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大好きな家族とほのぼの生きています  作者: 青磁
【広がる世界編】
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「合否の結果は。」




ぐずぐずと鼻を啜る音が部屋に響く。僕が落ち着くまでギルド長達は根気良く静かに待ってくれていた。

鼻が詰まって呼吸もままならない為、亜空間から取り出したちり紙で鼻を噛み屑は再び亜空間に収納する。感情のままに思い切り泣いてしまった事を恥入りながらも、なんとか落ち着こうとゆっくりと息を吸うと肺がきしりと痛んだ。


背中を摩ってくれる義兄の胸を借りながら涙の気配が収まるのを待つとゆっくりと顔を上げる。


「お兄ちゃんありがとう……もう大丈夫」


「ん」


僕の言葉に無言でグラスを差し出してくれた義兄にもう一度お礼を言うと受け取ったグラスの中身をこくりと飲み込む。

口腔に広がるフレーバーティーの香りと甘さに段々と心が平静を取り戻し始めた。


はぁ………なんか僕、前世と比べて本当に涙腺が緩んでしまったというか感情の自制が効かなくなってる気がする。

もしかして身体の年齢に精神が引っ張られているのかな………?


自律、自律と心の中で唱えつつ義兄の胸元と自身の居住まいを整えると一呼吸置いて向かいへ頭を下げた。


「…突然取り乱してしまい大変失礼しました。

落ち着くまで待っていて下さり、ありがとうございます」


「いや、気にするな。それよりも年相応な姿を見て逆に安心したぞ。

リコ……ノアと言った方が良いか。

ノアが愛し子だと言っても今は大人に頼って良い時期だ。そんなに丁寧な言葉も使わんでくれ」


「いえ、流石にギルド長達は上長ですし義兄のお師匠でもありますから言葉遣いはお許し下さい。逆に僕の心臓に悪いです」


「礼儀正しいですね……愛し子に選ばれる人というのは真面目な気質を持ち合わせた方なんですかね。

ええと……貴方のことをノアちゃんと呼んでも宜しいでしょうか?」


「はい」


「ではノアちゃん。今回の話は元々彼の資格供与を踏まえた上でノアちゃんにも正規冒険者となる素質があるかを計る事が目的でした。

それが前日の件がありそれどころではなくなってしまいましたが………私達の判断を聞いて貰った上で私からの決定を伝えます。


試験結果・勤務評価・能力値を鑑みて………貴方を正規冒険者に認めます」


ーーニコライさんのその言葉に目を見開いた。


え……本当に………?

僕、お兄ちゃんと一緒に冒険者になれるの?

お兄ちゃんと同じ、冒険者に。これからも一緒に仕事を続けて居られるの…?!


実感と共にじわじわと胸に喜びが満ちてくる。隣の義兄へさっと顔を向けると此方も嬉しそうな顔で僕の事を見返してくれた。

途端、笑顔が溢れ手を叩き合って喜びを伝え合う僕達兄弟に対してニコライさんは冷静な声でですが、と次の言葉を紡いだ。


「ノアちゃんの実力は正規冒険者となるに充分なものですし、私としてもその才能を活かして貰い是非とも依頼達成に貢献して欲しい所なのですが一つ懸念があります。

このまま冒険者となれば私達冒険者ギルドでは歴代史上最年少二位となるのです」


ニコライさんの言葉に隣に座るギルド長も苦い顔をしている。

歴史の長い冒険者ギルドの中で歴代一位でないにしろ二位というのもなかなか取れるものではない事位、早々に予想が付いた。

そしてそれに相応のデメリットが起こる可能性がある事も。


その発言である程度予想の付いた僕達の様子に一つ頷きながらニコライさんは続ける。


「……端的に言ってしまえば月桂樹(ローリエ)級の有力株と目される彼と10歳で正規冒険者となるノアちゃんはこのまま大人達に混ざって仕事を続ければ注目の的となるでしょう。

君達の優秀さは聞いていますから仕事でもすぐに結果を残し周囲の評価も上がるかと思います。


そして注目を浴びると共に人々の噂に上るのは」


「ノアがどんな才能・能力を持っているか、ですね」


言葉の続きを繋いだ義兄に向かいに座る二人は大きく頷く。

因みに一位は予想通り、過去に大規模の魔物討伐・内紛収束の貢献、それらの功績から爵位と統治権を与えられる等数々の偉業を成してみせた愛し子の一人だ。

冒険者になった当時、8歳の一見軟弱にすら見えた少年。

全くの無名から他に見ない早さで出世を果たし、一騎当千の如く戦場を駆け巡ったとされるその人は冒険者の間でも立身出世の鑑として崇敬の念を抱かれている。


冒険者ギルドの前身を作ったのは愛し子、その中で歴史的快挙を遂げたのも愛し子。

ーーならその歴史に追随するような結果を出して見せる子供は?


これを周囲が面白おかしく吹聴するのは目に見えて明らかだ。

そしてその噂に飛び付く人間が誰であるかも。


………うん。駄目ですね。

これは僕の神殿出荷コースが目の前に見えて来ましたよ。

権力と利益大好きな人達にドナドナされて世界の為に能力活かそうね(強制)なんて言われる未来が簡単に想像出来る。


そしてそんな事になったら、いや、そうなる前にカホちゃん達がガチギレして暴れる光景が目に浮かびます………


………うん。駄目だ。絶対に駄目。


いのちだいじに。穏やかで何にもない日常最高。

いや、生きている以上少なからず障害やら困難やらはある物だろうけど強制的に前途多難な人生を歩まされるのは断じて反対です。


そんな事になったら家族と一緒にのんびり過ごすなんて夢のまた夢じゃないですか。

ニールさんやオルガちゃんと商会のあれやこれやを語り合う事も出来なくなる。


スーザンさんにファーザーさん、他にも大勢の町の皆んなに心配と迷惑を掛けてしまう事にもなる。

ーーふる、と首を振る僕の様子にニコライさんはくすりと笑みを零した。



「という事で私からの提案です」



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