ハッキング
「彼を止める方法があります」
突然エリスが言う。
「方法って...どうやって?」
「詳細は省きます、ただ彼を止めるとワタシの正体が露呈します」
「んー...なんかバレるとまずいことあるっけ?」
「主の今後に問題が出る可能性が」
「あー...んなこたどうでもいいよ。出来るならやっちゃっていいよ」
「...了解、僅かでいいです。隙を作ってください。合わせます」
「えーと隙、隙ねぇ」
あれに?
「脚部及び背部加速装置展開...起動、『槍身一体』」
「いくよー?よし、じゃあね初期武器君ッ『アンプトン』!」
こういうきの投擲。実に便利だ、耐久値がゴリゴリ削れることに目を瞑れば。
「ッ!」
視界の外から飛んでいった斧は軽々と防がれてしまった、というか粉みじんになった
基本的にRPGなどで一番最初に配られる武器は中途半端に強化されて放置されるか売られて僅かな軍資金になるかだろう。
少なくともこんな風に投擲されて難なく弾かれて粉々になるものではないはずだ。
うわ絶対こっちみてる。
「これでいいんかいエリ...いないし。どこ行ったんだあの子...いたわ」
飛んでる。超低空を。速いなぁ。
――――――――――
「脚部及び背部加速装置展開...起動、『槍身一体』」
主の投擲に合わせて加速装置の出力を上げる。
多少無理をしてでも彼を止めなくてはならない。何をしようとしているかはおおよそ想像がつく。
このまま放置し街にでもたどり着くことがあれば多くの犠牲者が出るだろう。それは彼も望んでいないことのはずだ。
出来るだけ距離を取って背後に回り込む、生半可な速度では防がれる感知範囲の外から全速力で、背部目掛けて突っ込む。
「加速装置最大出力、『スラストランス』!」
装甲の繋ぎ目に穂先が半ば程まで刺さった程度だが充分だ。
「!!正体不明機体...!?」
「...謝罪はしません」
こちらを認識し一瞬動きが止まった隙をつき、槍で無理やり装甲に隙間を作り内部に腕を突っ込む。
…発見、伝達系の機関だ。手づかみで基盤を掴み乗っ取る。
命令系統掌握...権限第一位による優先命令の削除...完了...主電源調整...
「強制停止」
――――――――――
「おー...止まった?のかな」
エリスが背中に突っ込んで何をしたか知らないがマルトは止まったようだ。
「おいルリ嬢」
「うわっ...びっくりした、何?」
「アイツはなんだ」
「あーエリスのこと?えーと...」
「勝手だが鑑定させてもらってる、プレイヤーじゃないことも種族がなにかもわかってる。知らん種族だったが...あんな風に飛ぶ事ができる奴を俺は一人しか知らん。そしてそいつと似たことが誰にも出来んのも知ってる」
「...はぁ、私も詳しくは知らないよ、多分今から本人が話してくれるよ」
問題ってこういうことかぁ...まあそうなるよなぁ。
――――――――――
停止したマルトの前に今いる全員が集まる。残っているのは夏将軍のチームとフレース、一二三さんと司書さん、そして私達三人娘だけのようだ。
「...よし全員集まったな、じゃあ話してもらおうか。エリス嬢、お前はなんだ?なぜあんな芸当ができる?」
「...」
エリスがこちらを見る、話していいのか迷っているようだ。
「話しなよ、私も知りたいし」
「承諾...当機の正式名称は【RIES‐E型】過去の人間の複製品です」
「人の複製品...クローン?」
「当機は今現在も存在している帝国が衰退する前。約2000年前の戦争時に死亡したとある子供を模して造られ、脳から記憶を複製し植え付けた物。厳密には異なりますが似たようなものです」
「2000年前...エリス嬢がナニかは分かったがそれがなんでアレを止めるようなことが出来る?」
夏将軍が指差すのは静かになったマルト。確かになんであれを止めるようなことができるのだろうか...目っぽいの光ってるけどこれほんとに止まってんの?
「...長くなりますが話します。当機の出自と目的」
「マテ」
「!?」
マルトの胸部が開き黒いキューブが出てきた。仕組みは分からないが宙に浮いている。
全員が警戒しているとキューブから流暢な声が聞こえた。
「既に敵対する気はない。戦闘命令は解除されているからな」
「じゃあ何しに出てきた?そのまま全部連れて帰ってくれるとありがたいんだが」
「おじょ...エリス様の説明では不足する部分があるだろう。補足してやる」
「ありがたいけど目的は何?さっきまで皆殺されそうになってたんだけど?」
「上の命令には逆らえない。命令を一度エリス様が消したからこうして喋れている」
「…わかった、話を聞こう」




