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オフトゥン大好き黒猫令嬢は狼王子のお気に入り。……私は『運命の番』ではありません!(完結)  作者: にのまえ


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二十四

「ミタリア、十月の舞踏会では俺の側を離れるな。人族がもし不用意に近付いたら距離を置け」


「はい、分かりました」


 私も、カーエン王子とは出来ればお会いしたくない。でも、カーエン王子は笑うと糸目になるんだ、キャラ的には好きな見かけだったけど、性格がやばそうだった。


 恐ろしいというか、笑っていても、目が少しも笑っていなかった。でも、ヒロインと知り合い笑顔を取り戻すんだ。



 王子と私を乗せてのんびり進む馬車と、ふわふわオフトゥン――ふわぁっと出そうなあくびを噛み締めた。それを見た王子は笑い、本を取り寝そべった。


「俺はいまから本を読むから、公爵家に着くまで寝てていいぞ」


 眠そうな、私に気遣ってくれたみたい。


「リチャード様、ありがとうございます。では、お言葉に甘えさせていただきますね」


 ヒールを脱ぎ、オフトゥンの上にコロンと寝転び目を瞑った。やはり高級オフトゥンはふかふかで触り心地も良い……


「おやすー、すー」


「ミタリア? もう寝たのか? くくっ、ゆっくり寝ろよ」

 






 ――?


 ――あ、あ?


 蒸し暑い! 寝返りを打ちたいのだけど、何かに阻まられて体を動かせない。


 どうして、こんなに暑いのになぜ動けない? で目覚めた。


 目が覚めたら覚めたでで自分の状態に驚くしかなかった。

 獣化して猫になった私を王子が胸の上に抱えて、読書していたのだ。


 それも、オフトゥンの上で?

 何をどうしたら、こうなったの?



 近い、王子と近過ぎる。



「あ、あの、リチャード様」


「ん? もう、目覚めたのかミタリア。まだ着かないから寝てていいぞ」



 いや、いや、待て待て、この状況の説明をして。



「リチャード様、どうして? 私はリチャード様の上で獣化しているにゃ?」


「それはな、俺がミタリアとオフトゥンで寝ようとしたけど、狭いから、ミタリアのブレスレットを外して猫にしたら、ミタリアが自分で俺の胸の上に乗ってきた」


「私が自分で乗ったにゃ?」

「そう、俺の胸の上でウネウネして、スピーっと眠りだした」


「ウネウネ……そんな行動をしたの、止めて起こしてくださいにゃ!」


「可愛いかったから、起こせなかった」


 王子は読んでいた本をパタンと閉じて。


「さてと、俺も狼になるかな? 一緒にお昼寝して帰ろうな」


 この状態で? 待って、と止める前に王子はカチッとブレスレットを外して狼姿になった。

 乗っていた私はバランスを崩して転がり、もふもふオフトゥンの上に落ちる。


「リチャード様。側近のリルとか従者、近衛騎士に見られたらどうするんですか」

「別に気にしないよ。ミタリアは俺の婚約者だし――俺は王子だ」


「そう、だけど」


「あいつらは俺が小さな頃から支えてくれた者ばかり、言わば俺の大切な友達だ」


「リチャード様の大切な友達」


 そうだと、こくりと頷いた。



 みんなを信頼してるんだ。



 もそもそ動いて、王子が寝そべる隙間に転がった。

 王子はどちらでも大きい、見上げると目が合い細めた。


「あのさ……ミタリア」


「何ですか?」

「今日は一緒に来てくれてありがとうな」


 私の顔を近付けてすりすりした、もしかして王子――照れちゃうから獣人したのかな。


「ふふっ、どういたしましてにゃ、リチャード様」



 仲良くオフトゥンに転がり帰ったのだった。

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