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妹が吸血鬼の花嫁になりました。  作者: 緋村 燐
1.妹が吸血鬼の花嫁!?
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護衛のイケメン〜三日目〜④

 あれ?

 そう言えば家の方にいる護衛って誰なんだろう?



 家まであと少しというところでふと思った。


 俊君の話だと零士、浪岡君、石井君、そして田神先生。私が知ってる護衛の人や先生みんなが愛良の方へと向かっているはずだ。


 それならまったく知らない人が来るという事になる。



 ちゃんと護衛の人だって分かるのかな?

 もし護衛だって成りすましてる人だったら困るんだけど……。



 今更ながら不安になってきた。



「香月、お前ん家ってどこ? この辺だってのは知ってるけど……」


 周囲を見回しながら、どこまで送れば良いのかと聞いてくる忍野君。


「あ、ここの角を曲がって三軒目の家なんだけど……」


 と、指差しながら家の場所を教えた私は途中で言葉を止めた。

 というか、続けられなかった。



 角を曲がって見えたのは、家の前に停まっている見知らぬ車。

 そしてその側には城山学園の制服に身を包んだ小柄な男の姿。



 もしかして彼が俊君が手配したっていう護衛?

 ……何か、小さい気がするんだけど。



 そんな事を思いながら近付いて行くと、彼の方も私に気付いた。


「あ、もしかしてあんたが香月 聖良?」

「そう、だけど……」


 年下にしか見えない相手にタメ口をきかれて戸惑う。



 別に年下だからって敬語を使え! とか思っている訳じゃ無いけれど、周りにはあまりタメ口をきくような年下がいないので何だか不思議な気分だった。


 彼は近くで見ると思っていたより小さくはなかった。


 とは言え、私よりは小さい。愛良と同じくらいだろうか。



 どう見ても小学生。頑張っても中学生くらいにしか見えない身長と、幼さの残る顔立ち。


 その幼さの所為か、中性的な可愛らしい容姿をしている。



 零士の女装しても似合いそうな美しさや、浪岡君の可愛らしさなどとも違う。

 何とも表現し難い美形さんだ。



 全く、城山学園って美形ばっかり集めた学園なんじゃないでしょうね?



 そんな風に思ってしまうくらい美男子ばかりが出てくる。驚きだ。



 でもそんな美しさよりも驚きなのは、少年としか言えない様な目の前の相手が零士と同じ制服を着ているという事だ。


 零士と同じ制服。つまり高等部の制服。


 せいぜい中学生だろうという容姿なのに、少なくとも高一にはなってないるという事だ。



 ハッキリ言わせてもらうと、ショックだ。



 なのに、可愛いとしか思えない目の前の男子は更にショックな事を口にした。


「初めまして、俺は津島(つしま) 悠斗(ゆうと)。城山学園高等部の三年だ」


「……え?」


 思わず聞き返してしまう。



 最後、何て言った?

 さんねん? 三年?

 ……いや、きっと聞き間違いだよね?

 こんなに可愛らしい男子が先輩とは思えないし。



「三年生。聖良ちゃんの一つ年上」


 ニッコリ笑顔でもう一度言われ、聞き間違いではないことを知る。


 ちゃん付けで呼ばれることに違和感を覚えるし、年上であることがなかなか受け入れられない。


 困惑する。でも何か返事をしないと……。


「え、えっと……津島、先輩?」


 違和感はあるけれど、そう呼ぶべきなんだろうと思って『先輩』を付けた。



「うん、そうそう」


 ニコニコと受け答えしてくれる津島先輩。

 内心先輩とは到底思えないなんて言えない。きっと絶対怒らせる。



 そう思ってそれ以上は口をつぐんでいたのに、津島先輩はニコニコ笑顔のまま私の内心を読み取った。


「うーん。やっぱり俺、年下に見えるか?」


 ギクッ


 言い当てられて動揺したけれど、表情には出していないはずだ。



「そ、そんな事は――」


 ない、と言い掛けたけれど笑顔に遮られた。


「ああ、良いんだよ。慣れてるし、気にしてないから」



 気にしてないなんて、そんなことは無いだろう。

 ……と思うのに、その表情は変わらぬ笑顔。



 ……あれ? 本当に気にしてない?



 判断に困る。


「はあ……」


 曖昧に返事をすると、気まずそうな声が掛かる。



「あのさ……俺、もう行っていいか?」


 視線を私と津島先輩の交互にやって伺ってくる忍野君。

 そう言えばいたんだった。



 いや! 決して忘れてた訳じゃないよ⁉

 ただ津島先輩のショックでちょっと忘れかけてただけで!



 なんて心の中で言い訳をしているうちに、津島先輩が先に返事をしていた。


「ああ、俊の代わりに彼女連れて来てくれたんだよな。サンキュー、手間取らせて悪かったな」


 そう言って片手をヒラヒラと振った。


 一息で一気に告げた言葉に追い払おうとしている感じもしたけれど、その表情は天使張りににこやかで判断し辛い。



「いえいえ、じゃあ俺はこれで。昼メシも買って食わなきゃ無いんで」


 そう言えば家で昼食を食べてから歯医者に行くと言っていた。

 買って食べるという事は家に帰る時間までは無いって事だろう。


「あ、忍野君!」


 あまり引き止めるのは悪いけれど、お礼は言わないと。



「ん? 何?」

「送ってくれてありがとう、時間取らせてごめんね」


 軽く振り返った忍野君にお礼と謝罪を言うと、彼は「いいよ、じゃあなー」と片腕を上げて去って行った。



 去って行く忍野君を見送っているとスマホの着信音が聞こえてきた。

 バイブの振動も伝わってくる。私だ。


 鞄の中から取り出して画面を見ると、そこには愛良の文字。


 私は急いで操作しその電話に出た。



「もしもし愛良⁉ 大丈夫なの?」

 電話がつながると同時に安否確認の言葉を発する。

 でもそれに返って来たのは深いため息だった。


『はぁー……。大丈夫? はこっちのセリフだよ!』

 怒りを滲ませた声音に思わずビクリと震える。



 あれ?

 愛良が怒る様な事、私何かしたっけ?



「え? 私何かした?」

 火に油を注ぐ質問だと分かってはいたけれど、分からないことは聞かなきゃ分からない。


 案の定、愛良は『何かした? じゃないでしょお姉ちゃん!』と怒りの声を上げていた。



 ごめん、でも分からないんだもん。



『お姉ちゃんの護衛していた俊先輩がこっちに来るんだもん! お姉ちゃんが無事かどうか心配するのは当然でしょう⁉』


 怒鳴られながらもそのことか、と納得した。



 忍野君に言われたから自分が迂闊なことをしたって自覚はある。

 だからそのこと自体には謝った。


「うん、ごめん愛良。……でもさ」


 でも、やっぱり私より愛良の方が危険なんだから護衛は多くいた方がいいと思う。


 そのことを説明すると更に怒られた。



 うん、ごめん。でも後悔はしてない。



「それよりどうなの? 電話して来るってことは、もう大丈夫なの?」


 小姑のようにクドクド説教を始めた愛良の言葉を遮り、私は一番気になっていることを聞いた。



『お姉ちゃんはもっと自分を大事に――って、もー人の話はちゃんと聞いてよね』


 そう文句を言っていたけれど、質問には答えてくれる愛良。



『うん、大丈夫だよ。なんか、他にも色んな人が来てあたしを狙ってるとか言う人たちを捕まえてくれたから』


 色んな人という言い方から察するに、私が思っていた以上に愛良を助けに向かった人数は多かったのかもしれない。


 何にせよもう大丈夫だと言うなら一安心だ。



「そっか、良かった」


 ホッと息を吐くと、いつの間にか近くに来ていた津島先輩に軽く肩を叩かれた。


 様子を伺って会話がひと段落するのを待っていたんだろう。

 小声で「ちょっと代わって」と伝えてきた。


 ついさっき会ったばかりの津島先輩に貸すのはちょっとためらいがあったけれど、別に盗られるわけでもないしと素直に貸した。


「あ、愛良。ちょっと護衛の人に代わるね?」

『え? 護衛って?』


 戸惑う愛良の声が僅かに聞こえてきたけれど、私はさっさとスマホを津島先輩に渡してしまう。



 まあ、その辺りの説明は津島先輩に任せよう。



「あ、初めまして愛良ちゃん。俺は津島悠斗」


 自己紹介から始まり、護衛としてここに来たことを説明している。

 それから田神先生に代わって貰っていた。



「あ、斎。うん、こっちは合流出来たぜ。ああ、じゃあ予定通り……」


 何を話しているのか分からないけれど、することが無くて何となく津島先輩の言葉を聞いていた。



 そう言えば、何で田神先生の事名前で呼び捨てにしてるんだろう?

 浪岡君は先生って言ってたけど、零士は呼び捨ててたよね?


 考えられるとすれば……身内とか?



 なんて考えているうちに津島先輩の話は終わった様だった。



「はい、これサンキュー。愛良ちゃん達、今こっちに向かってるってさ」


 電話はもう切ってしまった様で、画面が黒い状態のスマホを渡された。



 勝手に切らないで欲しいと思いながら受け取る。


 でも相手の方が切ったのかもしれないし、取り敢えず愛良の無事は確認出来たからいいか、と思い直す。



 それに最初に思っていた、津島先輩が護衛に成りすましているかもしれないっていう不安も、田神先生と話していた様子を見れば大丈夫そうだ。


 さて、それなら家の中に入ろうかな。


 昨日とは違って電話で安否確認が出来たし不安は無い。


 むしろ私に説教するくらい元気だったしね。



 スマホをしまって家に入ろうかと足を進めたところ……。


「じゃあ聖良ちゃん、荷物持って来てくれよ?」


 と声をかけられた。



「はい?」


 荷物?

 何の事?



 首を傾げると津島先輩は追加説明をしてくれる。


「引越しの荷物。愛良ちゃんが来たらすぐに学園に向かえる様にさ」


 でもその説明にも首を傾げた。



 愛良が来たらすぐ学園に?

 でも引越しは明日じゃなかったっけ?



「あ、それとも引越し明日の予定だったからまだ準備出来てない?」


 続いた言葉で、引越しが明日だったって事が私の勘違いではないことは明らかだ。


 何で突然今日引越しという事になったんだろう?



「いえ、大体のものはバッグにまとめてありますけど……。どうして急に今日引越しに? 明日の予定ですよね?」


 確認の意も込めて聞き返した。



「うん、その予定だったんだけどさ。こっちも迎える準備は出来たし、出来るだけ早いうちに引越した方が狙われる可能性も低くなるからさ」

「……」



 何だかもっともらしい事を言っているけど、本当だろうか?


 狙われる可能性が低くなるってのは本当だろうけれど、他にも理由があるんじゃ……。


 何か隠してる様な気がするんだよね……。



 じとーっと見つめてみる。


「ん? どうした?」

 ニコニコ笑顔が返される。


 まだまだじとーっと見つめてみる。


「ん?」

 天使の笑顔が返される。


 更にじとーっと見つめてみたけれど……。


「ん?」

 何だかスッゴイ笑顔で押し通された。



「イエ、何でもないです……」


 結局根負けしたのは私の方。



 この様子だとちゃんと聞いても答えてくれなそうだな。

 もしくは、俊君が言った様に後で田神先生から話があるからと言われるか。


 何にせよ、色んな疑問は後で纏めて聞いた方が良いかもしれない。



 諦めた私は「荷物取ってきます」と言い残して家に向かった。




 そのとき、丁度玄関のドアが開いて見知らぬ老紳士が出てくる。


「っ……」


 突然間近で対面する事になって私は固まってしまった。


「おっと、失礼」


 真っ白では無いけれど、白いものの方が多い髪は前髪から後ろに撫でつけられている。

 眼鏡の奥の目は優しげで、鼻の下に髪と同じ色合いの口髭がある。


 スーツ姿が自然に似合っていて、初対面でも好感が持てる様な人だった。



 ドアを開けたら突然私がいて、相手も驚いたんだろう。

 でもすぐに柔らかく微笑みかけてくれた。


「貴女が聖良さんですね。失礼しました。私は菅野(かんの)寛文(ひろふみ)と申します。赤井家の運転手をしております」


 ドアを閉めて自己紹介をした菅野さんは丁寧にお辞儀をする。

 まさしく紳士だ。


 私も慌ててお辞儀を返す。


「あ、香月聖良です。ご丁寧にどうも」



 お辞儀をしながらふと思う。



 あれ?

 赤井家の運転手?

 赤井って、もしかしなくても零士や俊君の家の?


 って言うか、どうしてそんな人が家の中から出て来るの?



 最後の疑問は、菅野さんに掛けられた津島先輩の言葉で判明した。


「あ、菅野さん。母親への説明終わった?」

「はい、万事滞りなく」



 お母さんへの説明?

 って、ああ。

 急に今日引越しになった理由の説明かな?


 二人のやり取りでそう察した。

 多分間違ってはないだろう。



「では私は車の方でお待ちしております」


 軽く会釈をしながら私の横を通り過ぎた菅野さん。


 何だろう、そんなちょっとした仕草に凄く惹きつけられると言うか。

 洗練された様な動きについつい目が行ってしまう。



 本当、素敵な老紳士だ。



 少し見惚れてしまってからハッとする。

 早く荷物持ってこなくちゃ。


 そうしてガチャリとドアを開け中に入ると、まだ玄関に居たらしいお母さんに「ただいま」と声を掛ける。


「あ、お帰り聖良。何だか大変なことになってるわね?」


「うん。でもさっき愛良から電話もあったし、とりあえず大丈夫そう」


 少し心配顔のお母さんにさっきの電話のことを伝えると、ホッと安心した表情になった。



「はじめは護衛とか大げさなんじゃないかと思ったけれど、いてくれて助かったわ」


 菅野さんに詳しい話を聞いたんだろうか。


 そう言ったお母さんは「早めの引っ越しも納得ね」と頷いている。



「バタバタして忙しいだろうけど、あなたも早く荷物の準備しちゃいなさいね」


「うん、分かってる」


 そうして私は二階に行って荷物の最終確認を始めた。



「はぁ……。えっと、大体は詰め込んだから後は洗顔とか充電器とかかな?」


 呟きながら次々と足りない物を詰め込んでいく。



「愛良のも準備しておいた方が良いかな?」


 充電器とか、確実に必要な物だけでも入れておいてあげれば少しは楽だろう。


 そう思って愛良の荷物にも色々詰め始めると、丁度階段を上ってくる足音が聞こえた。



 愛良の部屋で荷物を準備していた私はドアを開けて顔を出す。

 すると丁度上って来ていた愛良と顔が合った。



「あれ? お姉ちゃん何であたしの部屋に?」


「お帰り。愛良の荷物も纏めておいた方が良いかなと思って」


「ただいま。そっか、ありがとう」



 そうして部屋に入って来た愛良はベッドにカバンを放り投げ、そのまま腰を下ろした。


「ふぅ……」


 ため息をつく愛良。

 疲れてるみたいだ。


 まあそうだよね。護ってもらったとはいえ変な連中に追いかけ回されたみたいだし。



「充電器と、洗顔、化粧水とかは入れておいたよ。いつも使ってるので良いんだよね?」


「うん、ありがとう」


 お礼を言う愛良は気の抜けた様子だ。


 疲れてるってだけじゃなく、何か考え込んでいる様にも見える。



「他にも入れるものある?」

「うん……」


 ほぼ生返事。と言うか私の言葉を聞いていない。


 本当に何か考え込んでるな。




「愛良、どうしたの? 何かあった?」


 愛良の正面に膝をついて聞く。


 愛良は目を合わせてその瞳に私の姿を映すと、困ったように小さく微笑んだ。


「うん……何て言えば良いか……」


 考えていることを隠すつもりはない様だけれど、それを上手く言葉に出来ないみたいだった。



「今日襲われた事と関係ある事だよね?」


 それ以外には考えられないけれど、話を促す意味でもそう聞いてみる。



「うん……」


 でも頷いただけで、愛良はまた黙り込んでしまう。


 言葉を選んでいるんだとは思うけれど、今は人を待たせてる状態だ。

 あまり長くは待っていられない。



 言葉を選びやすい様にもっと質問した方が良いかなと思って口を開きかけると――。


「零士先輩達……ううん、あたし達を狙ってるっていう人達も、人間じゃないかも知れない」


 なんて言い出した。



「え? それって……」


 私は驚いて思わず聞き返したけれど、別に答えを求めていた訳じゃない。

 だって、少なくとも零士達が人間じゃないかも知れないっていうのは、昨日話した内容そのままだから。



 私は一度深呼吸してから、確認の意を込めてちゃんと聞き返した。


「……それはつまり、愛良を狙ってる連中とのやり取りを見て、どっちも人間じゃないって思える様なことがあったって事だよね?」


 真っ直ぐ視線を合わせて言うと、「うん」とはっきり答えが返される。



「田神先生は引越しが済んだら教えてくれるとしか言わないし……」


 それで色々考え込んでしまったという訳か。



 確かに俊君も色んな事を隠してて、後で田神先生から話があるとしか言わなかった。



「……何にせよ、これから城山学園に向かって引越しが終われば全部教えてくれるって事だよね」


 自分の頭の中を整理する様に呟いてから私は立ち上がる。



「愛良、だったらサッサと準備終わらせて行こう。そして、隠してること全部吐かせてやろうじゃない」


 ニヤリと笑って言うと、愛良も「そうだね」と笑って同意してくれた。




 本当に、隠してる事ぜーんぶ暴いてやるんだから!



 私はそう意気込みながら、荷物の準備を終わらせた。

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