表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/17

幕間――ショウキュウシ

「納得いかねぇ」

 憮然とした様子でそう呟いたのはスリングだった。

「何が」

「全部」

 周りが喧噪に包まれているにも関わらず、しかしスリングはそれに負けない声量で答えた。

「納得いかねぇんだよ」

「だから何がだって」

「だから全部だって」

「オレらがランチェスの相手を任せられたのは分かる。けどよ、それに関連する情報を調べる許可をもらおうとしたら、あの女上官(ロイズ)の答えは『後にしてくれ』だぞ?」

 いかにも不満たっぷりだとでも言いたげな表情で、彼はフォークでボイルされたニンジンを突き刺した。

「あの人にも、都合はあるんだと思いますよ」

 と、スリングをいさめるように言ったのはランチェスだった。彼はコーヒーが注がれたカップを傾けながら周囲に視線を泳がせている。初めて来る場所だから間取りを確認しているのか、少しでも戦場に出張った経験があると、こういった癖が付いてしまうことも珍しくない。

「にしたってよ、昨日だけならともかく、今日も無理たぁどういうこった?」

 今は昼時、ここは食堂。

 訓練を終えた兵士やPSの整備を終えた工兵が一様に席へ着き、食事をとっていた。

 休暇中であっても空腹はやってくる。スヴェン、スリング、ランチェスの三人もその例に漏れず、昼食をとっていた。

「またあとで、もう一度頼みに行ってみるか」

 朴訥とした調子でそう提案したのはスヴェンだ。それに対してスリングは露骨に嫌そうな顔をする。

「はぁ? どうせ無理だろ、また断られるに決まってる」

「そうとは限らないんじゃないか? 可能性は無いこともない」

「いいや無理だね。アイツは俺らに会おうともしねぇよ」

「じゃあ、どうするんだよ」

 スヴェンの問いにスリングは「決まってんだろ」と吐き捨てるように答えた。

「データベースに勝手にアクセスすんだよ」


「おい」

「なんだよ」

「お前、馬鹿だろ」

「じゃあその馬鹿についてきてるお前も馬鹿だな」

「それなら、ついてかない」

「スイマセン来て下さい」

 軽口を叩きながらも、彼らの顔はあくまで真剣だ。

 時折後ろを確認しつつ、スリングは潜まった声で言う。

「おいお前ら、抜かるなよ」

「抜かるも何も、お前が何しようとしてんのかがいまいち分からないんだけど」

「だからだな、今から基地のホストコンピューターにアクセスしようって話だろ?」

「いや、『だろ?』って言われてもな……」

 後頭部に手を当てて、スリングに対し呆れたような表情で言うスヴェン。

「あのう、スリングさん」

 と、そこで最後に立っていたランチェスが尋ねた。

「あん? どうしたよ?」

「アクセスするというのは良いんですけど、どうやってするんですか?」

「どうやってって……普通に」

「普通、と言うと……?」

「諜報部かどっかに行って頼んでみようかと」

「あの、多分それは無理じゃないかと思うんですけど」

「……………………え?」

「だから僕達は、許可をもらおうとしてたんじゃないんですか?」

「……………………あー……」

 二人のやりとりを眺めながら、スヴェンはスリングに向けて冷たく言い放つ。

「やっぱお前、馬鹿だろ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ