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令和たぬきつね合戦 紅蓮 -GRadiEnt Note-  作者: 紅世
導入編 いざ合戦!
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序章

前書き


 グラデーション(gradation)とは、図画の中で、位置に対し色が連続的に変化することである。グラディエント (gradient) とも。ただし厳密には、グラデーションには個々の色の集合体という意味があるのに対し、グラディエントには各点に対する変化の度合いという意味がある。


 においとは、空気中を漂ってきて嗅覚を刺激するもの。

 赤などのあざやかな色彩が美しく映えること。視覚で捉えられる美しい色彩のこと。「匂い」。


 フローラルノート(英: Floral note)は、花の香り、花香調の総称である。香調の範囲は広く、柑橘系の香りのシトラスノートと並び、フレグランスの香りの基本となる。女性向けのフレグランスや香粧品には、フローラルノートを基調としたものが多い。


出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』2021/09/10 10:46


 なお、これらの出典、以下に続く物語は全て、不確かなものである。

 我々人間の領分においては……。



序章


 雲海を突き抜けた地より太陽が近い遥か上空。

 標高は計り知れず少なくとも目下に見える風の音が絶えない谷を──それだけの視力があることが条件とはいえ──見渡せるほど高い空の中、沢山の屋敷があった。


 どたどたと並ぶ屋敷の瓦屋根には一か所を除いた全てに旗が付いている。

 その違いは色にあり谷を挟んで片側の旗は全て緑、向かいの屋敷のそれは赤となっていた。


 そして、ここにおいて動くものは一つだった。

 屋敷でもひと際目立つ大屋敷の縁側に一人、如何にも気の強そうな……しかし今はイマイチ元気が足りなさそうな老人が座っていた。

 この様な場所に人がいる時点で不可思議だが、その服装も珍妙であった。

 彼は山伏の格好をしていたのである。


 と言っても、その服装は着崩されており、少なくとも真面目な者には見えなかったが。

 現に今現在、彼はやることもなさそうに片手を単眼鏡の様に構えると退屈そうに谷の下を眺めている。

 すると、目線の先の何者かの動きに気付き、目を細めた。


──はて、なんだろうか。いや覚えはあるはずだが。


 年老いた頭にとって記憶を引き出すのは一苦労だ。しばらく首を更に傾げて唸り続け、やがてその首がフクロウの様に真横に近い角度を取った辺りで思い至る。


──ああ、あれか。何年ぶりだろうな。


 少し厄介なものではあるが結局は泥の一種であり、つまりは畜生どもの問題である。わざわざ儂が動くまでもないし、放っておこう。


 思考がひと段落して再び目を閉じようとしたが、ふと思い出す。


──今日は何か用事があったのではなかったか? だから縁側にいるのでは……。

 いや、何の日だとは断言できないのだが、引っ掛かってはいるのだ。具体的な見当はまだ全く付かないが、全知全能の自分のことだ。行けば自ずと分かるであろう。

 そうだ。閃いたことが、まず偉い。流石が過ぎる。


 自分に酔って満足したのか、老人が口角を上げると、彼の纏う空気が一変した。

 そして老人に変化が起き始める。

 その肌は酒気を帯びたかの様に赤くなり、低くあったはずの鼻は伸び、だんだんとその姿は人間にとっては面妖なもの、あるいは一部のもの好きには見慣れた姿へ変わっていった。


 それはつまり紛れもなく、天狗であった。

 彼は、よし、と気合を入れると準備運動をして最後に肩をぐるぐると回してひと息つくと、目を閉じ背中を曲げて力み始めた。

 そして、


 ポン! ポンポン!


 と、音を立てて丸い結袈裟が生じ、


 バサッ! バサッ!


 服の背中側に空いていた切り込みから身体を包むほどの大きな翼が現れた。

 彼はピクピクと翼の付け根を動かしてから満足げな笑みを湛えると、


「では、行って参ります」


 遠くに見える金色の五本の柱に頭を下げると垂直に飛び降りていった。


 冷たい空気を受けながら、やがて雲を抜けると視界が一気に開けた。

 山、川、人里、神社、ゴミ捨て場、砂漠……。

 天狗はそれを見渡しながら遂に大きなゴミ捨て場の上までやってくると、何やら楽器の音が騒がしく奏でられていることに気が付いた。


 そこには狸が描かれた緑の旗を持つ筋肉マッチョの男たちと妖怪、また、それに対して狐の描かれた赤の旗を掲げる着物の優男たちと時代錯誤な甲冑たちが向かい合っていて──天狗は彼らを視界に捉えるや否や全ての本質を見抜いた。


──こやつらは毛玉らではないか。この時期は奴らの合戦があったはずだが、それが今日であったか。


 天狗は退屈そうにしばらく宙に浮かんで一同の様子を伺っていると、やがて狸たちが何やら騒ぎ出したことが分かる。

 彼はそれに対し「なんだ、知ってる気配ではないか」とスルーして全体を俯瞰し直すと別のことへ興味を惹かれた。

 なんと、この騒ぎに乗じて子狐が狐陣営の後ろから逃げ出し、それを追ってセーラー服の少女が駆け出していき、それとほぼ同時に、見覚えのある子狸三匹が狸陣営から出ていくのが見えたのだ。

 天狗は、これから起きること次第で降りてきた甲斐があったと言わんばかりにニヤリと笑うと、彼らの逃げる時間を稼いでやるかと、ゆっくりと毛玉たちの戦場へ降りて行った。



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