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第百五話


一五二七年四月 越中城ヶ崎城



四月。

僕は主だった家臣達を越中城ヶ崎城に集めた。

参加したのは

・侍大将、越中守山城代(城主と名乗ってくれない) 遊佐総光

・放生津城主 松波長利

・新川郡司、松倉城主 椎名康胤

・越中真宗門徒総代、安養寺城主 大谷兼了

まずこの四名が越中国内において大きな力を持つ家臣と言えよう。

それに加えて御用商人である狩野屋伝兵衛の他に狩野職信(もとのぶ)、平長光、長岡六郎もこの場に呼んでいた。

そして薬売り(ちょうほういん)の頭である市も同席させた。

本来であれば取次である直江実綱も同席させたいところだが、彼は越後に派遣していた。



「さて皆の者、大儀であった。こうして皆に会えるのを嬉しく思うぞ。」



僕は眼前の家臣達を見まわしながら言った。



「ははは、そうかそうか! 御屋形様はおれたちに会えるのが嬉しいのか!」



長岡六郎が溢れんばかりの笑顔を浮かべた。



「まったく浮かれおってからに。」

「相変わらず子供じゃのう。」


「ええ!? そこまで言う?」



長岡六郎がスススっと僕にすり寄ってきた。



「はいはい。それ以上近寄るなよ。」

「ええええ!」



六郎め。いくらお前が美少年だからって、僕は衆道(そっち)の趣味は無いんだぞ。



「…冗談は置いといて。今日皆に集まってもらったのは我が神保家の方針を決めていくためだ。まぁその前に麦湯でも飲んで一息ついてくれ。」



僕が合図すると出席した家臣達に麦湯が配られた。

家臣達が麦湯に口を付けるのと見てから、僕は越中周辺の地図を広げた。



「皆や領民達のお陰を持って、我が越中国内は戦乱からの復興を遂げ足元も強固になりつつある。…なれば次に目を向けるべきは国外であろう。」



僕自身某第六天の魔王みたいに野望を持っている訳では無いのだが、引き籠っているわけにもいかない。

それが戦国時代と言うものだ。



「そうすると、やはり加賀でしょうか?」



大谷兼了が口を挟んで来た。



「そうだな。必然的に加賀の一向一揆が一番の仮想敵になるだろう。同じ門徒の兼了には悪いが…」

「いえ。かの者達の動きを見れば致し方無きことにございまする。」



加賀の一向一揆と言えばその国の守護富樫氏を打倒し、本願寺による実質的な領国支配と化していた。

やってることは戦国大名のそれと変わらない。

いや、宗教により命も恐れぬ兵を抱える厄介な集団と言えよう。



「さて総光。我等神保家の常備軍の整備状況はどうなっている?」



農民兵が主体であるこの時代に、専門の戦闘集団である常備軍を備えているところは多くない。

かなりのアドバンテージだ。



「は。現在訓練を重ねまして即応部隊として一万二千、最大で三万の常備軍を動員できます。」



うむ、それは凄い。

これは侍大将である遊佐総光、さすがの手腕と言うところだろう。



「御屋形様。安養寺衆にございますがお陰様を持ちましてかなり再建が進みまして、おそらくは一万千程集める事が可能にございます。」



大谷兼了が続いた。

ふむ、門徒達は敵になれば恐ろしいものだが味方であれば大きな力となる。

これは心強い。



「新川郡の及び東部の国人衆は搔き集めて合計で八千と言う所にございます。我が新川郡司単独では六千程。」



椎名康胤が幾分申し訳なさそうな表情で発言した。



「いや、新川郡は先の戦もあるから仕方あるまいよ。」



それでも我が神保家は現有戦力でも五万近い兵を動員できると言う事だ。

僕が家督を継いだ時には考えられなかった事だ。



「…畠山義総(あにうえ)にも協力を要請してあるから、時間を掛けて準備をしていきたいと考えている。」

「しかし御屋形様。かの者達と戦を交えるには畠山様の協力を頂いてもまだ厳しいものと存じます。」



軍略を司る松波長利が口を開いた。



「長利の言う通りだ。管領・細川高国様を通じて周辺の守護…。朝倉殿や六角殿、土岐殿には声を掛けている。」

「…しかし先だって朝倉宗滴殿ら敦賀郡司が敦賀朝倉家として独立致しました。内訌状態にある朝倉家は当てになりましょうか?」



それなんだよな。

まさか朝倉宗滴が宗家と仲違いをするとは思わなかった。

仁義の人だと思っていたからな。

まぁその朝倉宗滴からは薬売り(ちょうほういん)を通じて繋ぎがあって、その真意については把握しているつもりだ。



「市よ。越前の状況はどうか?」



僕は薬売り(ちょうほういん)頭の市の方を見た。



「はっ。敦賀朝倉家は軍を動員して木ノ芽峠を封鎖しております。地の利を生かしており、朝倉宗家の軍はその麓にて動けずにいるようです。」

「…宗滴殿や景紀殿らは無事であると言う事で間違いないのだな?」

「左様で。敦賀朝倉家からは主だった者の離反も無く、宗家と綺麗に分かれた由にございます。」

「そうか。少なくとも敦賀朝倉家は盟約で我が力になろうとするだろうが、宗家と争っている最中は大きな軍は動かせぬだろうな。」

「つまりは朝倉宗家も管領様の御言葉があったとしても対一向一揆の軍は出さぬと思った方がよろしいでしょう。」



松波長利が続いた。

ううむ…、悩ましい事よ。













主だった家臣との会議は続きます。

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