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瑠璃の輝き。  作者: イヌ汰郎
第一章:今のための過去のお話
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食べられたことある?私はなかったけど

 突然わけわからないものが現れたが流石に皆ゲーム慣れしているというか、立て直しも早かった。

 カヤノヒメとやらは上を向いたまま口らしき部位を動かしている。金属だろうとお構いなしに喰ってしまっているようだ。口の端から鎧のようなものが落ちてきている。

 近場にいた夏将軍に話しかける。


「何コイツ?!」

「この平原の頂点、さっき話したエリアボスだ」

「めんどくさそう」

「実際めんどくさい。近接じゃキツイしフレースのMPは尽き欠けてて婆さんは相性が悪い」

「どうすんのさ」

「...まぁやれるだけやるしかないさ」

『Gigigigiryuryu...』


 白く筒状の身体、ギラリと牙が並んでいるだけの口には左右にクワガタの顎のように鋭いモノが、さらに胴体に向かって先端が四又に分かれた触腕というべきであろうモノも何本か生えている。

 眼は見当たらないがこちらを向いて唸っているように見える。

 食べ方汚いなぁとか気持ち悪いなぁ。とか思案していると。


『『Piii』』

「...溶けちまったようだね」


 自分たちの斜め後ろ、崩れた壁の残骸を乗り越えて姿を現したのは、無数の金属球。マルタ達にとってもこの状況(カヤノヒメ)は予想外だったようで攻撃はしてこない。そしてカヤノヒメも獲物を見定めるように首を動かすだけだ。

 膠着状態が数秒流れる、最初に動いたのはカヤノヒメ...ではなく攻撃を受けたのがカヤノヒメ。

 シュンと音が聞こえたと思った瞬間にはカヤノヒメの触腕が一本吹き飛びその身体に深々と巨大な矢が突き刺さっていた。矢が突き刺さった瞬間三勢力が同時に動き出す。


『Giryuryuryuryu!!!』

『PiPi』

「下がるぞ!」


 カヤノヒメが長い体に捻りを入れながら上から突っ込んでくる。正面から受けたらひとたまりもないだろう。というか、あの巨大な口に飲み込まれてしまうだろう。

 ほぼ同時にマルタが機銃を展開しカヤノヒメに向かって掃射する、銃口はカヤノヒメを狙っているもののカヤノヒメはこちらに突っ込んできている訳で...

 まぁ要するに私達は化け物と機械に同時攻撃される形なわけだ。


「『斜罫氷柱』

『スターボード』

『マッドブロー』」


 それよりも早くカヤノヒメを右側から吹き飛ばすように三者の攻撃が繰り出された。カヤノヒメは左に大きく逸れ、追従するように弾丸も方向を変える。

 カヤノヒメはその身に銃撃を受けながらも地面の中へと潜っていった。その胴体にも短いながらも足のようなものが無数に生えている。

 そのまま飛び出した先はマルタ達のど真ん中。どうやら標的を変えてくれたようで一安心だ。


「んで?どうすんのさアレ。キモイんだけど」

「…ほっといていいんじゃないか?」

「あのまま同士討ちになってくれると楽でいいんだけどねぇ」

「いやダメだ」


 楽観的な会話をする私達を遮ったのはフレース(専門家)だ。


あの程度(マルタ達)の戦力じゃ止められないだろう。それにここまで街に近づいているとあのサイズだとそのまま街を狙ってくる…と思う」

「…そういや始めたての頃一回あったな」


 聞けばこのゲームが発売したばかりの頃、意図せずして遭遇したプレイヤーが街まで逃げ込んできてそのままカヤノヒメが街を襲撃しプレイヤー、NPC共に被害が出たらしい。


「アイツの飢えは満たされたところを見たことないし、動けば動くほど燃費が悪いから飢えていく、マルタは数はいるから余計動き回って腹を空かせると思う」

「…じゃあ倒すの?アレを?」

「「……」」


 問いかけに全員が黙る。先ほど聞いた通りならかなり悪い状況らしいが。


「…カヤノヒメはランダムで魔法の属性に耐性を得るんだ。あれは白いから氷に耐性を持ってる…つまり一三子さんは戦力外。そして僕もMPが無い…というかアイツは土系統の魔法が使えるんだ。そもそも相性が悪い」


 うーん、攻撃役がいないのか…近接組も魔法職組もダメとなると...


「あれ?詰んだ?」

「そうだな、耐えるっつっても俺はしばらくは盾職には戻れんし、盾職ができる奴は他にいないしな…」

「そういや、援軍呼びに行ったんじゃなかったっけ」

「多分来ない、カヤノヒメが街の方向から現れたし…鎧食べてたから」

「あー…」


 食われたのか…いやいろんなゲームやってきたけど食べられたことはないなぁ…齧られたことはあるけど。

 夏将軍が警告を上げる。 


「また潜った!警戒!」


 話を聞くにカヤノヒメからしたらマルタも人も関係ない。どちらも等しく敵で獲物で食料だ。

 全員が警戒していてこちらには土系統魔法職のエキスパートがいた。まぁカヤノヒメは触腕はともかく本体はそこまで早くないっぽいので大丈夫なはずだったのだが。

 ただタイミングが悪かった。目標を見失ったマルタが数機こちらに銃口を向け、乱射する。回避と防御に意識を割かれた瞬間―――地面から土の柱が生えてきて数人が打ち上げられた。

 直後、カヤノヒメが少し離れた所から姿を現し、一番近かったこちらへ突っ込んでくる。


「…キッショイ!」


 内側に無数の歯、外側に無数の触腕を生やした口がまっすぐ向かってくるものの、私には空中でとれる手段など持っている訳もなく。斧一本でどうこうできる状況でもないので。

 なすすべもなく口内に取り込まれ迫りくる歯が次々と突き刺さりHPが激減していくのを最後に暗かった視界は白く染まった。

ログアウト、ログイン、リスポーン、は視界が白くなります。状態異常の睡眠とか気絶とかもですが。

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