難しいことは抜きにして
岩肌に隠されるように…というかマジで隠れていて突然洞窟が現れた。
洞窟が途中から金属的な壁になっており、人の手が入っていることが伺える。
「なにこれどうなってるの?」
『迷彩技術と隠蔽魔法によって見つからぬようになっておる。まぁ場所さえ知っておれば何の問題もない代物じゃな』
「ほう、今までプレイヤー達に見つからなかったのも納得だな」
『我はここから先は行かぬからな、まっすぐ進めば右に巨大な扉がある。そこを左に行けば機械兵に命令を届ける通信設備がある。機械兵は通信が途絶えれば拠点に戻る様にできておるからな…時間を掛けるな、シセラに見つかれば勝ち目はないからな』
「そういやなんでお前は戦えないんだ?」
『契約があるからな…まぁアレをシセラと呼んではいいか分からんがな。意識的な問題だろうが攻撃が出来んのじゃ、まぁ本人以外...機械兵共くらいなら戦えるがな』
「そんなもんなのか...」
『それよりはよういけ、時間はないぞ』
それだけ言うとヴォルクスは飛び立っていった。
「...とりあえず行くか、走るぞ」
「了解」
――――――――――
ひたすら走る。五分程走っただろうか。聞いていた扉が見えてきた。
通路は10M四方くらいだかその扉の周囲だけ広くなっている。
「ここを左か」
「だね...この扉なんなんだろ」
「寄り道している時間はないぞ、監視カメラみたいなのがいたるところにあるからな。出払っているのか敵は来ないが…いつ何が来ておかしくないぞ」
巨大な扉を横目に左へ曲がり駆けだす。
_ことは出来なかった。
扉をぶち抜くように何かが飛び出し二人の間をすり抜けて飛んでいった人型の物体に足が止まった。それが何かを確認する前に後ろから声が掛かる。
「【浮沈漢】見逃すとでも思いましたか?」
まぁバレてるとは思ってた。
「ヴォルクスから聞いたのでしょうが…確かにその通路を進めばマルタを止めることができます。が、二人だけとは舐められたものです」
「…先に行けルリ嬢、勝てんだろうが時間は稼いでやる」
「それしかないか…わかっ」
『そう易々と行かせると思ってもらっては困るな』
後方からも声が掛かる。
振り返るとそこには機械の…なんだこれ、四本脚の戦車みたいな感じだ。
四方に伸びた脚の上に低い円柱型で周りに巨大なアームと武器のようなものがついている。
『下がれ、ここは通すつもりはない』
機械にしては流暢な話し方だ、マルトと同じで中に誰かが入っているんだろう。
そして四つ足戦車との間にいる先ほど飛んできたものが起き上がる。
「......なぜここに」
「エリス、大丈夫?」
ぶっ飛んできていたのはエリスが起き上がる。かなりボロボロな感じだ。
「問題ありません。それよりも…マルト達を止めにきたのですか」
「察しがよくて何よりだよ!」
「帰還を推奨します」
『お喋りしている所悪いが』
四つ足戦車がアームを叩きつけてきたのを飛び退いて避ける。
次いで迫ってきたもう片方のアームを夏将軍が盾と取り出し受け止める。
『貴様らを片付けて作戦を進めさせて貰う』
「片付けてから言えや」
左手に盾を持ち、右手で錨を回しながら夏将軍が告げる。
「さて、始めましょうか」
こちらはシセラの相手だ、シセラと戦車の2人?の片方でもどうにかしなくては動くに動けない。
とは言っても向こうの力は未知数だ、先程エリスを扉ごと吹き飛ばしてきたのは彼女だろうが、戦っていただろうにエリスはボロボロなのに対して疲れている気配さえ無い、それ程2人の間には差があるんだろう。
「まぁ負ける気はないけど」
「……無謀です」
……
「母上が人の身の時代は生涯無敗であったと父が言っていました。現代においても人の身であったならば敵う者はいないと」
「……なんか感情豊かになってんね?表現方法増えたって言うか」
「話を聞いてください」
「まぁ大丈夫っしょ」
「私はさ、これでも|別の世界《Canibal ISLAND》で散々こういうのとは戦ってきたんだよ」
シセラは機械と生身が混じった身体をしている。奇しくも私が嫌というほど、何千回と戦ってきたCIの裏ボス、【ムソウ】の様に。
――――――――――
何が起きているのだろうか。
目の前で、契約者が母上と渡り合っている。ステータスでは圧倒的に劣っているはずだ、昨日から成長していたとしても追いつけるわけがない。
それでも、対等に戦っている。
(彼女...主であるならば、骸蟲を倒せるかもしれません)
エリスはシセラが生前果たせなかった打倒骸蟲を犠牲を払わずに達成しようとしている。
そして今自分の契約者…主である彼女に希望を見出した。
――――――――――
槍の突きを半身で右に避け、槍に沿わせるようにオブシドを左手に取り出し叩きつけるが槍ごと下に弾かれる。弾かれた段階で右手に祭禮を出し右からの大振り、瞬時に引き寄せられた槍の中程で上に弾かれる。そのまま祭禮を放り投げ、振りかぶった姿勢の左手に再度オブシドを取り出しそのまま薙ぎ払い、槍をかすめ右手の小指を中程まで切りつける。シセラの表情が僅かに歪む。足で槍を抑えつつ踏み台にして空中の祭禮を掴み放った叩きつけを片腕で逸らされた。
(腕で弾かれるのか…エリスの腕みたいに柔そうに見えるんだけどな、小指が切れたのはあんま意味なさそうだし、やっぱ初見殺しでも対してダメージ与えられなかったか…こりゃあキツいかな)
初見殺しではあるが言葉にすれば単純、片手用武器を左右の手に入れ替えつつ取りだし武器を振った直後の硬直や反動を無理やりに消しているだけなのだ。
これをやってのけるにはUIを視なくても武器を取り出せる慣れがいる。
この世界にも慣れてきた、CIとシステムは似たような物だったのでそこまで時間がかからなかったのは幸いだろう。UIが同じような感じだったのもよかった。
だから得意だった戦法ができる。片手用武器で強制的に二刀流をするこの方法が。
別にカヤノヒメと戦った時のように二刀流してもいいのだが出来なかった、あの時の装備制限を無くす薬が何かの影響だろう。
まぁステータスの差があるので初見でダメージを与えられなかった時点で無意味になるが。




