ボス戦。なお時間経過で勝手に死ぬ模様
上位者の持続ダメ攻撃を受けて弱っていく相手をボコす時間です。
「…さて、と」
怒涛の勢いで去っていった兄を見送りカヤノヒメのほうを振り返る。吐き散らかすのは落ち着いたようだが口の隙間から歯軋りのような不快な音が響いてくる。怒っているのだろうか。
武器を取り出しながら夏将軍に問いかける。
「カヤノヒメそのうち死ぬんだよね?」
「そうだな…あと1分くらいか?」
「手、出さないでもらっっていい?」
「…構わんが、一人でやるのか?」
「うん、試運転も兼ねてね。それに…」
腕で首筋に垂れてきた粘液を払い落しながら答える。
「ちょっとイライラしてるんだ」
「…やっぱ兄妹だな」
「なんか言った?」
「いんや、まぁ頑張ってこい」
――――――――――
「えーとスキル名言えばいいのかな…『髄喰』…対象指定?カヤノヒメ」
『『髄喰』が発動。対象【大喰姫】過喰骸蟲・カヤノヒメ。ステータス上昇。
現在余ダメージ:0』
「うわビックリした」
『髄喰』のスキル名を唱えると小さくウィンドウが表示された。『髄喰』の対象と余ダメージが表示されている。
「余ダメでステ上がるとか書いてあったな…さてと、カヤノヒメさん」
相手が弱っているとはいえ腐っても《NBM》。ステータスの差は圧倒的だろう。
この戦いはカヤノヒメを倒すのが目的ではない。兄のスキルでカヤノヒメが倒れるまで約1分。それまで耐えることが目的。
本来なら戦わなくてもいいんだろうけど…逃げるのは性に合わないし暴食も試してみたい。
祭禮式斧:神樂を握りしめ駆けだす。
「実験台になってもらおうかな」
正面にカヤノヒメを見据え構える。攻撃手段は触手と…土系統魔法も多少使ってくるだろう。触手は片方吹き飛んでいるがもう一本は元気にビチビチだ。問題は土魔法、呪文を唱えるわけでもなく、杖等を振っている訳でもない。要するに予兆が分からないのだが…さてどうしようか。
左からの大振りな触手の攻撃をかがみながら避ける。そのまま距離を詰め斧を振りぬき胴体へと叩き込むがわずかにめり込む程度だ、大したダメージを与えられた気がしない。
再び迫りくる触手を避けるように距離を取る。
「硬いけど…トロイな、弱ってるからか?」
ダメージこそ与えられないものの相手の触手は先ほどまでの勢いはなく見て避けられるレベルだ。
兄貴の攻撃がかなり効いているのだろう。魔法でも使ってこない限り大丈夫だとか思っているが…
『gi』
鳴き声らしきものが聞こえると同時にカヤノヒメの眼前に幾何学的な模様、魔法陣が出現した。ああ、こうやって使うのか、予兆があってありがたい限りだ。
さて何をしてくるのか…魔法陣の周囲に鋭く尖った岩が形成されていく。その矛先はもちろんこちらだ。
「ちょっとやばいかもな」
岩の数が多い、見えるだけで十…増え続けている。
「さて、どんだけ飛ばせるのか…あったまってきたしいけるかな?」
祭禮を仕舞いオブシドに切り替える、こちらの方が火力は出ないが硬く軽い。取り回しならこちらが上だ。
一瞬の間の後、岩の弾丸が発射される。発射されるたびに新たな弾丸が生み出されているがそのすべてが自分に向かってきている訳ではなく当たらないものもある、当たらないものは無視だ。自身に当たるものを、脅威になるものだけを見極めろ。
「…すごいな、まだレベルは上がっていないはずだが…あんなことができる奴の妹なだけあるな」
動かした先の自らの体に、動かしている手足の動線上に、どの攻撃が飛んでくるか見極める。
刃で叩き割り、刃の横で防ぎ、時に柄の部分で弾き落とす。最低限の動きで捌ききれ。
速度は大したことないがやはり数が多い少しずつ攻撃を防ぎきれなくなっていく、砕いた破片が足にめり込み、肩を掠める。
10秒程猛攻が続いただろうか、段々と弾丸が細く、脆くなっていきやがて魔法陣が明滅の後、消滅した。MPがなくなったのだろうか。
しかし耐えた、体のあちこちに傷ができているし、左腕には弾丸が貫通した跡が出来ているが生きている。
斧も支えるのが精一杯だな。振り下ろすくらいしかできないだろう。
僅かだが地面が動いている…畝のように少し盛り上がっている感じだ。さっきはこんな事なかった気がするが…土魔法でも使っていたのだろうか?まぁどうでもいいことだ今大事なのはある程度動きが分かることだ。
目を凝らし土の動きを追う。こちらを伺うように動いている、隙を狙っているのだろう。
地の蠢きが収まり、足元が割れた。
飛びのきながらカヤノヒメのほうを見るとそこにあったのは土の柱だった。罠か。
「意外と頭回るんだねぇ」
斧を足元にやりつつ着地すると同時、足元が再びひび割れる。先ほどのように大口を開けたカヤノヒメだった。
「まぁ何度でも同じ手喰らうと思わないでよ」
しかし、今度はその口は閉じない。
閉口を妨げているのは、黒く硬き一本の斧。斧の上には一人の女。
斧を吐き出すまで一瞬しかないだろうがその時間があれば十分だ。軽く飛び、身を投げ、祭禮を構える。
体重を掛け振り下ろした一撃は口を大きく切り裂き、残された触手を叩き切った。




