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妹が吸血鬼の花嫁になりました。  作者: 緋村 燐
1.妹が吸血鬼の花嫁!?
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閑話 あるV生の求心

 夕日も落ち闇が近付いて来ている空を俺は教室から眺めていた。


 何をするにも億劫で、ただ決められた通りの授業を受ける学園生活。


 楽しいことなんて一つもない。



 いっそすべてがメチャクチャになってしまえばいい。


 夕日に似た色の炎で燃やし尽くして、闇に染まってしまえばいい。


 そんな昏い感情しか湧いてこないのに、それを実行する気力もない。



 本当に、怠惰という言葉が合いそうだなと自嘲した。



「……(きし)、お前何してるんだ?」


 俺以外誰もいなかった教室に、おせっかいな同級生が廊下の方から声を掛けてくる。


 怠惰に過ごすだけの俺を気にかけるとか……わざわざご苦労な事だ。



鬼塚(おにづか)か……ただ外見てただけだぜぇ?」


 少し間延びしたような語尾で言葉を返す。

 前は普通に話していた気もするが、いつからか口調にも怠惰が現れてしまうようになった。


 ま、問題ねぇけどな。



「それとも何か?」


 俺はニヤリと馬鹿にするような笑みを向けて続ける。


「俺が違反行為でもするんじゃねぇかと見張りにきたのかぁ?」


 鬼塚はH生、俺はV生。

 ハンターは吸血鬼を取り締まる立場だからな。



「……そう言うってことは、何か思い当たる事があるってことか?」


 途端に真面目な顔になる鬼塚。


 今日もただのおせっかいだと思ったが、どうやらそれだけじゃないらしい。


「さあ? どうだろうな?」


 律儀に答えてやる義理もない。

 俺は曖昧な返答をした。


 すると鬼塚は探るような視線を俺に向けながら静かに語り出す。


「……最近、数名のH生が吸血されて気を失ってる状態で発見されてる。催眠も掛けられたみたいで、誰にされたのか、同意の上だったのかもわかってない」

「……」


「その中には俺の幼馴染もいるんだ……岸、お前心当たりはないか?」


「……さぁな……知らねぇよ」


 合わせるように静かに返してから、皮肉気に笑った。


「でもよぉ、今日は何だか胸がざわつくんだよなぁ……。こんな日は直接吸血もしたくなるかも知れねぇなぁ?」


 煽るように、挑発するように告げる。


 これで勝手に判断して怒り出してしまえばいいと思った。



 胸がざわつくのは本当で、いくら怠惰な俺でも今日は暴れたい気分だったから。


 なのに、鬼塚は予想に反して納得の表情を浮かべた。



「ああ、そういえば今日は吸血鬼の“花嫁”が到着したらしいな。そのせいでV生がみんなソワソワしてるみたいだ」


 お前もか、と口にした鬼塚は警戒を解きいつものおせっかい野郎に戻る。


 そのことにつまらないと感じながらも、俺は“花嫁”という言葉に納得した。



 そういえば少し前にそれらしき気配を感じたな、と。


 それでこんなに胸がざわついてるのか……。



 俺はまた外に目を向ける。


 少し前に感じた特別な気配。

 確かにあの気配を感じてから特にざわつき始めた気がする。



「何でも今回は特殊らしくて、“花嫁”が二人いるらしいぞ?」


 ただのおせっかい野郎にもう用はないってのに、鬼塚はそのまま話を続けた。


「まあ、片方は本物にはちょっと劣ってておまけみたいなものだって聞いたけどな」


「……」


 相手をする気のない俺は相槌も打たずにただ外を見る。


 薄闇に覆われた景色を眺めながら確かに気配は二つ感じたことを思い出した。



 二つの気配。二人の“花嫁”。

 確かに片方はほんの少しだけ血の気配が弱かった。


「……」


 でも、なんでだろうなぁ……?


 その弱い方の気配が、特に気になる。


 本物の“花嫁”じゃなくて、劣っている方の“花嫁”に気を引かれる。



 ……胸がざわつく。


 求めることを諦めたはずの俺が、また何かを求めようとしているのか……。


 バカバカしい。


 そう思うのに、引かれる心だけはどうしようもなくて……。



 ざわざわと、胸の奥から全身に侵食していってるかのようだった。



 「……ッチ」


 この求心をどうするべきか。

 答えを出せない俺は、ただ睨むように闇が降りてくる外の景色を見ていた。

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