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星空の下で  作者: ミネラル太郎
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出会い

 

 **星空の下で - 第一章「新しい星」**


 僕の名前は藤原ユウキ。16歳の普通の高校生。ただ、他の誰とも少し違う。人ごみが苦手で、大きな声で笑うことも少ない。でも、それでいい。僕には星がある。星空を見上げる時間が、僕の心を静かに満たしてくれる。


 学校の屋上は、僕の秘密の隠れ家みたいなものだ。放課後、いつものように天体望遠鏡を設置して、星を眺めていた。夏の夜空は特別で、織姫星と彦星が年に一度、出会う季節。僕はその瞬間を毎年楽しみにしている。


「新しい転校生が来たらしいよ」

 と、友人のケンジが言った。彼は僕の唯一の友達で、よく僕の隣に立って空を見上げる。でも、彼にとって星はただの星。僕にとっては、もっと特別なものだ。


 その日、ケンジはいつも以上に興奮していた。

「彼女、すごく綺麗で明るいんだって。クラス中がもう騒いでるよ」

 と。僕は望遠鏡に目を戻し、彼の言葉を適当に聞き流した。僕には星があれば十分だった。


 でも、その日の放課後、何かが変わった。天文部のドアが開き、一人の女の子が入ってきた。彼女がその転校生、ミユキだった。


「こんにちは、天文部ってここ?」

 彼女の声は明るく、部屋に満ちた。僕は何と答えていいかわからず、ただ頷いた。彼女は僕の望遠鏡を興味深く見つめ、話しかけてきた。

「星、好きなんですか?」

 その質問に、僕は少し驚いた。普通、僕たちの年代の子は星なんてあまり気にしない。でも彼女は違った。彼女の目には、星への興味が輝いていた。


「ええ、特に夏の星空が好きです」

 と僕は答えた。彼女は笑った。その笑顔は、夜空の星々よりも明るく、僕は一瞬、言葉を失った。


 そこから、彼女との会話は自然に流れた。星座の話、星にまつわる神話、天体観測の技術について。彼女は知識が豊富で、僕と同じく星空に魅了されていた。


 夜が深まるにつれ、僕たちは話すことに夢中になった。まるで時間が止まったように感じた。僕は初めて、他人とこんなに長く、楽しく話した。彼女は僕の隠れ家に新しい光をもたらした。


 帰り際、彼女は

「また来てもいいですか?」

 と訊いた。僕は驚きながらも、うなずいた。彼女の来訪が、僕の日常に新しい風を吹き込んでいたことを感じていたからだ。


 次の日から、ミユキは毎日放課後に天文部にやって来た。彼女のおかげで、天文部はこれまでにない活気に満ちた。彼女は人を惹きつける力がある。クラスメイトたちも彼女の明るさに惹かれ、時には彼女を中心に賑やかな話が繰り広げられた。


 でも、僕とミユキだけの時は、彼女はまた違う顔を見せた。もっと静かで、考え深い。星について話すときの彼女は、まるで別の世界にいるようだった。


 ある日、彼女が突然

「星に願い事をすると叶うって、本当だと思いますか?」

 と訊いた。その質問に、僕は少し考えた。星に願い事をするのは、子供っぽいと思っていたけれど、彼女の真剣な眼差しに、心を動かされた。


「わからない。でも、もし本当に叶うなら、何を願いますか?」

 と僕が尋ねると、彼女はしばらく黙っていた。そして、静かに「家族がもっと幸せになれるように」

 と言った。彼女の声には、深い願いが込められていた。


 その晩、僕たちは星空を見上げながら、家族の話をした。彼女の家庭は複雑で、時には苦しい状況にあることを知った。僕には想像もつかないような話だった。僕は、ただ黙って彼女の話を聞いた。言葉にすることができなかったけれど、僕の心は彼女に寄り添っていた。


 それからの毎日、僕たちはもっと多くの時間を一緒に過ごすようになった。学校が終わると、屋上で星空を見上げ、星について、夢について、生活について話した。彼女の存在が、僕の日常を少しずつ変えていった。


 しかし、ミユキの家庭の問題は深刻で、時には彼女の表情を曇らせた。僕にできることは少なかったが、僕は彼女の隣にいることを選んだ。星空の下で、僕たちはお互いの存在に寄り添い、静かな支え合いを見つけていた。


 僕たちは特別な星座を眺めていた。彼女が突然、「ユウキくん、ありがとう。星空の下で話せて、本当に良かったです」と言った。僕は何も言えず、ただ微笑んだ。その夜、星空はいつもよりも明るく輝いていたように感じた。


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