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大好きな家族とほのぼの生きています  作者: 青磁
【広がる世界編】
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「一角獣の主。」




その声に皆んなが一斉に後ろを振り返る。

ヴェールを被ったその人はゆっくりと此方に近付くと手に持つ錫杖をトン、と地に突く。杖の先にある鈴がその弾みに揺れるも、音は鳴らない。

だが音が聞こえたかのように僕の膝に横たわるユニコーンは耳をピクリと動かすと、ゆっくりとその身を起こした。


そして杖を持つ人の元へ近寄ると嬉しそうに側に寄り添い一つ嘶く。


「イライザ、今回の試験協力してくれて礼を言う。お陰で良いものが見れた」


「なに、巡礼の途中の暇つぶしだよ。

バードがそこまで気に掛ける子をひと目見ようと思ったんだが………私としても愉快な思いをさせて貰ったよ」


ギルド長と親しげに言葉に交わすその人は僕達へ顔を向けるとヴェールを取り顔を露わにした。

白髪混じりの銀髪に澄んだ青の瞳のその女性は傍らに寄り添うユニコーンを優しく撫でると切長の目で興味深そうに僕達を見つめる。


「加減させていたとは言えヴァイスデーゲンを捕らえるとは………中々骨のある坊主達じゃないか」


この人ユニコーンに懐かれてる……?

この世界、宗派によっては生涯純潔を誓う聖人も存在するけれど、もしかして神殿の人間………?


「もしかしてそのユニコーンは貴方の……?」


「あぁ、相棒だよ。ヴァイスデーゲンの主に認められてからかれこれ50年になるかね」


なんと。白髪がなければ40代と言われても納得出来る美貌なのに、下手をしたら老年期の年代だとは……


年齢を感じさせない溌剌さというか、ぶっきらぼうな言葉遣いとは裏腹に所作も綺麗だしこんな風に歳を取れたら素敵だな〜………


「その子はヴァイスデーゲンと言うのですね。

確かに一角獣(ユニコーン)に認められるのも納得の美しさです。それだけの年月を側に居たくなるのも分かる気がします」


「ははは!嬢ちゃんお世辞が上手いじゃないか。

いや、本心か。でないとヴァイスデーゲンが懐きやしないだろうからねぇ」


…………?

裏表のない性格が好きなのかな?


今言ったのは確かに本心だけど、正直これだけの美貌の女性と長年連れ添っていてよく僕みたいな性別不明なひねくれ屋に懐いてくれたな。


と、思考に耽っていた僕は急な浮遊感に思わず声を上げる。

ユニコーンが退いた事で自由になった僕の身体が義兄に抱き起こされたのだ。そして彼はそのまま離すことなく僕をその腕の中に閉じ込める。

上を見上げるとそこには分かりやすくムスッとした表情を浮かべる彼の姿が。


そういえばあれだけ動いてくれたのにまだ褒めてなかったな、と僕は腕を伸ばして義兄の頬に触れる。


「ユニコーン相手に褒められちゃったよ。凄いねディル」


「……お前が無事なら、それで良い」


義兄のその言葉を聞きながら普段通りの距離と慣れた体温に知らず肩の力が抜ける。


そっか…………皆んな、無事だったんだ。


ーー実感した途端、全身から力が抜けた。

そのままゆっくりと身体を預けた僕に何も言わず、彼は僕の頭を優しく撫でてくれる。


思えば尾行されていると気付いてからずっと気を張っていたかもしれない。

試験だと分かってはいても皆んな身の危険を感じた事には違いないのだ。知らずしらずの内に緊張しっぱなしだったのかな。


普段は恥ずかしがって外では極力最低限の接触に済ませて貰っているが、今はいつも通りのこの距離感が心地良かった。


そうだ。義兄だってここまでの強敵との戦闘は初めてだった筈だ。義兄も同じくずっと周囲を警戒してくれていたし、一番前衛で動いてくれていたのだから疲れているのかもしれない。


家に帰ったら思いっきり褒めてお互いを労ろう。

ふふ、今日の事を義父さんとフィリが聞いたら驚くかな。


義兄の手に自分から指を絡めてお疲れ様、と小さな声で呟くと応えるように彼は僕の頭に擦り寄って来た。


ふふふ、擽ったい。



ーーそうして暫くお互いを労っていたが、やがておほん、という咳払いが聞こえて僕はハッとなり慌てて前を向いた。


あ…………やっちゃった……………


前を向けば案の定此方を(生)温かい目で見つめてくる皆んなの姿が。

特にユニコーンーーヴァイスデーゲンは不満気にブルル、と鼻を鳴らし身体を揺らしている。


その様子に慌てて義兄に周りを見て、とジェスチャーするも、彼はヴァイスデーゲンを一瞥したかと思うとふん、と鼻で笑い一切気にする事なく僕の事を構い始めた。


いや、ちょ、自分から甘えはしたけれど、そろそろ離してもらえると……!

止めてという言葉はしかし、もにゅもにゅと頬を弄られた所為で不明瞭な声にしかならない。


「ひゃ、めへ……ひょっと、ゔぃる」


「もう俺以外の男に膝枕しないか?」


「ひ、らい……ひらいはら!」


まだその事、根に持ってたの…?!


ーー僕の切実な、しかし可笑しいくらい不明瞭な声が空しく辺りに響いた。



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