早急な説明を求めます
幼女の目の前の地面は黒く熔解していた、先ほどまでそこにいた者は影も形もない。
「貴様!」
「さて、これで我とお主の二人…ではなかったな、呼ばんでいいのか?」
「…貴様一人なら不要だな、お前たち帰れ」
一瞬の間ののち周囲から数十の気配が消えた。
「何も考えていないように見えるのは変わらんな」
「黙れ、逃がさんためだったがもう関係ない。行くぞ」
「はぁ、少しは休みたいんじゃがのっ…と」
幼女が形を崩す、人の形ではなくなっていく。
『易々と帰れると思うなよ、鬼の小僧』
「いつまで上から目線だ!雷鳴の主!」
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『最上位種のリソースの吸収を確認。一部要素がアンロックされます』
『《【黒鬼】鬼神・???》に個として認識されました。一部要素がアンロックされます』
『《人造人間エリスをテイムしました』
『モンスターのテイムを確認、特殊アクセサリーが装備されます』
『死亡を確認、リスポーンポイントを選択してください』
…ログアウトしよう。
「どわぁぁぁぁ!情報が多い!」
なんで死んだ?共闘の流れじゃん!要素のアンロックって何?エリスさん人っぽくないなーとか思ってたけどモンスター扱い?テイムした?
一度落ち着いて整理しよう、えーとまず最上位種云々、これは鬼の耳を噛みちぎったことによるものだろう。
そしてエリスさんがモンスターってことねしかもネームドなのね…ふんふんなるほど。
「よし、わからん!寝る!」
もう2時だ。すごくつかれた…
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翌朝、ログインする前に情報収集する。
「…なるほど、テイムされる側の知能が一定以上だとプレイヤーによほど拒否感情がない限り自動的にテイムできると」
それからあの鬼、北の方を中心に広範囲に出没しているモンスターのようだ。
そして、個として認識されたというこの文。戦ったプレイヤーのうち何人かに同じ文言が表示されたらしいが、それだけで今の所、特に何もないらしい。
気になる点は鬼に倒されたプレイヤーが少ないと言うことだ。遭遇報告に比べて戦闘報告はそこまでない。
色々調べたがわからないことも多い、元凶であろう人に聞くしかないか。
――――――――――
街を出てしばらく進んだ場所。昨日ユカリと焚火をしたあたりまで来た。ここら辺なら人はあまりいないだろう。
「えーと…『召喚』エリス」
モンスターをテイムしたら自動的に貰える『絆の腕輪』。
装備枠は消費しないがモンスターをテイムしている間は外すことは出来ないという装備だ。この中に仕舞っているという認識でいいのだろうか。
「喚ばれないかと危惧していました」
「色々聞きたいことがあるからね…」
昨晩はよく見れなかったが綺麗な金髪にかなり整った顔立ちだ。なんだコイツ可愛いな、無愛想なのは変わりないが。
「可能なことなら回答します」
「ありがたいね。じゃまず私はなんで殺されたの?」
「推測ですがワタシ達を逃がすためだと」
「逃がす?殺されたんだが?」
「異邦人は死んでも死なない。これは世界の法則です。あの場から遠ざけるには最適だったのでしょう」
「あーうんそういうことね…」
いやどういうことだよ。プレイヤーがリスポーンするということがNPCで常識として広まっていなくては厄介なこともあるのだろう、そういう設定は分かる。
だが、それを利用して遠ざけるなんてことをただのNPCがするんだろうか。
そもそも、なぜ逃がす必要があったのか。あのまま行けば倒せただろうに。
「逃がした理由?」
「こちらが圧倒的に不利だったからです。周囲に27の気配を検知していました、通常時あの森に生息していないような強さの生物たちです」
「…マージか」
「それに加え彼は全力を出していません」
全然気づかなかった。いや、気づけなかったというべきか、私とはレベルが違うのだろう。
「とりあえずわかったよ…じゃああの二人は誰?あの女の子は味方なんだよね?」
「母の友と…母を狙うものです」
「…なら母って誰」
「制限されています。アクセスは認められません」
「え?」
突如、強制的にエリスが送還された。もう一度呼ぼうとするもできない。
どうやら睡眠状態になっているようだ。
「なんでー!」
「なんか流暢になったね」
「暇だったので学習させていただきました」