「我が家にて。」
ーーあれからギルド長に帰宅を言い渡された僕達は真っ直ぐ家に帰り義父さんとフィリに事の次第を話した。
ギルド長達との話し合いの事。そこで聞かされた冒険者資格の認定について、僕に掛けられた嫌疑について………誓約魔法を施した事については話せたけれど内容までは流石に話せなかった。
けれど誓約魔法という重い誓いを立てた事ですぐに何を話したのかは察した様子だった。話し合いの後ギルド長の判断が下るまで休暇を与えられた事までを話すと義父さんはゆっくりと頷いた。
「…成る程。それで聖霊様は正直に話す事に反対なされなかったんだね?」
「うん……反対も、賛成もされてない」
「そうか………ノア、聖霊様方を今この場にお呼びする事は出来るかい?」
その言葉に僕は心の中で皆んなへ呼び掛ける。
するとギルドでは一切言葉を伝えて来なかった皆んなが光に包まれながらすぐに姿を表した。いつも通りのその様子に僕は椅子から立ち上がり足元に居るカホちゃん達に抱き着く。
「皆んな……!今日は本当にごめんなさい……っ
皆んなの意思を確認しないで勝手に話してしまって………」
僕は皆んなが出て来てくれた事への安堵と怒っているかもという緊張が解けた事で身体から力が抜けてしまった。
ハレくんとカホちゃんのふわふわの毛に頬を寄せながらじわりと滲む涙を乱雑に拭う。その様子に気付いたナギちゃんが目元へ近付き優しく涙を吸い取ってくれた。
カホちゃんもハレくんも穏やかな表情でそっと身を寄せてくれている。皆んなのその仕草に余計に安心感が胸を満たした。
「本当にごめんなさい………」
僕のその言葉に皆んなは「大丈夫」と意思を伝えてくれる。温かな体温に皆んなが側に居てくれる事をより実感してしまい暫くその場を動けずにいるとそれに気付いた義兄が側へやってきて僕を立たせようとそっと肩に手をやる。
僕は皆んなの頬へ順にキスを贈ると義兄の手を借りてゆっくりと立ち上がった。
そうして席に戻るとピョンとカホちゃんが僕の膝に乗って来る。ハレくんは義兄の肩に、ナギちゃんはフィリの前にそれぞれ落ち着いた。
3匹の動きを見守っていた義父さんがそれぞれが落ち着いた所で再び口を開いた。
「聖霊様方、この場においで下さりありがとうございます。
それで今回の冒険者ギルドでの話し合いについてですが……聖霊様方はどの様にお考えかお聞かせ頂けますか?」
義父さんのその言葉に皆んなは頷く。僕の心に皆んなが意思を伝えてくれる。
ーーあの者たちなら大丈夫………誓約を交わした以上は背けないーー
そう話す皆んなの説明では誓約魔法とは神に誓いを立てる行為に等しい絶対の誓いなのだという。魔法を発動した上で秘密を守る……つまり星母神様に対して破れぬ誓いを立てた事と同義なので皆んなも反対しなかったとの事。
では何故あの時僕の呼び掛けに応えなかったのかと言うと………
「………えっ。あの時ギルドにイライザさんが居たから?」
その名前に向かいに座る義父さんは心当たりがあったようでふむ、と呟いた。
「成る程……そういえばインディル達の試験の折に一角獣を連れた方がいらっしゃったそうだね。イライザ殿というのはイライザ・アン・シャルパンティエ殿のことでお間違いないですかな?」
義父さんの問いに聖霊の皆んなは肯定を示す。
得心がいったというように腕を組み思案顔で顎髭を撫でる義父さんに対して義父さんの隣に座るフィリから疑問の声が上がった。
「そのイライザさんって義父さんの知ってる人?」
「いや私自身は面識はないが高名なお方だよ。元は私と同じ聖ソリュンテーゼ国のご出身だそうだ。辺境伯家のお生まれだったのだが、かの御仁は政略結婚に強い拒否感を示されて………家を飛び出し神殿で生涯独身の誓願を立てたんだ。
その後、一から身を立てる為に冒険者となる事を選んだ彼女は……依頼先で出会った一角獣に主と認められた事で神殿より聖女の称号を授かった。
聖女という称号は数ある偉勲の中でも歴史に残る程の誉れなんだ。
……実は一角獣は元々愛し子様亡き後もこの地に留まった聖霊様の末裔とされていてね。出会った者の本質を見抜くと古くから伝わっているんだ。
精神と魂の清らかさ、緩みない志を持つ者を好むとも言われている。だからこそ一角獣に認められたという事は人格の清らかさの証明となるんだ」
ふむふむ……イライザさんはそんな凄い方だったのか。
今更ながらそんな人が僕達の試験に協力していてくれた事に物凄いプレッシャーを感じて来た………接した印象は砕けた口調と態度で話しやすいのに自然と気品を感じる素敵な人だったけど……
でもイライザさんが居た事と聖霊の皆んなが返事を返してくれなかった事と何の関係があるのだろう………?
「それで聖霊様方はどうしてノアに返事を返さなかったんですか?」
義兄の問いに聖霊の皆んなは困ったように首を横に振る。そして申し訳なさそうに僕を見つめると意思を伝えて来た。
「……皆んなの存在がバレる可能性があったから?」
疑問符たっぷりな僕の問いに皆んなはこくこくと頷いた。




