「見てるよ?」
今回短めです。悪戯がバレたお兄ちゃん(自業自得)
義兄の舌から逃げるように首を逸らす僕に、しかし彼はくすりと笑みを溢すとちゅ、と音を鳴らしてキスを落とした。
その音にいつもされているように噛まれるかもしれない、と僕は身を固くする。
ぐるぐると渦巻く思考の中でこんな所で……と今僕達が何処に居るのかを思い出してしまい余計、羞恥に身体が赤く染まった。
気付けば空いている手が縋るように義兄の肩に触れていて、もう片方の手は相変わらず手首を掴まれたままだ。
首を擽る彼の唇を感じながらそろりと手を引くとそれに気付いた義兄は手を這わせ指を絡めて来る。
余計逃げられなくなった状況に眉根が下がりながらも止めて貰おうと縺れる舌を震えさせながら必死に動かす。
「お、兄ちゃん…っお願い、やめて………」
「…名前」
「え」
「名前で、呼んでくれ」
相変わらずハテナマークが盛大に頭の中を行き交うが義兄からの求めに僕は素直に従う。
「…ディル?」
「……んぅ」
疑問符を消し切れなかった僕の声掛けに彼は唸るように喉を鳴らすとそのままがぶり、と首に噛みついて来た。
突然急所を噛まれた痛みと衝撃に更に首を仰反り身を捩る。しかしその動きは急所を差し出す行為に映ったのか、彼の薄く笑う気配がした。
そのままいつもと同じように彼にされるがままとなる。見えない筈の噛み跡をなぞる様に何度も何度も、執拗に触れて来る。
次第に身体の神経を撫でられている様な感覚に身体を操られ、偶に鼻腔を擽る義兄の匂いを知らず肺に取り込もうとする僕の様子に、義兄は動きを止めて緩く微笑んだ。
義兄の動きが止まった事でくたりと身を預けそうになった僕だが、その動きは阻まれ顎に手を掛けられる。
息も絶え絶えになっているその様を見て義兄は熱い息を零した。
「……ノア」
何か物言いたげに此方を一心に見つめるその瞳と視線がかち合う。落ち着いた栗色の中に不思議な輝きを放つ緋色が散っている。
その綺麗な色を見つめたまま僕は何も言えずにただ見つめる事しか出来ない。
そして意を決したように口を開いた彼はーーー
「……くぅ〜?」
という声を聞き動きを止めた。
見ると僕達のすぐ真上には眩く光る3つの輝きが。それは浅緑、碧、琥珀色に輝きながら段々と輪郭を描いていく。
やがてそれぞれの光から現れたカホちゃん達は長椅子へ降り立つと僕達の側へ寄り、義兄の顔を射抜くように真っ直ぐ見つめた。
そんな皆んなに対し、何故か義兄は後ろめたそうにそっと視線を逸らしている。逃げ道を塞ぐかのように右、左、上を取られた義兄は気不味げに僕に触れている手をそっと離す。
罰が悪そうなその様子にジ〜っと見つめるカホちゃん達の眼力が強まった気がした。
え、何なに………?
カホちゃん達、突然どうしたの?それにお兄ちゃんも何かあったのかな……?
何処か気迫を感じるカホちゃん達の様子に僕は疑問を感じながらも今の状況を思い出しハッとなる。
「皆んな、此処に居て大丈夫なの……っ?」
そうだ!さっき調べた時には居なかったみたいだけど、いつイライザさん達がギルドに来るか僕達は知らないのだ。
慌てて魔力探知の範囲を広げイライザさんの居場所を探ろうとすると、目の前の義兄が緩く首を振った。
「いや、ユニコーンの気配もしないしまずギルド近くには居ないだろう」
「そう、なんだ………良かったぁ……!」
カホちゃん達も大丈夫、と口添えをしてくれて安堵に肩の力を抜く。そして安心感に身を任せ目の前の義兄に抱き付くと、彼は何故かびくりと肩を揺らして両手を上に上げた。
……ん?お兄ちゃん何で手なんか上げてるの?
そんな考えが表情に表れていたのだろう。手どころか顔ごと逸らして僕に触れないようにしている義兄はちら、と僕の顔を一瞥したかと思うと何故か酷く疲れたように重い溜息を一つ落とした。
「……帰るぞ」
「え、でも」
「行くぞ」
そう言い、有無を言わせず僕を膝から下ろし帰り支度を始める義兄。
突然の帰宅宣言に呆然となり慌ててカホちゃん達に疑問の矛先を向けると
「くぅ〜……」
と、なんとも言えない声を出して僕の顔を見つめて来るのだったーーー




