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解せぬ疑問は胸の内――セントウジュンビ

『なーっとくいかねー……』

「……」

 コクピット内に、気怠げなスリングの声が響く。

 スヴェンはそれを無視したまま前を見る。前方には一面の青空が広がっていた。

『ああクソッ! マジで納得いかねぇぇぇぇぇぇぇ!』

「うるさい」

 スリングの絶叫が鼓膜を震わせる。思わず頭を抑えながら、スヴェンはスリングを諫めたが、しかし彼にとっては逆効果だったらしく、通信はまだも続いた。

『スヴェン、テメェはなにか思うところはねーのかよ! あぁ!?』

「思うところってなんだよ」

あの女(ロイズ)の、俺たちに対する態度だよ! どう考えてもおかしいだろアレ!?』

「アレってなんだよ。……お前、もうちょっとわかりやすい言葉使ってくれ」

『おかしいと思わねーのか!? 俺らが情報開示を再三要求してんのに「待て」っつって、最終的に見たい資料の中身を伝えたら、「それには応じられない」だぜ? それどころか休暇が終わってもいねぇのに、新しい任務だ? はっ、馬鹿にすんのも大概にしろって話だ』

 彼の言葉からも分かるとおり、彼ら二人は新たな任務を与えられて、目的地に向けて行軍中である。このところ小競り合いが続いている戦場にPSを投入し、一気に制圧してしまおうという意図のようだ。二人以外にも、数機のSUが一定の間隔を保って空中を移動していた。直通回線を使用しての会話であるため、周囲には聞こえていないはずだ。……ロイズあたりなら、どうにかしてこの回線に割り込んでくる、なんて芸当も簡単にやってのけそうではあったが。

『で、だ。お前はどう思う?』

 話が横道に逸れたのを自覚したのか、スリングが問いかけてきた。

「……確かに、おかしいところはある」

『だろ?』

 仮に要求した情報が極秘のもの(トップシークレット)であったとしても、そう言えば済むはずだ。ロイズがあそこまで頑なに資料を渡さない、しかも理由さえ明言しないというのは、今までの彼女らしくない行動だった。

「けど、まだなんとも言えない」

『……』

 スピーカーの向こうでため息が漏れた。

「なんにせよ、今は行軍中だ」

『あぁ、わかった、わかったよ』

 畜生、と小さく毒づくのが聞こえる。

『でもな、俺は諦めねぇぞ』

 囁くように、彼は独りごちた。返事を待っている様子もなく、すぐに通信が途絶する。

 らしくないな、と、それを聞いたスヴェンは思う。

 いくらランチェスの身の上話を聞いたからといって、会って数日の、言ってしまえば他人であるスリングがそこまで熱くなる理由が分からなかった。

 どうにもすっきりしない感覚を胸に抱えたまま、スヴェンは機体のオートパイロットを切り、マニュアル操作に切り替えた。こうしていた方が、余計なことを考えずに済む。

「ロイズもスリングも、なにがあったんだ……?」

 それでも頭の中に、さまざまな疑問が浮かんでは消えてゆく。当然ながら、答えは出なかった。

 ――目的地となる戦場は、まだ遠い。



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