スーパーの女
ウーマン「スーパーの女」
「いらっしゃいませ〜」
今日も朝から、仕事にはげむ私。
棚卸しからレジ打ち、スーパーの仕事に休みは無い。
時給980円、お金のためには頑張る頑張る、家族のために頑張る頑張る。
でも…
唯一の楽しみが一つある。
あの人だ、
いつも買いに来てくれる王子様。
「私の白馬の王子様!」
歳は20代後半ぐらい、イケメン、高身長、
白いシャツと紺色のパンツが超〜似合う。
高そうな時計に、高そうな靴、
シルバーのBMWで颯爽とやって来る。
カッコイイーー
まるで白馬の王子様そのまんま!
私の好み♡
毎日ではないが、週に一度は必ず来てくれる。
「あんな人と結婚したかったな〜」
カッコイイ王子様と少女漫画のような恋愛、何回夢みたことか、
子供の頃は、本当に白馬の王子様が迎えに来てくれると信じていた。
現実は…
牛丼大好き汗だく旦那。
パチンコ、競輪、競馬、ギャンブル趣味多々。
「まったく違う〜」
トレードマークの短パンTシャツが、はち切れんばかり。
「また、太ったの?」
「えへへ、80キロ」
幻滅。
あーあ、どこで間違えちゃったんだろう。
私の白馬王子様は、カバの中年オヤジになっていた。
馬鹿みたい、(笑い)
今は、子育て、家事に、追われるアラフォー主婦。
白髪も増えた。
シワも増えた。
誰も声をかけてくれない。
誰も振り向いてくれない…
王子様がレジに来た。
王子様に会うと、つい緊張してしまう。
震える手が止まらない。
トキメキが〜心臓がドキドキする〜
は〜っ、気持ちは少女!
「お、お釣りです」
あっ、手が触れた、
顔が真っ赤になる。
恥ずかしい。
いい歳して何しているんだろう、
同僚の笹山さんが、側にやって来た。
「どうしたのよ川島さん、顔が真っ赤よ」
「えっ、」びっくりした顔の私。
「イケメンよね〜」
「私も好み!カッコイイよね、優しそうだし」
「あーあ、あんな男の人と結婚したかったなぁ〜」
私と同じことを言っている。
みんな、そう思っているんだ。
でも、私だけの白馬の王子様♡
妄想〜
ある日、
あれ、
王子様、子連れ?
王子様が、子供を連れてやって来た。
よく考えたら、そうだろう。あんないい男、結婚していないはずがない。
そうだろ、そうだろ、
ちょっとガッカリ。
でも、可愛い子供だ、女の子だ。品のいいワンピースを着ている。
やっぱり、王子様の子供も可愛い。
あれ、
怖そうな女の人が、
王子様の奥さんか?
キツそうな顔、
ちょっと、お店のお局様に似ている。
ああいう人が好みなんだ、
王子様に小言を言っている。
おー怖っ、
王子様がペコペコしている、カートを押してあげている、商品を取ってあげている。
ちょっとガッカリ、
あれは尻に敷かれているタイプだな、大変、大変。
まあ、そんなものだ、
王子様なんて夢の産物。
何か、気が楽になった。
人の不幸で喜ぶのは気が引けるが、何か、楽しい。
いい男は鑑賞しているだけで十分だ。
パンダも飼うのは大変だが、見るのは楽しい。
おっと、仕事の終わる時間だ。
たまには、旦那にビールでも買って帰るか、牛丼もか?
そんなこんなで、今日も一日が終わる。
明日も頑張ろう!