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5 魔族の地へ出発です

 瞬く間に準備は進み、夕陽が沈みかける頃にはアーシャを乗せた馬車が北の山脈へと出発した。

 アーシャの護送に関わる者たちは、皆真っ青な顔で「申し訳ございません、聖女様……!」と謝罪を繰り返している。

 ここで彼らがアーシャを庇ったり逃がしたりしようものなら、セルマンは彼らを許さないだろう。

 そうわかっていたからこそ、アーシャは笑顔で彼らの指示に従った。

 馬車は深い山道を分け入るように進み、やがて道が途切れたところで……アーシャは馬車を降ろされた。


「それでは聖女様、どうかご無事をお祈りしております……」

「えぇ、ここまで送って下さり感謝いたします。皆さまに精霊の加護があらんことを」

 涙ぐみながらもそう口にした者たちに、アーシャは素直に頭を下げる。


 去っていく馬車を眺めながら、アーシャはふぅ、とため息をついた。


「えっと、この後は……」


 渡り人として送り出され、王国へ戻ってきた者は未だかつて誰もいない。

 獣に殺されるか、魔物に殺されるか、魔族に殺されるか……彼女たちのはっきりとした足取りはわからないが、きっと皆悲惨な末路を迎えたのだろう。

 今もアーシャという格好の獲物を仕留めようと、山の獣が草むらの陰から舌なめずりしながらこちらを見ていた。

 だが獣たちがアーシャに飛びかかろうとした途端、意識せずともアーシャの体が動いた。


 《オラッ! アーシャはてめぇらの餌になるほど安い女じゃねぇんだよ!!》

「キャイン!」


 火の精霊フレアが素早く炎を纏う剣に姿を変える。

 フレアに導かれるようにアーシャが軽く剣を振るっただけで、獣たちは情けない声をあげて逃げていった。


 《アーシャ、大丈夫か!?》


「大丈夫です。それに、ちょうど聖典の一節を思い出すことができました!」

 《は? 聖典?》

「はい、『渡り人』として浄化に挑む巫女は、浄化の光で空を照らしながら魔族の国を目指して進んでいくそうなのです! なので、私もその通りにしようかと」


 神殿で何度も読みこんだ聖典の一節を披露すると、精霊たちは呆れたような目を向けてくる。


 《えぇ~? まさか本当にそれに従うの!?》

 《意味不明……》

 《アーシャはあのバカ王子に利用されたんですのよ!? なのに、あいつらのために浄化だなんて……》

「構いませんよ。王国にはお世話になった方もたくさんいらっしゃいますし、私に力が役に立てば何よりです。だから……皆さんとはここでお別れですね」


 彼らはアレグリア王国を守護する精霊だ。

 アーシャはもう聖女ではないし、国を出るアーシャを守る必要などないだろう。

 そう考えて、少し切なくも思いながら別れを告げたのだが……。


 《は? アーシャが行くなら俺たちもついてくに決まってんだろ》

「えっ、でも皆さんは国を守る精霊じゃあ……」

 《いいえ、アーシャ。わたくしたちは国ではなく、アーシャを守るためにここにいるのです》

 《どこへだってついてっちゃうからね!》

 《一蓮托生……》


 彼らは、少しもアーシャと離れるつもりはないようだった。

 その様子に、密かに抱いていた不安がすぅっと消えていく。


(よかった……。皆がいなくなったら、私一人でどうしようかと思ってたけど……)


 幼い頃から一緒だった彼らがいてくれるのなら、魔族の国も恐れることはないだろう。


「ありがとうございます!」


 胸がじんわりと熱くなり、アーシャは嬉しくなって頭を下げた。


「それじゃあ、出発しましょう!」


 呪文を唱え、夜空に浄化の光を打ち上げる。

 虹色の光の柱が天高く立ち上り、アーシャの新たな門出を祝福するようにあたりの瘴気を清めていく。


(よし、頑張ろう!)


 力強く輝く光の柱を眺めながら、アーシャは決意をあらたにするのだった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 魔族って言うのはこの国と国として敵対してるのか?それとも人間と魔族で種族的に対立してるのか?魔族と仲良くしてる人間の国とかないんだろうか? 魔族にとって魔物が家畜ではなく人間同様害に…
[一言] どこまでも前向きなヒロイン。 もうすでに大好きになりました~。 アーシャなら、どこに行ってもきっと幸せになりますね~。
[良い点] 精霊たちが頼もしすぎて、まったく心配いらなそうですね! 土の精霊のアースがどことなく陰キャ感があって好きです笑
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