要塞都市
「同行者を増やして良いのですか?」
「んーなんで?」
「昨晩からワタシ...いえワタシ達は狙われています」
「私も?」
「主は玄に個として認識されました、敵対対象です」
「あーあれそういう意味なの。まぁいいんじゃない。昨日の今日で見つからないっしょ」
「早計」
「何の話してるんですかー?」
女三人寄れば姦しい。強い敵が出るわけでもないのでサクサク進める。
そうして2時間ほどで王都へたどりついた。
――――――――――
「でっかい門だねぇ」
「なんか大昔の戦争の防衛拠点だった?名残とからしいですよ」
「へーそうなの?エリス」
「戦争の防衛拠点...正解です」
要塞都市エイズン、この世界に降り立ったプレイヤーの大多数が立ち寄る都市だ。そういえばこの国はエクルタスとか言うらしい。
「なんかちょっと機械的?っていうか金属っぽい壁だね」
「大昔は文明がもっと発達していたらしいですからね、そのまま残ってるんじゃないですか?」
大昔の高度な文明ね...エリスはやはりその時代のものだろう。
ここまで人間そっくりに作れるような文明だったなら何か記録が残っているだろうか?早く図書館に行きたいものだ。
王都のはずだが出入りするのに特に審査などはないようだ。
「さてと、私は図書館ってとこに行きたいんだけど二人はどうする?」
「ワタシはやることがあります、では」
「私はついて行っていいですか?」
「いいよ、じゃあエリス後で...いないし」
勝手に出てきたと思ったら、一人でどこかへ行ってしまった。自由なやつだ。
「じゃ行こうか」
「はい!」
――――――――――
「ここかな?」
「みたいですね」
一言でいえば神殿のような建物、ここが図書館のようだ。
あまり人気のない通りの奥、人に聞きながら来なければわからなかっただろう。
「重そうな扉ですねー、うわ動いた」
「この見た目で自動ドア...」
どう見ても押戸、なのに自動で開いた。なにで動いてるんだろうか?
「広いな」
「どこから探せばいいんでしょう...というか何を探すんです?」
「うーん...黒い鬼と、あと大昔にあったとかいう文明の事かな」
見渡す限り本棚ばかりだ、軽く数万冊はあるだろう。
さてどうやって探したものか...
「ここが受付っぽいね」
「司書さんとか居ないですかねー、すいませーん...誰もいないんですかね」
「...何か用、ですか」
「うわっ」
受付らしきものをのぞき込んでいると後ろから急に声をかけられた。
振り返ると緑のエプロンをつけた『職員です』と言わんばかりの背の高い女性。
「えーと司書さん?」
「...まぁそんなもの、それで探してるのは」
「えっと黒い鬼のことと滅んだ文明のことかな」
「滅んだ文明...歴史?は7の棚の左側、黒い鬼は...分からない」
「そっか...わかったありがとう」
「館長に聞いてくる、先に行ってて」
それだけいうと司書(仮)は小走りで駆けて行った。
「なんか静かな人?ですね」
「そうだね、とりあえず行こうか」
「はい。えっと7番7番...ここですね」
人はいないし薄暗いがしっかりと掃除が行き届いている。かなり綺麗だ。
「で、どの本?」
「知らないです」
「だよねー、1冊ずつ調べるしかないか...」
背丈の2倍はあるであろう本棚にぎっしり詰まった本の数々。この中から必要な情報を見つけ出すのは難しいだろう。
目についたものから適当に見ていくか...
「ていうかついてこなくてもよかったのに」
「良いんです、どうせやることないですし」
雑談しながらお目当てのものを探す。
えーと『傭兵国家メルセナの歴史』、『アマツ連邦の成り立ち』、『大帝国が崩壊するまで』これかな...違う、『エクルタスの建国』...この国の建国か、とりあえずこれにしようか。
――――――――――
「お前さん達、なにを探しとるのかね?」
片っ端から本を流し見していたら急に声をかけられた。
「滅んだっていう文明と鬼の本...誰?」
「あたしはこの図書館で館長を務めている一三子ちゅーもんだよ」
「ひみこ...日本人?」
「まぁそうだね今年で62の婆さんだがね」
プレイヤーが館長とは驚いた、自由度が高いとはいえ結構重要そうなポジションだが...
「ごめんなさい、館長見つからなかっ...いた」
「あ司書さん」
「遅かったね、ほれあの本とっとくれ」
「はいおばあちゃ...館長、これ?」
おばあちゃんって言ったな今、孫かな。というか今とった本って...
「『大帝国が崩壊するまで』?これに文明のことが載ってるの?」
「滅んだ文明ってのは大昔の高度な技術を持った文明のことだろう?その文明は滅んだんじゃなくて衰退しただけなのさ、そして今の帝国がその衰退した姿なんだよ」
高度な技術を持っていたのは1国だったのか、それが衰退した。と
帝国がどこまでの勢力だったかは知らないがこの辺にエリスが創れるような施設があっただろうか?なにかヒントでも欲しいが...
「さてと、久しぶりのお客さんだ。私が歴史について軽く教えてあげよう」
世界は平和です。