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瑠璃の輝き。  作者: イヌ汰郎
第一章:今のための過去のお話
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自己犠牲

「私強くなりたいな」


 珍しく一日中静かだった芽瑠が帰り道でポツリとつぶやいた。


「...昨日の事?」

「...エニちゃん死んじゃったじゃん、もっと強かったら助けられたのかなって」


 あの世界ではNPCが死ぬなどよくあることだ。

 一昨日クエストで訪れた村、何回か来たことがありプレイヤーが多くても20人ほどしかいない小さな名もない村。

 その村で暮らす家族思いの騎士に憧れる少し年下の女の子、それがエニちゃんだ。

 母親と弟の三人暮らし、父親は王都の騎士で二年前殉職したらしい。

 私たちはすぐに仲良くなった。エニちゃんは成人したら王都の騎士になって家族を街で暮らしていけるようにするんだといつも言っていたのを覚えている。

 一昨日もいつものモンスター退治、簡単だった。いつもより簡単だったくらいだ。日が落ちた頃にクエストは達成し、明日ログインして街に戻ろうということで村の宿に泊まった。

 次の日、ログインして宿で目覚めた時には村はすでに狼型のモンスターの群れに襲われていた。

 他にプレイヤーがいたとはいえ全てを守り切れるわけではない、見返りがあるかもわからないのにデスペナルティの危険を冒してまで戦おうとする者もいなかった。

 村内の狼たちを倒しながらたどり着いた私達が彼女の家の庭で見たのは弟を背に隠し、自らに噛みつく狼の首に斧を叩きこんだ彼女の姿だった。

 私では彼女は治せなかった、うわごとのように「皆を助けて」と呟き続ける彼女はそのまま塵とかした。

この世界に生きるモノはみな等しくHPが0になれば塵となる、後には身につけていた物しか残らない。

 彼女の弟、フォン君は気絶はしていたが大した傷もなかった。母親はいなかった、代わりに血で汚れた服とエプロンが落ちていた。

 私達はしばらく動けなかった、弓を持ったお姉さんが助けに来なければ全員やられていただろう。

 私達三人を転移させる直前、お姉さんが対峙していたのは双頭の巨狼だった。

 気づけば王都の門の前に飛んでいた、周りには村で見かけたことのある人が数人座り込んでいた。

 しばらくして飛んできたお姉さんに話を聞くと助けられたのはこれで全員らしい。

 そして村を襲ったのは狼のネームドらしい。しかもテイム個体、つまり人為的なものだ。その後はすぐに逃げてきたのでどうなったかは分からないと。

 フォン君は王都の孤児院に預けられた。混乱しているようだが強い子なのは知っている、大丈夫だろう。


「そう...だね強くなろうね」

「うんフォン君が大人になるまでは私達が助けてあげないと」


 その日から私達のやるべきことがはっきりした。親友の弟を守る。

 そして敵を討つ。


 ――――――――――


「ボケっとすんな!」


 夏将軍の声で現実に戻された。どうやら吹き飛ばされて意識が飛んでいたみたいだ。

 ヤツが何らかのスキルを発動したのは分かった。その後、薙刀振りかぶったと思った直後。

 気づけばメルエスごと吹き飛ばされていた。彼女はどうなった?


「ちか」

「...メル!」


 正面に立っていた、薙刀の刃の部分が胴体の半ばまで突き刺さった状態で。薙刀をしっかりと右手でつかんで逃がさない。


「フレースあとは頼みました。守ってください」


 メルがそのまま爆ぜ、周囲に煙をばら撒く。

 あれは助けられなかった彼女が自身を犠牲にしてでも助ける為のスキルだ。


「一名、排除」


 それにも怯まず薙刀が煙を切り裂き襲い来るが夏将軍が強引に受け流す。


「大丈夫か?」

「...ふー、大丈夫だ」


 立ち上がり、機人を正面に見据え杖を構える。壁の向こう側から聞こえる音が少なくなっている、もう壁も不要だろうと判断し壁を崩し土を確保する。


「時間稼ぎはやめだ。親友二人との約束、ここでお前はぶっ壊す」

「いいね、守るのも飽きてきたところだ」


 ――――――――――


『速クナッテ?...イヤ、遅クサレテイル...ダケデハナイ』


 機人が自身の違和感に気づいたのはすぐだった。

 速度、威力そして防御力の低下。

 こちらのほうがまだ上だが差が埋められている。


『女カ...』


 メルの使ったスキルは敵対対象と守護対象の二つがある状態で自刃によって発動する。

 効果は敵対対象のSTRとAGI、VITの割合低下。

 効果時間ははどちらかの対象が消滅するまで、もしくは10分。

 この間敵対対象と守護対象は50M以上離れられない。

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