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大好きな家族とほのぼの生きています  作者: 青磁
【広がる世界編】
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「抵抗。」




時間は少し遡りーーー合格祝いにご馳走するとギルド長から言われた僕達は酒場にやって来ていた。

一応皆んな未成年の身なので、門限はあるか?と確認してくれたギルド長に(義兄以外の)僕達は笑顔で大丈夫です、と応える。空間転移を使って義父さんには夕食を食べてから帰る旨を認めた手紙を送っておいたので家の心配をしなくて良い。


ーーフィリごめんね、お土産にお店の料理を包んで貰うから楽しみにしててね。

そう書き綴った手紙は今頃ちゃんと家族の手に渡っているだろう。使い始めた当初は苦戦した空間転移の加護もナギちゃん監修の元猛特訓した事により、今ではかなりの精度で使えるようになった。


これを使いこなせれば一方通行とは言え連絡手段にも役立てる。もっと他の人も使いやすいように付与してみたいのだけれど………それは今度練習しよう。

因みに聖霊の皆んなは用事があると僕に伝えてから姿を消したまま何処かへ出掛けてしまった。


これまでも偶〜に出掛ける事があったし、そもそも皆んなとてつもなく強いので心配はしていない。

何より皆んなが僕から離れても大丈夫、と判断したという事はこの場にも危険はないという表れでもある。


という事で笑顔で行ってらっしゃい!と心の中で見送った僕は義兄と共に酒場のテーブルへ向かう。


「今日は俺の奢りだからな〜。沢山食べて良いぞ!」


「本当ですか!やった〜!!」


「この店も久し振りだね。巡礼中はなかなか呑めないからねぇ………くく、バードに着いてきて正解だったよ」


「聖職者って飲酒大丈夫でしたっけ………?」


皆んなの楽しげな声を聞きながら僕もワクワクしながら店内を見渡す。義父さんはこういう場には行かないし、ニールさんも呑むなら商談後の会食か家だと言っていたから、それこそ冒険者でないと来る機会がない場所だ。

カウンターやテーブルのあちこちでは一日の働きを労い、料理やお酒に舌鼓を打ちながら談笑する人々の姿が。

見るに冒険者や街の労働者の人達が多く来店しているようだ。


ギルド長も慣れた様子で店員の男性とやり取りをすると奥側の大テーブルへ案内される。どうやら今日の為に予約してくれていたらしい。

大人から続々と席に着き、僕は端っこで良いか。と順番を待っていると繋いだままだった手をぐい、と引かれた。


あ、と思った時には席に着いている義兄の膝が近くにあり、僕は咄嗟に繋いだ手と両足に力を込めてその場に踏み留まった。

その抵抗を読んでいた義兄は空いた手で僕の胴に腕を回して座るように促すも、僕は頑として足を地につけ否、と意思表示を続ける。


強い義兄に力及ばず、ずりずりと足を引きずられるも身体は義兄に向けたまま座る事はしない。その無言の遣り取りに気付いたミラさんが何してるの?と此方へ声を掛けた事で席に座っていた幾人かが此方へ顔を向けた。

何人かの視線を感じながらも僕達は無言のまま睨み合う。


…………ディルさん、これだけは譲れませんよ。


「いや。」


「…………」


「絶対、いや。」


「………………」


義兄の無言の圧にも耐え続けなんとかその場に踏み留まっているものの、力の強い義兄は更に力を込めて身体を離してくれない。ーー腕を突っ張っても引いてもビクともしない彼にいよいよ抗議の声を上げようとしたその時、僕に天の声が掛けられた。


「ははは!嬢ちゃん、その坊主の()じゃなくて私の隣においで」


ーー鶴の一声とは正にこの事だ。


あれから僕はイライザさんのその言葉を有り難く受け取り、まさかギルド長(師匠)の友人の言葉を無碍にしないよね?と彼に言い、見事その腕から逃げ切る事に成功した。


恨めしそうに此方を見つめる彼の視線をスルーしつつ、イライザさんとミラさんに挟まれて席に着く事が出来た僕は、さぁご飯だ!と気持ちを切り替えて目の前に運ばれて来る料理の数々に目を輝かせる。

いざ、どれから食べようかと大皿へ伸ばした僕の手はしかし、向かいから伸びてきた腕に掴まれた。


……………

……………………

……………………………ディルさん。


向かいの席に座る彼は僕の手を掴んだまま離さない。

無言のまま一心に見つめて来る彼を見て側に居たい気持ちが胸を掠めるも、理性と倫理観がここで絆されてはダメ、と訴えかけて来る。


彼とは適切な距離感で居ないと、駄目。

子供の内はまだ良くても、将来彼の為にならない。


そう自身に言い聞かせて断腸の思いで視線を逸らす。

ーー名残惜しく思いながらも手を引くと彼はあっさりと離してくれた。


それからは拗ねたフリをしてひたすら彼の事を避け続ける。

正直に説得しようとしたらなし崩し的に絆されていつの間にやら彼のペースになってるからね。胸が痛むけれどここは心を鬼にして彼に社会での距離感を改めて考え直して貰わないと。


……あの数年もすれば、僕なんかに構うことなんてなくなる。

年頃になれば気になる女の子だって出来る筈だ。

そうすれば僕みたいな性別不明の事なんか取るに足らない存在だと気付くだろう。


彼は容姿も整っているしこの歳でユニコーンを相手取れる強さを持っている。すぐに評判になり人気になれば沢山の人と顔を合わせる機会も増えるのだ。

これからの出逢いの中に、一緒に添い遂げたいと思える相手も見つかるかもしれない。


………兄弟としての感情以外、彼にとっては要らないものだ。


女性陣で話しながらチラ、と向かいに座る彼を見ると寂しそうな瞳を一心に此方に向け続けている。

その視線から逃れるように僕はミラさんとの会話を続ける。


………ごめんなさい。


笑顔のまま、心の中でそっと呟いた。



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