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妹が吸血鬼の花嫁になりました。  作者: 緋村 燐
3.狙われる花嫁達
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お別れ会 後編

 その後結局これからランチの店に行くのも面倒だとなって、カフェで食事をとることにする。


 楽だったけれど、お昼の時間に余裕を持たせていた分がまるっと余った状態になってしまった。



 なので、少し途中にある雑貨店で買い物でもして時間を潰すことにした。


 商店街の中にある雑貨店。


 そこに行く途中見覚えのある人の姿を見つけた。



「あれって、鈴木君?」


 そこまで関わりのあった人ではないけれど、流石に人生初の告白をしてくれた人だ。


 そのあとの騒動も含めて中々忘れられない人物でもある。



 しかも最後に見かけたのが同じ商店街ということもあって思い出しやすかった。


「え? 何? 何か凄い美人さんと一緒なんだけど⁉」


 そこそこ距離はあったけれど様子をうかがえないほど離れてはいない。


 鈴木君と一緒にいるのはロングボブの茶髪のスレンダーな美人さんだった。



「ああ、あいつまたここにいたのね」


 私の言葉に有香が気付いて呆れの声を上げている。


「鈴木君さ、あんたに振られてから良く商店街ぶらつくようになったのよね。滅茶苦茶美人な人と一緒にいたって話も聞いたから、多分あの人のことね」


「え?」


「途中から原田さんも一緒になって何かやってるみたいだよ」


「原田さんも?」



 原田さんって、原田 明里さん?


 あの噂好きの?


 接点があまり思いつかないんだけれど……。



「何やってるのかな? 私が振ってからって……何か私が原因になってる?」


 だとしたらちょっと気になる。


 私が原因で悪いことに手を染めてるとかだったら嫌だし。



「何やってるかは分からないけれど、悪いことしてるって感じじゃあないわよ? そこまで気にしなくていいんじゃない?」


 軽く言う有香に、それなら良いんだけど……と鈴木君達から目を逸らした。


 それと同時に、近くにいた俊君が私の肩を抱いてくる。



「っ⁉ え?」


 突然の行動にとにかく驚いた。


「俊君、何を⁉」


 過度なスキンシップかと思って注意しようとしたけれど、見上げた彼の顔は真剣なもの。



「……聖良先輩。念のため、離れないで下さいね」


「っ……うん」


 何があったのか、分からなかったけれど警戒するべきものがあったんだろう。


 私は素直に従った。



 でも事情を知らない有香は……。


「聖良……本当に赤井くんと付き合ってないんだよね……?」


 じとーっと睨まれる。


「そういうんじゃないよ」


 とは言ったけれど、この状態じゃ説得力はなさそうだなと思った。



 有香に疑わし気に見られながら何とか目的の雑貨店に入ると、俊君はやっと肩を抱く腕を離してくれた。


「すみません。俺達以外の吸血鬼の気配がしたので……」


 離れる前にこそっと教えてくれた。


「今は大丈夫なの?」


「はい、店の中には仲間しかいないみたいですから」


 そうして離れると、俊君の腕に有香が飛びついた。



「聖良ばっかりズルい! あたしも赤井くんとスキンシップしたいよ」


「え? いや、今のは護衛としてやったことですから……」


 突然腕に抱き着かれた俊君は、チャラい見た目に反してタジタジになりつつ言い返す。

 けれど、有香は納得しなかったみたいだ。



「でも離したってことは今は大丈夫なんでしょう? じゃあちょっとくらい良いじゃない」


「いや、ですから――」


「あ、大丈夫だよ」


 少しイラついた声音になった俊君の言葉を遮った。



 このままいつぞやのようにブリザード吹雪かせられたらたまらないからね。


「ちゃんと俊君の手の届く範囲にいるから、ちょっとそのままでいてあげて」


 そうお願いした。


「……離れないでくださいよ?」


 前科があるため胡散臭そうな目で見られたけれど、一応了承は得られる。



 本当ならこういう時のために浪岡君と二人体制なはずなんだけれど……。


 チラリと見た浪岡君は友人二人にがっちり両腕を掴まれていた。



 ある程度予想はしていたとはいえ……これじゃあ私の護衛どころじゃないよね。



 苦笑いしつつ、私は近くにある雑貨を物色し始めた。




 そうしているうちに有香は満足したのか、いつの間にか俊君から離れて私と一緒に商品を見るようになる。


「あれ? もう俊君は良いの?」


「うん、ちょっとはくっつけたしね。それにあんまり拘束すると怒らせちゃいそうだし」


「ははは」


 くっついた時点で怒られそうだったってのは言わないでおいた方がいいかな?



「あ、この香水の瓶可愛い。どんな香りかな?」


 そう言って有香は手首にサンプルを吹きかけた。


 その時、今まで袖で見えなかった場所に赤いものが見える。



「あれ? 有香、それ虫刺され?」


「え? ああ、そうそうもう夏も終わりなのにしぶとい蚊がいたみたいでさ」


 そう言って、有香はさりげなく袖でその虫刺されを隠していた。



「そう……」


 少しの引っ掛かりを覚える。


 だって、有香のそれは虫刺されというより……キスマークのように見えたから。


 少し前まで、早く消えろーと見続けていた私の首にあったものと似ている様に見えたから……。



 もう少し突っ込んで聞いていいものか迷っていると、また別の声がした。


「え? 香月?」


「ん?」


 名前を呼ばれ、声の方を見る。


 そこには“飴屋”こと忍野君がいた。



「あ、忍野君久しぶり。偶然だね?」


 まさか忍野君にまで会うとは思わなくて驚いたけれど、その忍野君は私以上に驚いた表情をしていた。



「え? なんで? 香月、どうしてここにいるんだ?」


 驚きと、何か焦っているような様子。


 不思議ではあったけれど、とりあえず質問に答えた。



「何でって、延期してたお別れ会をしに。有香達に会いに来たんだよ?」


「嘘だろ……」


 何故か焦燥にかられたみたいな様子。


 無駄に不安を掻き立てられる感じがして私は眉を寄せた。



「なに? 来ちゃいけなかったわけ?」


「あ、いやその……今は来ない方が良かったんじゃねぇかなって……」


「今は?」


 今は来ない方が良いようなこと、何かあっただろうか?


 少なくと私は思いつかない。



 どういうことか聞こうと思ったら、忍野君は突然ハッと顔を上げる。


「もしかして、お前の妹も帰ってきてるのか?」


「え? うん、そうだけど?」


「嘘だろ⁉ マジかよ」


「え? ちょっ、忍野君⁉」


 嘘だろ、と呟きながら彼は挨拶もなしに去って行ってしまった。



「……何ですかあれ?」


「さあ?」


 俊君に聞かれたけれど、私だって分かるわけがない。



「何なんだろうね。……あ、そう言えば忍野君もみんなに飴あげなくなったんだよね。それも聖良がいなくなってからだと思ったけど」


 忍野君が去って行った方を一緒に見ながら有香が言った。



「へぇ……。でも私がいなくなってから飴あげなくなったってのは流石に偶然でしょ」


 どうでもよさそうなプチ情報に私は苦笑いで返す。


 雑貨屋で時間を潰しているうちにそれなりに時間が経ったらしい。


 友人二人に挟まれた浪岡君が「そろそろ行きましょうか」と言いに来た。



 浪岡君、両手に花状態だけど嬉しそうじゃないね。


 というか、むしろ怒ってる……?



「えっと、浪岡君。……何か怒ってる?」


 嫌なことでもあったんだろうかと聞いてみると、逆にそれが引き金になったみたいで笑顔で毒を吐き出した。



「え? 逆に怒っていないとでも? 護衛についてきたのに対象を守るどころか両腕を使えない状態にされていて……僕はちやほやされるために来たわけじゃないんですけどねぇ」


 ははは、と笑う浪岡君が怖い。



 流石に自分たちが怒らせていると分かった二人の友達は「ご、ごめんね~」と言いながら浪岡君から離れる。


 両腕が自由になった浪岡君はこれ見よがしに肩を回し“肩が凝った”アピールをし、ニッコリと笑って言った。



「じゃ、行きましょうか」

「う、うん」


 その笑顔に逆らう人は誰もいなかった。



 そうしてカラオケに行くと丁度愛良達と会う。


 同じ十四時に予約してたから、もしかしたら会うかもねって話してたけれどその通りになったみたいだ。



「あ、お姉ちゃん」


 そう言って手を振ってきた愛良のもう片方の手は零士と繋がれている。



 うーん……これはもはや仕様になってる気がするな。


 一々突っかかったり、零士の方向音痴を指摘したりするのも面倒になってきた。



 まあそれでもなんかイラッとはするけどね。



 そんな愛良達とは部屋が離れてしまっていた。


 守ってくれている人達にとっては近い方が良かっただろうけれど、お店の都合だし仕方ないよね。



 部屋に案内されたらまずはドリンクバーで乾杯。


 そして有香達が用意してくれていた餞別をもらったりして、カラオケ大会の始まりだ。



 得点を競ったり、あえて知らない曲を歌ってみたり。


 たくさん笑って、久しぶりに心がスッキリしたように感じる。



 有香達と遊べて良かった。



 ――そう思えたのは、カラオケの延長をし始めるまでのことだった。

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