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大好きな家族とほのぼの生きています  作者: 青磁
【広がる世界編】
88/108

「怒りと決定。」


今回普段の倍近くの文字数になりました……読みやすさを意識しましたが説明会なので長ったらしいです。すみません(´・ω・)





義父さんが質問したのはこの三点だった。


一つ目、ヴァイスデーゲンは僕が愛し子である事に気付いているのか?

二つ目、気付いているとしたらそれをイライザさんに伝えるつもりであるのか?若しくはもう伝えているのか?

三つ目、魂の契約者以外に聖霊の存在を知られる方法、可能性はあるのか?


正確には星母神様から与えられている方法以外に僕が見つかる可能性があるかと言った方が正しいか。

三つ目に関しては義父さんが前々から調べていた事でもあった。神殿に所属している友人に手紙でそれとなく聞いてくれたのだが、守秘義務があるのか返事を濁されたらしい。


そもそもクラウスさんより前の世代は聖霊の存在を隠したり愛し子である事を伏せたりはしなかったそうで(その所為で紆余曲折あった愛し子も居た)そもそも愛し子誕生の度に神殿に天啓が齎されていたという史実がある為、星母神様から与えられた報せ以外に探す方法を持っているとは考えにくかった。


けれど今回は愛し子誕生の兆しがあるのに天啓が降りたという情報は世間に公表されていない……それどころか捜索に協力してくれというお触れが出ている状況である。


その為星母神様からの導きが無い今、神殿や各国が独自の捜索方法を編み出そうとしているかもしれないのだ。

信仰心の篤い国や神殿はともかく、愛し子を駒と考える人間がこの数年で焦った末に神の怒りに触れる禁忌に手を出さないとも限らない………。


けれど、義父さんのその質問と考えに対して聖霊の皆んなは緩く首を振った。

まず一つ目。ヴァイスデーゲンは僕が愛し子である事に気付いているそうだ。マジか……

ヴァイスデーゲンはストライクゾーンが広いのではなく、単に愛し子だと気付いてたから親しくしてくれたのが分かりました。


なんでも皆んなの説明によると、聖霊とそれに準ずる者は生き物の持つ魂の輝きとそこに内包される精神の色を見て愛し子であるかを認識するらしい。

星母神様が好む魂はもれなく聖霊も好みとの事で出逢った瞬間大好きになるのが普通だそうです。

あれ、処女関係なかったんだ………なんか複雑だ。

まぁ外見より中身を見てくれたって事だよね…!

うん……………?


……つまりは僕の魂を認識した時点でヴァイスデーゲンには絶対に知られていたらしい。

そしてヴァイスデーゲンはイライザさんに僕の事を伝えていないそうだ。これに関しては皆んなも話せない事が多いみたいで、多くは語ってくれなかったがヴァイスデーゲンから僕の存在がバレるという事はないのが分かった。


とまぁ、二つ目までは良かったのです。

問題は最後の三つ目で………正直、質問をした時点で皆んなの機嫌が急降下し始めていて怖かった。

久々にカホちゃん達の背後にブラックホールの気配を感じたよ。


この時ばかりは顔も名前も知らない愛し子捜索隊(暫定)の方達に同情しました。はい。

偶〜にカホちゃん達だけで出掛ける事が度々あったんだけど、実はアレ僕の事を探している捜索隊の一部が作ったり造ったり創ってた探索魔法やら魔具を端から壊して回っていたらしいです………。


僕はカホちゃん達に嘘をつきたくないから日常で感じる喜怒哀楽はお互い伝わるようにしているのだけれど、本当は感情を隠そうと思えば出来ない訳じゃないのです。

けれど普段は穏やか・無邪気の言葉がぴったりなカホちゃん達の事だから、実はお怒りモードだなんて微塵も知らずにのほほんと送り出してたよ。


笑顔で送り出した先には聖霊の怒りを買った人達の悲痛な想いが骸として転がっていたのかと思うと………うわぁ………ご愁傷様です。


カホちゃん達も徹底して姿を隠してるので聖霊の仕業だと知らずに突如、目の前で壊れていく魔法や魔具の数々を目撃した人はさぞや怖い思いをした事だろう。

ポルターガイストもびっくりなホラーだね、うん。


でもまぁ、カホちゃん達の働きのお陰で懲りた人も多いと思うな。少しでも信仰心がある人ならこう考えるでしょう。

神の(代行で聖霊の)怒りに触れた、と。………しかも物理的に。


あれ……なんだか気の毒に思えて来た。



ーーそんな訳で義父さんの質問を踏まえた家族会議が纏まった数日後、慎重に再考されるかと思われたギルド長達の判断と最終決定はギルドに来て欲しいという報せに従い僕と義兄が赴いた事により思いの外直ぐに知ることとなった。


まぁ周囲には話せないとは言え、愛し子という存在を認知しながら放っておくという判断は出来ないだろう。寧ろ約150年振りに現れた愛し子の恩恵に肖りたいと思う方が自然だ。

ある程度の要求は覚悟をして来ているけれど、一番の不安は僕の存在を知られた事により義兄の進退に悪影響を及ぼしてしまう事だった。


僕はギルド長達との話がどう転ぼうとも譲れない条件を提示しようと思っている。

義兄への正当な評価が下されなくなる事も、彼自身の進みたい未来が閉ざされるような事も絶対にしないでくれ、と。


正直それさえ約束してくれるなら僕の事は二の次に考えてるんですよね〜……

だって僕の魔力やら加護やら知識やら(大したものは無いけど)の恩恵に預かりたいと言っても僕は一人しかいない。

何を要求されても一度に出来る事には必ず限りがあるから、もしもの時はのらりくらりと躱そうと思っている。


あ、勿論カホちゃん達が利用されるような真似は断固拒否ですよ!!

そんな話が出て来たら即お断り案件です。



ーーーそんな意気込みを抱きながらギルドへ到着すると既にギルド長がカウンターの前で待っており、挨拶もそこそこに先日通された一室へ義兄と二人案内される。

部屋の中には以前と同じ位置にニコライさんがおり僕達を出迎えた。


さり気無く防音魔法を張ろうとする前にそれに気付いたニコライさんが手を上げ代わりに防音魔法を張ってくれる。


此方に配慮してくれる辺り好意的と受け取って良いかな。

とは言え警戒を解く訳にもいかないので部屋の中に怪しいものが無いか魔力探知とサーモグラフィーの魔法、それに鑑定の加護もガン積みで探りを入れてみる。


ギルド長の事は信頼しているけれど愛し子という存在に対してどう動くかは未知数だ。ニコライさんに関してはより出方が分からない。


まぁここまで警戒しなくても義兄の五感と直感が何かを逃す訳がないし、姿を出せないとは言え聖霊の皆んなもここからそう遠くない場所で見守ってくれている。

ギルド長達も星母神様の愛し子に対して何か事を起こすような浅慮な事はしないだろう。


下手な事をして此方を怒らせたが最後、聖霊の皆んな(最強のセコム)に返り討ちにされるのは目に見えてるだろうし。


何気なくテーブルの上を見遣ると今日は先にお茶とお菓子の用意がされている。今日は他の職員とは極力接さないようにしてくれたらしい。

これから二人の判断を聞く事になると実感した僕は思わず義兄と繋いだ手に力が入る。すかさず義兄が庇うように一歩前へ足を踏み出した。


そんな僕達の様子に思わずと言った風に苦笑を浮かべたギルド長は普段と変わらない口調で僕達に席を勧めてくれた。


「そんなに警戒せんでも取って食おうだなんて考えていないさ。そこの席に座ってくれ」


「…はい」


義兄と手を繋いだまま長椅子に座る。寄り添う僕達の様子を何処か微笑ましそうに見つめながらギルド長も向かいへ座り口を開いた。


「さて…改めて先日は重い決断だったろうに正直に打ち明けてくれてありがとう」


「私からも。知らずとは言え責めるような事をしてしまいすみませんでした。

………そして愛し子様、これまでの度重なる非礼をお詫びします。誠に申し訳ありませんでした」


そう言い深く頭を下げた二人に慌てて僕は声を上げる。


「ギルド長、ニコライさんも頭を上げて下さい!お二人が謝る事も気に病む必要もありません。お二人共職務に忠実だったからだというのは重々承知しています。

こちらこそ長い間騙すような形となってしまい本当にすみませんでした…!」


まさか謝られるとは思わず僕も深く頭を下げる。謝罪の押し問答になりそうな雰囲気に顔を上げられずにいると頭の上から堪え切れずと言った風に笑う声が耳に届いた。

恐る恐る顔を上げると隣に座る義兄が忍び笑いを隠すかのように口に拳を当てギルド長達を見つめていた。


「師匠、そんな芝居見せられても演技なのバレてますよ。いい加減変に殊勝な態度を取るのやめてくれませんか」


「…っく。はっはっは!俺がこんなに改まった態度取るのは会合位なもんだぞ。もう少し我慢してくれよ」


そんな二人の遣り取りにポカンとすると、此方も様相を崩したニコライさんが長椅子に少し身を預けジトリとした目を隣へ向けた。


「ギルド長、少しは事の重大さを考えて下さい。血の誓約がなければ今頃神殿が黙っていない極めて肝要な事例なのですから」


「そう言いながら結局俺の意見に賛成したのはニコライ殿じゃないか。それに堅苦しいのは嫌いだと再三言った筈だろう?」


「この子は神殿にとって、いや各国にとっても貴重な存在なのですよ。この子達の気持ちを慮った態度というものは取れないのですか」


「そうは言ってもなぁ………これまでそれなりにギルドの責任者として色々な経験を積んで来たつもりだがなぁ………こんな重大な案件は生まれてこの方初めてだよ」


そう言い肩をすくめ快活に笑うギルド長。

………んんん???何だなんだ。話の流れについて行けないぞ。


………内心は疑問符の嵐だけれどここは社会人経験を活かしてキチンと話を進めよう。

僕は背筋をスッと伸ばすと意識してゆっくりと言葉を紡いだ。


「……僕の事を隠していた件については本当にすみませんでした。ですがギルド長達からしたら僕はただの見習いの子供です。愛し子だからと畏まった対応をして頂かなくて大丈夫です。


……先日話した内容について話が纏まったと伺いました。ギルド長とニコライさんの見解を聞いても宜しいでしょうか?」


声が固くならないよう努めて冷静に話したけれどすぐ隣に居る義兄には僕の不安が伝わっていると思う。

そんな様子に義兄が心配するなというように僕を引き寄せ寄り添ってくれた。


僕の言葉にニコライさんは微かに苦笑を浮かべている。そこには以前のような警戒の色は一切見られなかった。そして彼は優しく子供に教えるように話し始める。


「そう、()()です。君から聞いた内容は正直に言って私達の手に余る物であり困惑もしました。しかし、最終的には何度も話し合った上で決めました。


…リコちゃん、君は今はまだ庇護されるべき10歳の子供であると。

君は私達からすれば()()()()()()()()()です。

ならその子供に対して先達として、見習いの監督者としての責務を果たすのが最良でしょう。

才能があるのならそれを伸ばせるよう道を示すのが私達の役目。逆に問題を起こすようであれば冒険者として生きる術を身に付けるよう指導して行く。


君の将来は君がこれから大人になってから責任を負うものであり、どう生きたいかを決めるのは君の自由である。と

………これが私達の決定です」


優しい口調のまま語られるその言葉は確かに耳から脳へ届いている筈なのに頭が上手く処理出来なかった。

義兄は口を出さず静かに見守ってくれていたが不意に空いている手で頭を撫でて来た。その拍子に思わず顔が強張る。

抑えていた感情を孕んだ熱い息を咄嗟に堪え、滲む涙を必死に理性で押し留めようとするも…次第に均衡は崩れ始めとうとう僕の瞳からぽろり、と涙が一粒零れ落ちた。


返事を返せず只声を殺してぽろぽろと涙を流すしかない僕の事をギルド長達は静かに見守ってくれている。

嗚咽を殺し損ねた歪な呼吸音が静かな部屋を震わすように微かに響いた。



……そんな言葉を貰えると思っていなかった。

…………僕を、只の僕個人として扱うと言ってくれたのだ。この人達は。


漸く頭と心の理解が追い付くと、肩が大きく震え出してしまい僕は空いている手で顔を覆って泣き崩れた。


僕がいよいよ本格的に泣き出した事でニコライさんは自分が泣かせてしまったと思ったのか、慌てて懐から布巾を差し出してくれた。

しかし、僕が嗚咽の合間になんとかお礼を言おうとする前に義兄が手で制しそれを拒んだ。

そのまま義兄の懐に抱き込まれてしまい僕は何も言えないまましゃくり上げる事しか出来なくなってしまう。


ニコライさんと義兄の遣り取りに堪らずと言ったようなギルド長の笑い声が聞こえる。頭の上では義兄がそれに何事か返しているが、緊張の糸が切れた脳は上手く言葉に直してくれなかった。


ーーーすっかり話し合いの雰囲気では無くなってしまったが、部屋に来た時の緊張感はいつの間にやら何処かへ飛んで行ってしまっていた。



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