その名を呼べば
CIはCanibal ISLANDの略です。ルビ入れれませんでした
(エリス嬢は…動けそうだな、見た目ほどダメージは受けてないみたいだ。んでルリ嬢のアレが噂の二刀流か)
CIで一番強かったプレイヤーと言えば誰か。【天月】みかど、【灰燼】招キ猫、【楽園】サンマのトロ、…候補は色々あるが近接戦闘に限れば【二刀流】ルリが一番に上がるだろう。ギルド順位五位【翡翠】所属、近接専用闘技場順位最高三位。順位こそ三位であるが闘技場という環境に限らなければ一位も二位も「勝てない」とまで公言している。
CIに職業として二刀流は存在しない。両利きなこと娯楽職『奇術師』の高速装備切り替えのスキルを活かして刀を左右の手で持ち替え無理矢理二刀流っぽくやっていたら呼ばれるようになっただけである。
(CIの時は刀だったと聞いたが…何の武器でも行けるのか?)
『余所見か?【浮沈漢】』
「余所見じゃねぇな」
再び上から迫るアームを左の小盾で軽く受け止めながら応答する。
どう見ても防ぎ切れるような衝撃では無かったが全く怯む事なく弾き返した。
『その盾…【要塞王亀】か?』
「…よく分かったな、」
『主な能力はサイズ変更、そして衝撃完全吸収…だったか。それにしても特殊装備を2つも同時に扱うとは…』
「こっちの事も知ってるんだな…じゃあ『真名』は知ってるか?」
『…!なるほど、観測では確認出来なかったが…使えるんだな』
「まぁな、『蠢け・【モンゴウ】』」
『真名』。ネームド装備の一部、主にエリアボスに該当しないネームドからの装備に搭載されている装備の力をネームドの名前を唱えることによって最大限に引き出す方法。
多くの者は夏将軍の碇のドロップ先は幽霊船のネームド…だと思っているが真実は廃船の内部に入り込み擬態した巨大イカ。細かな触手を使い操船を行い他の船に近づき、碇に似せた何処までも伸びる触腕で沈め、人を好んで食べる怪物。
そんな化け物からのドロップは碇…つまり触腕だ。『真名』を唱えれば最大1kmまで伸びる触腕を自由自在に動かす事が出来る。1km先が見えなければ意味は無いが、例え10mでも相手にとっては充分な脅威となる。
『成程…これが『真名』』
「『真名』を使う相手は初めてか?」
『『真名』どころか戦いすらあまりやってこなかったものでね』
戦車が機関銃を掃射するも多少ダメージは入るものの比較的柔いとはいえネームド装備、唯の機関銃程度対して効くはずもなく。
正面から先端をアームを掻い潜るように迫らせ脚を払い、転倒させ、機関銃に絡み付きもぎ取る。
次いで他の武装にも絡み付かせそのまま引きちぎったり、握り潰した。
「これでそっちの武器は無くなったな、武器以外の所は硬すぎて壊せねぇが…さてどうする?見た所戦闘慣れもしてないようだが」
『本職は研究の方なんだ』
「研究ね。…お前名前なんだ?」
『…テセル』
「テセル?…エリス嬢の父親か」
『…第六~九パーツ射出』
その辺の壁が開き、何かが飛び出してくる。飛び出してきた物体は空中で軌道を変えながら目の前の四つ足戦車の破損した部分へと装着されていく。
ものの数秒で先ほどと変わらない姿へとなった。
「仕切り直しか?」
『戦闘慣れしてないのでね』
夏将軍は「めんどくせぇ」と思った。
モンゴウの『真名』は時間経過でMPを消費する。短くて10分程しか持たないがその間に装甲を貫くのは難しいと判断したからだ。
そして、復活する武装。上限がどれくらいか分からないし壁面を見る限りどこから出てくるかも分からない。
今やることはここを突破して通信を止めること。時間がどれくらいあるかもわからないので一刻も早くやらねばならない。
「マジでめんどくせぇな!」
――――――――――
「…驚きました、名前を聞いておきましょうか」
「名乗るほどの者でもないと思うね」
「そうですか、『雷装』」
シセラの持つ槍から雷が迸る、見た目こそ変わっていないものの凶悪さが増している。
「生憎と本物はないので再現ですが…この身で出せる全力で相手してあげましょう」
「光栄だね、もっと手加減してくれてもいいんだけど?」
「...全力で相手してあげましょう」
雷鳴が轟き、シセラの姿が消える。咄嗟に祭禮を構えた次の瞬間私は吹き飛ばされていた。
攻撃自体は防げたし着地も出来たもののかなりの距離を移動している。
シセラは先ほどまで私がいた場所でくるくると槍を回している。
「さて、貴方を殺せばエリスも戻ってしまいます…どうしましょうか」
「…で、結局あんたら何がしたいわけよ?」
「時間稼ぎですか?時間をかけられないのはそちらでは無いのですか…まぁ構いませんが。目的などマルトから聞いているのでは?」
「直接聞きたいと思ってね?」
「……祖国を、故郷を取り戻すのです」
「帝国って所かな」
「正確には帝都です。私は皇帝の願いに応えるために命を賭け、そして失敗した。...今度は失敗しない」
「見上げた忠誠心だね」
「……テセルはやはり勝てませんか、まぁ無理を言って出てきましたから」
夏将軍と四つ脚戦車…名前はテセルらしいが、どうやら夏将軍が優勢なようだ。
……ん?テセル?どこかで聞いた事のあるような?
「…テセル…性は?」
「?…マスエル帝国第四皇子テセル・マスエル……攻め入る相手の名前も知らないのですか?」
「ああそっか」
思い出すのはカヤノヒメの腹の中での最後の会話。
『………そうだ、一つ伝えておく。この先我と同じ名を持つ者がいたら我を呼べ』
『同じ名?』
『正確には性が同じ者だな…そのような者がいたら呼ぶだけでいい』
『いいけど…性はなんなのよ』
『伝えていなかったか…我の性は__』
「ゼベル・マスエル」
「……想定よりも早い呼び出しだな」
気づくと自分の影の中から今し方名前を呼んだ男、暴食の大罪者であるゼベル・マスエルが姿を現していた。
彼はそのまま周囲を見渡しシセラのほうを向き呟いた。
「ふむ、そこにいるのは…ああ、久しいな義姉上」




