ではなかなか豪勢に夕餉を、という訳にもいきませぬ故、此度の能登や越中での事は某にとって驚きの日々に御座いました。」

「ん、ああ。それはそうじゃな。儂とて朝倉より栄えている国なぞ中々無いと思っていたがな。」



もともと能登は畠山義総の手腕で経済的にも発展しているとの評判であった。

確かにその通りだが、それよりも驚いたのは越中だ。

氷見を中心とて港湾施設や街並みが整備されていて、能登七尾と共に相互に高めあっているように思えた。

神保家当主の神保長職の指導の下で越中ではいくつかの産業が興され、氷見以外の地域でも様々な施策が行われていると言うでは無いか。



「して新三郎殿には、神保長職と言う男はどう見えたかね?」

「右衛門佐殿にございますか。…かの御仁は某には計りきれぬ御方にですが…」



浅井亮政は腕を組んで少し上を見た。



「あの先進的な考えはどこから生まれたのでございましょうか? 某とて領地を預かる者ではありますが…」



越中での数々の施策(内政)、そして軍事に関しても農民兵では無く職業軍人による軍を構築していた。

そして周辺諸国と連合し陣営を結成するなどの柔軟な考えは中々持ち得るものでは無い。



「それよ。儂ら敦賀朝倉家とて、長職殿にはかなり助けられている。長職殿は自らの武勇はからっきしのよだがの。」



朝倉宗滴がガハハと笑いながら言った。



「ふむ…」

「越中の侍大将たる遊佐総光が言うには、いくら鍛錬しても槍働きの才能は無いそうじゃ。」

「なるほど。それゆえに右衛門佐殿は自分は出来る事を考えておられると言う事なんですな。」

「仕事を分業できるような体制が整えられているとも言えるな。」



越中国内でも上手く分業出来ているが、さらには陣営内でも仕事を分けていきたいと言う事だろうか。



「…我が浅井には何ができましょうや。」

「うーむ、儂が近江に完全に関わるのは難しいが。そうじゃ、伊都政はおるかな?」



少しして音も無く一人の男が現れた。



「…そちらの御仁は?」

「伊都政と言ってな。長職殿から借りている、諜報員よ。」

「右衛門佐殿の…。と言う事は今の話も聞いていたので?」

「敦賀朝倉家にも多大な貢献をしてもらっておる。まぁ神保家が我等に付けている鈴であるとも言えるがの。」

「…その鈴が鳴ることは無いのですか?」

「伊都政は鳴らすつもりはあるかの?」



朝倉宗滴はニヤリと笑いながら伊都政を見た。



「…いえ。我が主・神保長職への悪口は我等にとっても余興にございますれば。」



伊都政もニヤリと笑いながら応じた。



「…であるか。それはそうと、伊都政よ。近江の堅田の様子は探れるかね?」

「ご命令とあればすぐに配下を派遣いたしましょう。」



近江・堅田と言えばその周辺は浄土真宗の門徒が多い。

そして本来そのあたりで指導的立場にあった本福寺は破門されるの等の憂き目にあっていたはずだ。



「堅田か…。なるほど。」



このやり取りで浅井亮政は朝倉宗滴が言いたい事を理解できたようだ。

この後、浅井亮政は近江での事業を進めていくことになるのである。
















久々の更新で申し訳ございません!

浅井亮政は有能な武将であるのでこれから活躍してくれるはずです!

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