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大好きな家族とほのぼの生きています  作者: 青磁
【広がる世界編】
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「誓約。」




そう切り出した彼に僕は密かに安堵の息を吐きそのまま話を委ねる。良かった、義兄の事だから猛反対すると思ったけど冷静な判断をしてくれたみたい。


精霊の皆んなに心の中でごめんね、と呼び掛けるも返事はない。正直、家族よりも存在を明かす事を猛反対していたのはカホちゃん達だ。

義兄の話を静観してくれているのか、或いは………


ずっとカホちゃん達が守ってくれてたのに相談もせずに決めてしまったから怒っているかもしれない。何の感情も伝えてくれない皆んなに罪悪感と寂しさが過ぎった。


……………僕は皆んなの、大切な友達の気持ちを無碍にしてしまったかな。

ある種の諦念の気持ちを抱きながら隣に座る義兄の話に静かに耳を傾ける。


「まず始めに聞きたいんですが……この場に居る4人だけで秘密を守れますか?」


「あぁ約束しよう。なんなら誓約魔法をこの場で掛ける。

ニコライ殿もそれで構いませんね?」


「………良いでしょう。」


その言葉を聞き義兄は頷く。

この世界には一般に言われる魔法の他に誓約魔法と呼ばれる契約が存在する。秘密や約束を互いに共有する強固な誓いで、この類の魔法は魔力を動力源とせず、互いの血がその誓いの発動条件であると同時に誓いの証となる。


これは互いに放棄する以外、破られる事のない絶対の誓いだ。

放棄が成立せず誓いを破ろうとすればその者の血が毒となり身体を蝕む。

つまりギルド長とニコライさんの口から僕の正体がバレる事は無くなる。


………実はこれ、寝返ったり裏切れないように互いに縛るとか、罪を犯した罪人の再犯防止に設けられる処置だったりする。重い契約となるがそれと同時に僕は内心ホッとしていた。


もし口約束のまま明かしていたら最悪のパターンとして能力の独占を狙い脅されるか、僕の意志より世界貢献の為とあっさり周囲にバラすかもしれない可能性があったからだ。その可能性を無くすのにこれ程最適な方法はない。


まずギルド長が小さなナイフを取り出し自身の指の腹を切る。

指から滲む血をテーブルの中央に付けるとニコライさんもそれに続き、血を付ける。テーブルに置かれたナイフを義兄が受け取ると同じように傷を作り血を二人のそれに重ねる。

僕もナイフを手渡され小指の腹を切る。

一瞬の痛みの後、ぷくりと溢れる血をテーブルに付け僕はナイフを置いた。


準備が揃うとニコライさんが誓いの言葉を唱え始める。

この世界の古語らしいそれは僕の耳にも変換される事なく、唄のように頭の中を滑り流れていく。


愛し子が現れるようになる以前からある言葉なんだっけ?

義父さんが神殿の教義について教えてくれた時にこの言葉の一部を聞かせてくれたな。前世でいうヘブライ語的なものかな。

翻訳が大変そう………


そんな事を考えている内にニコライさんが唱え終わる。

すると血の周囲に加護を掛ける際に見える帯状の紋様が現れ、血が宙に浮かび上がる。赤い雫は光を放つ紋様に包まれると4つの光に分かれ、僕達の胸に吸い込まれていった。


………初めて見たけど、これが誓約魔法か。

加護の発動と似てるな。元は加護と同じものだったのかな?

自身の胸元を不思議そうに眺めているとニコライさんが声を掛けてくる。


「これの効果は今から見聞きした情報に限ります。

私達はこれから聞く話をこの場の人間以外の誰にも他言出来なくなる。逆に言えばこの場の人間になら話しても誓約は破らない事になります。

そして当然ですが、誓約魔法を掛けた事自体は誰にでも話せます」


その説明に二人揃って頷くと義兄は僕へ声を掛ける。


「リコ、認識阻害の魔法を解け」


「…分かった。両方共で良い?」


「あぁ」


その言葉を受け僕は首に掛けたペンダントを外す。そして自身で重ね掛けした魔法を解いていく。

突然色彩の変わった僕にギルド長達は驚く事なく静かに此方を見つめ続ける。様子から察するに貴族の血縁という可能性も考えられていたのかもしれない。

……しかし僕が顔を上げこの瞳を正面から見た途端、二人は表情を変えた。


ハッとしたように目を見開くとそのまま呆けたように此方を見つめ続けるギルド長とニコライさん。特にニコライさんはポカンと口を開け、鋭い印象だった目を丸くしたまま動かない。


………?

あ、この瞳が珍しいのか。確かに義父さんも滅多にない色だって言ってたからね。


ん〜………なんだかニコライさんの視線が痛い気がする。

おかしいな、睨まれてる時より居心地が悪いぞ……


あまりの二人の凝視に見られる事に慣れていない僕はソワソワと身じろいでしまう。そっと僕を隠すように抱き締めてくれた義兄はもう魔法を掛け直して良いぞ、と囁いた。


その言葉にホッとして手早く自身に魔法を掛ける。

念の為のペンダントも着け、髪がいつもの茶色になっているのを視界の端で確認すると顔を義兄へ向けた。


魔法がちゃんと掛かっているか確認して貰おうと口を開いた僕はしかし、彼のドス黒い不機嫌オーラに気圧され言葉を発する事なく再び口を閉じる。


え、何なに??

お兄ちゃん何でそんなに怒ってるの……?

頭の中を疑問符が何個も浮かぶが、彼は僕の視線ごとその胸元に隠すと苛立ちを隠す事なく口を開く。


「もう見なくて良いでしょう」


その言葉にハッとなったようにギルド長達の身じろぐ気配がする。閉ざされた視界の向こうから咳払いの音の後、ギルド長の声が聞こえる。


「すまない、あまりにもその………いや、何でもない。

……おい、ディランそんなに睨むんじゃない!

悪かった!もうジロジロ見たりしない。ニコライ殿も話しに戻るぞ」


「………っは、はい」


そんな遣り取りに義兄の腕の中から目元だけ出し向かいの二人を見遣る。居住まいを正したギルド長達は話を聞く姿勢を見せたが、未だ驚いた様子を隠せないでいた。

ギルド長は口元に手を遣りながら何かしら考え込み始めたし、ニコライさんに至っては二度三度と此方を見ている。


え、何………?

何がそんなに驚きだったんですか………??


訝しむ僕だったが、そんな二人に構うなと言うように再び義兄の腕の中に閉じ込められる。身体ごと僕を隠すように包まれた所為で義兄の声と向かいの二人の気配以外分からなくなってしまった。

話し合いの席でこんな体勢で良いのか……と考えていると頭のすぐ上から義兄の声が降ってくる。


「………リコはこの容姿の事があり、見た目を偽っていました。印象に残らないように魔法も重ね掛けして。

それに師匠は試験の時に見ましたよね。量はそこそこですが此奴は複数の魔力を扱えます。

加えて身体強化と守護の加護持ちでもあります」




………へ?



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