表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

始まりの街−2

「あ、あの……」


 はっ、いけないけない。トリップしていたようだ。


「私の手錠も外すことは可能でしょうか……」


 さっきの女の子だ。


 見た目は人間、中学生? くらいだろうか、黒髪で薄汚れた服を着ている。


 まぁ助けるか。


「いいよ、助けてあげる」


 パキン。


「わっ! あ! ……ありがとうございます……!」


 一瞬大きな声を出したがすぐに静かな声になる。


「いや、もう大きな声を出していいよ、聞こえないようにしたから」


「えっ? えっ?」


「おーいみんなー! みんなも助けるよ!」


 ざわつき始める牢屋。


「大丈夫、見張りは来ないよ」


 そういうと、何人かの子供が僕に手錠の解除を求めてきた。


「何、みんな万引きでもした?」


 あれ、みんなの反応的に違うっぽい。


「僕たち、奴隷になったんです」


 奴隷!


 なるほど、ここは奴隷小屋だったか。別に犯罪を犯した子供達を捕まえるためじゃないのか。


 ってことはこの子ら、今売られるの待ちってことかよ! あれ、これって僕も売られる感じ?


「そうだ、俺たちは望んで奴隷になったんだ」


 その声は奴隷の中でも整った服を着ていた少年。


「お、俺たちを売れば、家族が助かる……。助けてもらうなんて、できない!」


 彼の周りには3人くらい同じ目をする子がいた。


「え、でも僕誘拐されてここにきたよ?」


「ほ、ほら! 言ったでしょ、言ったでしょ!」


 僕に続いてさっき手錠を外された子供が騒ぐ。


「そ、そんな……それって、違法じゃないか……」


「だーかーら! 違法なんだって、ここの奴隷商売人!」


 その子と少年がギャアギャア言い合う。うーむ、子供って感じでいいね。


 話の漢字から察するに、実はこの国では奴隷制度は違法じゃないのかな? だけどそれは奴隷側にその気がないと奴隷にはできない。誘拐してきた子供を奴隷にするのは会おうとなのだろう。


「他に誘拐されてきた子はいるの?」


 僕がそういう都心としてしまった。


「僕と彼だけか」


「なーお前、なんでそんなに偉そうなんだよー」


「ちょ、ちょっと」


 おや、さっき僕に賛同した子が楯突いてきたな。


「君、名前は?」


「ノア! お前は?」


 ノア、というのか。ふーむ覚えておこう。


「ノアくん。僕の名前はロゼ……ロゼだ。実はねぇ、こんな見た目だけど、僕はちょーちょーちょー強いんだ。だからこの手錠も壊せたのさ」


「ふーん」


 おお、自分から聞いてきたのにすぐに興味を失うこの子供っぷり! どこの世界でも子供は同じようなものか。


「んで、君は?」


 僕は小綺麗な服を着ている少年にも名前を聞く。


「……俺は、いや、私はオリュマス公の第三子、アルヒューマ=オリュマスだ」


 ざわつく牢屋。


 ……なるほど、貴族か。


 僕は他の子の名前も聞いた。




「あの、ロゼさん」


 この子は最初に助けた女の子、名前はロウエ。


「ロゼさんは、これからどうするんですか」


「んー、やっぱ奴隷にはなりたくないし、逃げるかな」


 僕がそういうとまたざわつく牢屋。ざわつきすぎだよ君達。


「あ、あの……私……やっぱり怖いんです」


 ロウエは今にも泣きそうだ。


「私もアルヒューマ様みたいに、自分から奴隷になった……んですけど、っでもやっぱり怖いんです!」


 そりゃそうだ。こんな子供が、自分からとか……。絶対親から強制されてるよねぇ。


 ああ! 助けたくなってきたかも!


「私も外に連れてってください!」


「お、俺も…」


「私も…」


 ゾロゾロとロウエに続いて声を上げる子供たち。


「!」


 誰か来る。


「みんな静かに。誰か来る。見た目だけの手錠をもう一度かける」


 僕はそう言って全員の腕にダンボール生の手錠を一瞬でかける。


「―――」


 なんかしゃべってるな、聞いてみよう。


「やっぱヤベェよ誘拐は……」


「ウルセェ、こいつもどうせ親がいねぇ、一人で歩いていただろうが」


「それ絶対とは言いきれねぇだろ、ああくそ、でもノルマがなぁ」


「そうだノルマだ、クソ領主め、何が子供十人集めてこいだよ」


「おいそれドアの先で言うなよ」


「は、あのガキどもがなんかできるっつうのかよ」


「なんか辺境の貴族がいるらしい、一応な」


「あーったよ」


 ガチャリ……


 階段を降りてくる。


 二人、剣を携え、かなり体つきがしっかりしている。一人は両手にはだらりと動かない男児を抱え、一人は腰に鍵をつけている。


 鍵の方が扉に近づき、牢屋を開ける。不用心だな、出てもいいのか?と思ったらギロリと睨まれる。


「おらよ!」


 どざぁ!


「ちょっと」


 思わず声が出てしまった。


 乱暴に男児を投げて牢屋に入れたのだ。


「ああ!? なんだゴラァ!」



 はぁ〜と深いため息。ここでやるしかないか。


「なんだ、と呼ばれたら、そうだなぁ、なんていえばいいか……」


 ぐ、ぐぐぐ、ぐぐぐ……


 徐々に視界が高くなる。


「な、なんだこいつ、体が……!」


「僕は君たちにとっての、不幸、だと思ってくれればいいさ。ああでも、名前を名乗っておこうかなぁ」


「こいつ、子供じゃないのか!?」


 やがてその体は大人の女性となった。


「初めまして。僕の名前はロゼ・ミネランス=ベンチェヘルト。別の世界の神様さ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ