突発的防衛戦開始
前回の最後のほうに自己紹介し合う部分を映しました
『ワールドクエスト進行エリア出現中、一定エリア内での通常リスポーンに制限がかかります』
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森からゆっくりと転がり出てきた大体2メートルくらいの大きさの金属球、かなりの数だ。
ここから見えるだけでも2,30はある。
「...なんか出てきたぞ」
「みりゃわかるよ」
「あれが敵?でいいの?」
「少なくとも自然現象とかじゃないだろうけど...敵だよな?」
私たちが困惑していると金属球が停止し、そして―――
『Piiiiiiiiiii』
「何だ急に!」
「うるさ!」
アラーム音のようなものを鳴り響かせた。かなりの音量だ。
数秒だったが一瞬この場のプレイヤーの動きが止まる。
『異邦人を確認、敵対的と判定、排除を開始』
そんな音が聞こえた直後、金属球が変形した。変形というより展開と言ったほうが近いかもしれない。
とりあえずわかることは金属球が敵で確定だということ、そしてすでに向こうは攻撃準備が完了しているってことだ。
「後ろにいろ」
『掃射』
響くは轟音、変形した金属球から打ち出される銃弾、とてもファンタジー世界の光景ではない。
それらを全て受け止めているのは私たちの前に出た夏将軍の馬鹿でかい大楯...違うなこれどう見てもサーフボードだこれ。
マントを脱ぎ棄てているのは良しとしよう戦闘時には動きづらいこともある、でもどうしてこの人は海パンしかつけていないのだろうか?どう考えても弱体化だ。
「なんで脱いでんのぉぉぉ!?」
「これが俺のスタイルだぁぁぁ!!」
ダメだ。こいつは変態だ。しかし離れたいが離れられない。
悔しいことのに彼のサーフボード?がすべての弾を受け止めているのは事実だ。
他のプレイヤー達は全滅とまではいかないが無傷のもののほうが少ないが、夏将軍の後ろにいる私たちはかすり傷すら負っていない。
早いとこ逃げなくては...とか考えていると夏将軍の仲間、沙羅身だったかが話しかけてきた。
「安心してください彼だって好きであんな格好をしているわけではありません」
「うおおおおおこの痛みが俺を強くする!」
「...あれで?」
「...まぁ多少は趣味もあるかもしれませんが!彼は防具をつけないほど強くなるんです」
「あーなるほど...」
デザイアスキルかなんかだろう、どう見ても理由がそれだけには見えないが。
そんな会話をしていると敵の攻撃が止んでいた。30秒程だっただろうか。
「...止んだぞ」
「弾切れ?」
「いや放熱っぽいな...名前しかわからんが鑑定できたぞ『マルタ』だ」
恐る恐る顔を出すと『マルタ』が赤くなった銃身を格納しながら近づいてきていた。
しかし先ほどの銃撃で他プレイヤーの統制が取れていない。逃げ出す者もいる始末だ。
「これマズくねぇ?」
「ああマズイな、崩れてる」
このままではどっかが突破されそうだ。そもそも私が通用するのかすら怪しいんだが。
この状況で私に何かできることはないだろうか?
「まぁ安心しろ」
とか考えていたら誰かが敵に向かって歩いていく、私たちに指示を出した人のようだ。
迷いのないまっすぐとした歩みだ。
静かに詠唱をし、地面に手を当て唱えた。
「アースモートル」「赤熱土嶽」
一瞬の出来事だった。左右に数十メートル程だろうか、堀ができそのこちら側に2メートルほどの壁が造られる
壁の上から覗き込んだ時には一面が赤く熱を持った土の槍が広がっていた。
「あの人はこの平原で最強だ」