「路地裏の温もり。」
今回短めです。
暫くお互い抱きしめ合ったままその場に居続けたが、次第に落ち着いた義兄がゆっくりと顔を上げた。
「…………悪い。寒くないか?」
「ううん、お兄ちゃんが温かいから大丈夫」
そう言い抱き付けば彼は優しく抱き留めてくれる。酒場で側に居られなかった分、ずっと義兄にくっ付いていたかったし甘えさせてあげたかった。
「ふふ……今日はもう遅いから空間転移で帰ろうか。
カホちゃん達が戻って来たら……」
「くぅ〜」
その声に顔を上げると暗い路地裏の中に淡く発光するように現れる聖霊の皆んなの姿が。僕達の様子に心配そうに近寄って来た皆んなへ僕と義兄は手を伸ばす。
足元に座ったカホちゃんと目線を合わせるように座り込みそのふわふわな身体を抱き締めた。同じように屈んだ義兄の顔を見てナギちゃんが少し赤くなった目元に何度もキスをする。
擽ったそうにそれを受ける彼の姿に思わず笑みが溢れた。
義兄の肩に止まったハレくんも首を動かして彼の頬に寄り添っている。
なんだかんだ僕も義兄も戦闘の後だったから皆んなの温もりに触れて安心していた。
あれだ。この世界には無いけれど、皆んなアニマルセラピストの素質があるよ。
フィリも小さい頃はカホちゃんのもふもふな身体に包まれながら遊んで貰っていていつも笑顔だったし。お陰で夜泣きが少なくてとても助かりました。
義兄も普段は自分からなかなか触れないのに今日はハレくんとナギちゃんを突いて揶揄っている。
義兄が構ってくれて嬉しいのか、二匹共楽しそうに突き返していた。
んん、ナギちゃん待って。そのテンションで水鉄砲は吐かないで?
あぁ……ハレくんが逃げの姿勢になってる。
……………あ、
ーー予想通り楽しくなったナギちゃんが義兄へ向けて水鉄砲を吹き出してしまい、避ける事も出来ずに義兄の顔はビショビショになる。
前髪を留めていたから以前程の様相は呈していなかったが、面白い位びしょ濡れになった彼の姿に僕は布巾を取り出しながら思わず吹き出した。
因みにハレくんは水鉄砲が吹き出す直前に飛び立ったので一滴も掛かってないです。涼しい顔で地面に降り立ったハレくんと隣に座るカホちゃんはやれやれと言った視線をナギちゃんへ向けていた。
片手で顔の水を拭った彼はしかめ面で僕の布巾を受け取る。
「はぁ…………なんでか聖霊様の動きは読み辛いんだよな。しかも躊躇なくやるし」
そう言いナギちゃんへ視線を向けるとそこには得意気に瞳を輝かせ尾びれをパタパタと動かす姿が。余程悪戯が成功したのが嬉しかったようで水の球を分裂させては宙でくるくると回して見せていた。
そんな二人の遣り取りに僕は思い切り笑い声を上げてしまう。
暫く顔を拭っていた彼だったが此方へ視線を向けるとムッとした様子で手を伸ばして来た。乱雑に頭をわしゃわしゃと撫でられて更に笑いが溢れる。
「お前……ニールさんの事言えないぞ。俺に何かある度、凄い笑うだろ」
だって、普段他人には無表情な上に口数の少なさからクールってイメージが付いてるのにナギちゃんに悪戯されてる時とのギャップが凄いんだもん。笑うなという方が無理だよ。
未だ笑いが引かない僕はくすくすと笑いながら義兄の頬に掛かる濡れた髪を避けてやりながら口を開いた。
「だってお兄ちゃん、ナギちゃん達と遊んでる時は可愛くて」
「可愛…………………」
義兄はその言葉が気に入らなかったのか呆れた目を向けて来たが、やがてゆっくりと立ち上がると僕へ手を差し出して来た。
「さぁ、これ位にしてそろそろ帰るぞ。
あまり遅いと義父さん達も心配するだろ」
「……そうだね。帰ろう」
義兄の手に自身のそれを重ね立ち上がる。
さぁ、帰ろう。
今日は義父さん達に聞いて欲しい話が沢山あるんだーーー
お読み頂きありがとうございます。
シリアス(?)回が思いの外長くなってしまったので小休止にほのぼの回を入れてみました。
もうちょっと兄妹3人・聖霊達がわちゃわちゃしているのを書いてみたいです(尚、書けるかは未定)_(:3」z)_




