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大好きな家族とほのぼの生きています  作者: 青磁
【広がる世界編】
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「隠れ子は毒か薬か。」




ーー予想だにしなかったユニコーンという強敵と相対した状況下。普通なら恐怖に身が竦み思うように動けないのが当たり前だろう。

実際、混乱に陥ったエミールとジャッカスはそうだった。


しかしリコは強敵に混乱するどころかディランと共に戦う事を選択したのだ。

始めはあまりの強敵に逃げる事を諦め、無謀な賭けに出たのかと思った。


ーーだが彼女はそんな予想を良い意味で裏切った。

ディランと息の合った連携を取り仲間を的確にフォローし始めたのだ。その上ハキハキと指示を出すその姿にバーナードは本当にあのリコか?と一瞬疑った位だ。


圧倒的な強さを前にしても楽しいとばかりに笑みを浮かべる小さな子供達に、思わず自身の若手の頃を思い起こされ気が付けば戦闘を見守ろう。とイライザ達に伝えていた。

久々に感じる戦場の緊張感と高揚感に、試験である事を頭の隅に押しやって自身でも気付かぬ内に笑みを浮かべていた。


ディランが発破を掛け、リコが援護した事により硬直していたエミールとジャッカスも本来の力を十二分に発揮し始め……

冷静に状況を見定め迅速に行動に移し果敢に立ち向かい続ける子供達。


驚くのはそれだけではない。


なんと不意を突いてユニコーンを捕らえるという芸当までして見せたのだ。


採取した蔦に魔力を流して即席のトラップとする等………誰が想像するだろうか?

その高い魔力操作の精度にイライザが舌を巻いた程だ。


ーーいつもディランの影に隠れている小さな男の子だと思っていた。

ディランの過保護さを見て、彼に守って貰わないといけない程力のない存在なのだと………


リコは、彼女はそんな想像を粉々に打ち砕いてしまったのだ。



ーーー事の経緯を聞き終えたニコライはゆっくりと息を吐いた。

話す内にその光景を思い出したバーナードが面白がるようにニヤリと笑う。


「今年の見習いは皆豊作だぞ。

エミールとジャッカスも順当に経験を積めば前線で活躍する冒険者になるだろうし、ディランの強さと才能は別格だ。

彼奴は勘が特に鋭い。本人曰く、()()()()()()()()()んだと。


その上判断力も処理能力も飛び抜けて高い。

身体だけじゃなく頭を働かせるのも上手いんだ。俺の予想だが、彼奴なら月桂樹級も十分狙えるだろう。

それに加え今回のリコだ……あの子は彼奴らの能力をより開花させる火種になる。あの子の存在が周りの成長を促すのだとしたらこんなに良い関係は無いと思うぞ」


今では何故あれ程の逸材が側にいたにも関わらず注目していなかったのか不思議な位だ。ディランという圧倒的な才能の持ち主が側にいたにしてもそれで霞んでしまうような物では決してないのに。


その性格の一端を見ただけで他には関心すら向けなかった。

………女であるという事実には別の意味で驚愕したが。


これまでギルド長として数々の冒険者達を見てきた審美眼がリコにだけは発揮されなかった事に疑問を抱きつつも、改めてニコライへ言葉を重ねる。

 

「とにかく、ジャッカスとディランは資格を与えて良いという此方の判断だ。希望を言えば、エミールとリコにも制度を適用させてやりたいが、な。


そこは認定員であるお前さんの見解に委ねようと思う。素質は十分とは言え、まだ身体が出来てないからな」


そう言いテーブルに広げられた書類をトンと叩く。

他人に対して何処か俯瞰して見ている節のあるイライザでさえ、珍しく見習い達の事を買っている様子で口添えをする。


「これは私の予想だけどね……嬢ちゃんの方は高い魔力操作の技術に加えて、何かしらの加護を持っていると思う。

ヴァイスデーゲンとの戦闘で何か勘付いた様子だったからね。

もしかしたら私の掛けた守護の加護に気付いたかもしれない」


「あぁ、もしかしたら身体強化の加護は持ってるかもな。

ディランの能力を底上げするには相性が良いし、エミールとジャッカスも普段の訓練以上の力を発揮していた。

火事場の馬鹿力にしちゃ皆んな冷静に立ち回れていたようだし………」


ニコライは話を聞きながら手元の書類に目をやる。

試験結果の他、リコ達4人の情報が記載されているそれに再び目を通したニコライは疑問を口にした。


「そういえばこのリコという少女、やけに情報が少ないですね……加護の有無なら見習い登録の際にハッキリする筈ですが。

この子に対して鑑定は行わなかったのですか?」


「勿論したさ。リコが見習い登録した時にウチの職員がな。此方でも今回の試験結果を鑑みて改めてリコの情報を調べたんだ。

……けど、リコって名前と身長・体重以外は全く見られなかった」


その言葉を受け、ニコライは切長の目でギルド長を見据える。

もう随分と昔の事例だが、過去に裏商売に手を染めている敵対組織のスパイ行為が判明した事があり、それ以来公にはしていないが冒険者ギルドでは鑑定による素性の調べを義務化している。まだ10歳の子供まで犯罪の一端を担っているとは考えたくないが………


「まぁ俺らみたいに何らかの妨害魔法を施しているだろうな。

……それと気になる点が一つ。

それを調べた職員は明らかにおかしい事象だったのに何の疑問も抱いていなかったんだ。そんな最低限の情報しか見られないなら、何かしら工作されてる可能性を考慮して普通申告するだろ?

けど、誰も疑問に思わずリコは何事もなく見習いの仕事を続けてたんだ………気になるよな?」


そう口にするバーナードは笑いながらも瞳に鋭い光を讃えている。ギルド長という任に就いている以上、疑いがあれば(つまび)らかにしなければならない。

それも明らかな逸材なのに今の今まで存在自体ほぼ認識していなかったとあれば尚の事。


……バーナード個人、いやこの場の全員がリコが潔白である事を願っている。バーナードも怪しいと言いながらも、それより先にリコへの資格供与を希望していた。

それに清廉を尊び物事の本質を見抜くと云われる一角獣(ユニコーン)、それも既に主を定めたヴァイスデーゲンが懐いた子供だ。


ここまでの徹底した隠蔽が個人的な事情による物なら良いのだが………


ーー束の間逡巡するように書類を鋭く見つめていたニコライだったが、やがて顔を上げると二人へ向けて口を開いた。



「……では、直にその子と話をしてみましょうか」



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