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大好きな家族とほのぼの生きています  作者: 青磁
【広がる世界編】
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「明くる日の協議。」




ーー見習い試験から一夜明けた翌日。チェロの街では穏やかで過ごし易い陽気が人々の営みに活気を与えている。

それは冒険者ギルドでも同じで朝から冒険者達を見送ったギルド職員は今日も冒険者と依頼者を繋ぐ為、自身の職務に当たっていたーー


午前の業務を終え、お昼に差し掛かるそんな時分。

ギルド長バーナードは自身の執務室で来客を迎える為の長椅子に座っていた。

向かって右手にある一人掛けの椅子にはヴェールを外したイライザも同席している。

その場の全員が腰を落ち着けた所で向かいに座る人物へ改めて言葉を紡いだ。


「………ここにケルヴィナ国チェロギルド、ギルド長バーナード・アビゲイルと、」


槍水仙(イキシア)級冒険者、イライザ・アン・シャルパンティエの名を以て見習い冒険者、ジャッカス、ディランの2名を正規冒険者に推薦する」


その言葉に向かいに座る人物ーーニコライは静かに書類へ向けていた視線を上げた。


「……この度の試験で4名の合格者が出たのは分かりました。

例年通りなら満14歳を以て資格を与える所ですが………

それを待たずして資格を取得させたい、と?」


「あぁ通常はお前さんの言う通り14歳まで待たなきゃならん。

だが、ギルド規定ではギルドマスター以下の責任者及び、それに準ずる冒険者資格を有する者2名以上の推薦で正規冒険者資格を取得出来るとされている。

特別認定制度だったか……?あいつらはそれに相当する実力を持っている」


「私としては他の2人にも適用させたい所だけどね。

特に嬢ちゃんの方は私の後継者になるだろうさ」


イライザのその言葉にニコライは微かに眉を動かし、彼女へ顔を向ける。鋭く見据えるその瞳には何の感情も表れていないように見えるが、短くない付き合いのイライザには驚きが滲んでいるのが分かった。


彼は一度目を伏せると、ギルド長へ口を開く。


「成る程………今回、私が呼ばれた理由は分かりました。

試験結果も此方の報告を読んだ限りでは合格が妥当でしょう。

その上で確認したいのですが………何故、13歳であるジャッカス以外の子も含め試験を行ったのですか?一番下の子はまだ10歳です。

その上、今回の試験で一角獣(ユニコーン)を相手取らせる等と………かのユニコーンはいくらイライザ殿に従っているとはいえ、危険では?」


その問いにバーナードは肩をすくめて見せる。

イライザも椅子に深く腰掛け、くくと笑みを溢した。


二人のその様子に検討が付かない彼は怪訝そうに眉を顰める。

悪い方向へ警戒し出した彼の様子を見てバーナードは苦笑を浮かべながら口を開いた。


「いや、お前さんの想像しているような事はない。

実は今回試験に出たディランは俺が弟子に取った奴でな。

物事への吸収も早いし、才能も意欲も十分にあるから試験日を早めたんだ。が、此奴がだな……」


途端、歯切れの悪くなったバーナードの後を継いでイライザが言葉を紡ぐ。

ニヤリと笑うその様にニコライは嫌な予感がした。それも下らない方向に。


「何処へ行くにも嬢ちゃん……リコを連れて行くんだと。

それはもうベタベタと恥ずかしげも無く。

で、将来を見越して試験をしないかと話を持ち掛けたら、坊主はなんて言ったと思う?」


「……なんて返したのですか?」


「ーーリコとこの先も仕事を続けて良いのなら受けます、とさ。これにバードが頭を抱えちまったのさ」


その言葉に遣り取りを想像した彼は思わず渋い顔を作った。

基本、見習いを同行させるのは経験がある程度豊富なベテランか専任の指導係が通例だ。

冒険者に成り立ての者はなるべく能力に合わせた依頼を受けさせてランク上げの機会を設けるようにしている。


早い内から経験を積ませ実力を持たせる為だ。

依頼達成数や貢献度に応じてランクも上がる為、組織全体の能力・質を上げると共に本人のより活躍できる場を広げてやる狙いもある。

仮に、見習いに新人の冒険者を付けるという事は、言ってしまえばそれだけ新人の出世への道が遠のいてしまう事になる。

しかもそれが、リコが正規冒険者になるまで続くとなれば尚の事。


若く才能ある少年にとってはハンデとなってしまうのだ。

それを自身の弟子にする程ディランを買っているバーナードが許容するのは難しかった。


ーーなので、今回の試験でジャッカスと共にディランをも試す事にした。


リコを守りながら急な状況でも冷静に判断し、対処し得るか、を。バーナードは見習いを庇いながら依頼を熟す力量があればディランの意を汲み、リコを正規冒険者の依頼に同行させるのを良しとする決定を下したのだ。


そんな折に偶然、巡礼でイライザがこの地を訪れていたのは好機だった。ヴァイスデーゲンに相手を務めて貰えば、いざ実戦となった時にも今回の試験での経験を活かせる。

相手は加減しているとは言え、(ウィスタリア)級のパーティが対処に当たる存在だ。


これで恐怖と混乱で思うように動けなくてもおかしい事ではない。ディランと同行させるにはまだ力量不足と説得する材料にもなるし、逆に力量を比べ冷静な判断を下し逃げる事が出来れば合格とする………手筈だった。


ーー礼儀正しいが存在感が薄く、いつもディランにくっ付いている以外印象に残らない小さな子供。

リコへのバーナードの認識はその程度だった。


リコは守られる存在と決めつけてリコ自身の能力は見ようともしなかった。あくまでディランが子守りをしながらも動けるか……そこを見極めようとしていたのだ。


ーーこれを仕掛けたバーナード以下、ギルド職員達は全員博打だと思っていた。ディラン自身が合格に値する力量を持っていてもリコは負担にしかならない。


……ディランの意を汲むとした上で、バーナードはリコが足枷となる動きをした場合は彼に話すつもりでいたのだ。

見習いの仕事を真面目に熟し、常に礼儀正しく接する子ではあるが10歳の子供には冒険者の仕事は重荷である、と。

試験後、そう伝えるつもりだった。


………それが、どうだ。


そんな彼等の予想に反し彼女はーーリコは健闘した。

先ず森を探索している道中からしてバーナードは感心していた。

ディラン同様、リコは常に周囲を警戒しそれとなく危険を回避するように立ち回っていたのだ。


その様子に危険回避は心得ているのだと安堵の息を吐いた。

これならディランの足を引っ張るという事態は免れる。

このまま無事に退避出来るのなら心配は無用だと、その光景を見るまではそう考えていたーー



ーーその力を見るまでは。



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