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大好きな家族とほのぼの生きています  作者: 青磁
【広がる世界編】
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「そういえば。」




尊大に蹄で地を抉り標的を見据えるユニコーン。

攻撃が効かなかった事に一拍遅れて気付いたエミとジャックが嘘だろ……と呆然と呟いた。

僕と義兄も魔物を見据えながら一歩も動かない。


少年達のその様子に魔物は攻撃された前脚を何事もないかのように動かすと、嘲笑うかのようにブルル、と嘶いた。


ーーー絶望が支配する空気の中、ふ、と笑う声が響く。

様子の変わった事に気付いた魔物は鳴らしていた蹄を止めた。


訝しむ様子の魔物と圧倒的な強さを見せつけられ、只呆然と立ち尽くすエミ達が一斉に此方を見遣る。


堪え切れず声が漏れた僕と義兄は顔を上げると表情を露わにした。

ーー緋色の瞳を光らせニヤリと不遜に笑う義兄と楽しさを隠せず口許を緩める僕。

恐怖に引き攣らせる所か、笑みを浮かべて見せる僕達の様子に怪訝そうに身体を揺らす魔物。


……ふふ、攻撃が効かない?

…………なら、効くまで攻撃し続けてやる。

あれが全力だなんて、誰が、いつ、言ったの?


一角獣(ユニコーン)なんて強敵相手に出来るだなんて正直、武者震いが止まらない。

聖霊の皆んなと特訓しているのは僕とフィリだけじゃないんだよ。


魔力操作で攻撃を防げるのなら防ぐ隙を与えなければ良い。

他の手だって試す良い機会だ。


義兄の反応から察するに切った感触があっただろうから恐らく扱える魔力は地属性。身体の鉄分なりを硬化させて身を守ったのだろう。

だとしても表面に傷の一つも付いていないのは他の要因がありそうだけど。


ともかく魔力探知からしても地属性の魔力を多く保有しているようだから扱うとしたらそれだろう。

風属性が微弱で助かった。風魔法で素早さを上げられたら正直今のディルでも速さについて行けなかったと思う。

義兄はサッと視線をエミの方へ向けると動き出す。


「エミール、二手から攻撃するぞ」


「は……」


「その剣はお飾りか」


「……っくそ!」


分かり易い煽りにエミが悔しそうに悪態を吐くと剣を鞘から引き抜く。震えるまだ幼さの残る手はしかし、しっかりと剣を握っていた。

その様子に笑みを浮かべると僕はジャックへ声を掛ける。


「二人が前衛を受け持つ。僕達は後衛から援護を!」


「……あぁ!」


自身を鼓舞するかのように力強い声で応えたジャックは弓へ矢をつがえ相手に照準を定める。


「エミ、身体の時間を進める。無理せず魔物の攻撃は避けて!」


そう言いエミにも加速魔法を展開する。

始め自身の身体の変化に戸惑っていた彼だったが、義兄の動きを認めると倣うように追随し始めた。


二人共突然の事に始めは混乱していたが落ち着きを取り戻すと思っていたよりも素早く行動に移せている。

その事に安心した僕は聖霊の皆んなに心の中で呟く。


ーーー大丈夫、そこで見守っていてね。


皆んなの隠れている方へ笑って見せると戦闘に意識を集中させる。


素早い動きで次々に攻撃を繰り出す二人にユニコーンは戸惑うように二の足を踏んでいる。

防御に意識を向けているのだろう。矢継ぎ早に来る攻撃を一つひとつ躱す事と魔力操作で防ぐ事に手一杯になっているようだ。


義兄の猛攻は勢いを保ったまま突進の隙を与えない。

エミも加速魔法で速くなった身体を活かし細身の剣を踊るように魔物へ振るう。

少年達の急な猛攻に驚いた魔物は動きを躊躇していた。


……一見此方が優勢に見えるが未だ傷一つ付けられていない。

エミか義兄が疲れを見せたら状況が変わってしまう。時間との勝負だ。


するとジャックが二人の素早い動きの隙に矢を放った。正確に放たれた矢は真っ直ぐに標的へ飛んで行く。


眉間を狙った矢はしかし、当たる直前で勘付かれた魔物により防がれてしまった。

鬣を降り矢を払い退けた魔物は怒りに瞳を見開くとジャックへと標準を変え此方へ向けて駆け出した。

続けて魔物の足元へジャックが矢を放つも相手は怯まず真っ直ぐ駆け続ける。


標的に引き離され仲間が狙われている事に気付いたエミが逃げろ!と叫ぶ。

だが、ジャックは弓を投げ捨て懐から短剣を取り出す。

刺し違えるつもりらしい事に気付いたエミが慌てて駆け出すが勢いの付いた魔物には到底追い付かない。


ーーあと数歩で迫ろうかというその時、横から伸びる幾つもの影により魔物の動きが阻まれた。


地面に落ちた袋から伸びる蔦がユニコーンの身体に巻きついたのだ。僕の魔力を含んだ蔦は僕の意思に応えて魔物を捕らえ僕達を守る。

そのまま蔦は身体全体に巻きつき、怒りに冷静さを欠いていた魔物はなす術なく囚われ、次第に身体を支えられなくなると地に倒れた。


ーー攻撃に備え足元に落ちていた荷を構えていたジャックが恐る恐る顔を上げる。息を切らせたエミが呆然と蔦と袋とを見つめていた。


刃のこぼれた剣をサッと見遣り注意深く魔物を見つめていた義兄だったが、やがて剣を鞘へ仕舞うと僕へと視線を向けた。

3人のその様子に僕は安心させるようにニコリと笑みを浮かべた。


「皆んなお疲れ様。……僕たちの勝ちだよ」




◇◇◇◇◇




「リコ」


「うん」


ディルの声に一つ頷くと懐から短剣を取り出す。

一般にユニコーンは角を切り取ると大人しくなるという。

獰猛で気高い魔物の為、手懐ける事は難しいのだがその角は水の浄化、あらゆる毒の解毒、病気の快癒の効果があるのだと言う。


その為ユニコーンの角は治癒の加護や医療の発展した現在でも高値で取引されている。まぁ脳性麻痺すら完全に治せるとなれば、未だに高額なのも頷けるという物だ。

念の為、蔦の下に闇魔法で影縛りを施し暴れられないようにする。


暫く藻がき続けていた魔物だったが僕が近付くと不意にその動きを止めた。

訝しむように周囲を見回し始めた魔物は、僕を視界に収めると急に様子が変わった。

それまで敵意を向けていた気配がゆっくりと、だが確実にソワソワとしたものになる。


僕は不思議に思いながらも一歩ずつ魔物へ近付きその頭の近くで膝を折る。その頃には完全に獰猛な気配は消え失せ、僕を一心に見つめる愛らしい生き物の姿がそこにはあった。


そのままユニコーンは僕の膝に頭を乗せ甘えるように僕の空いている手に鼻先を擦り寄せる。


え、何だろう………?もしかして魔栗鼠(ラタトスク)のように僕の魔力が好みだったとか??

それにしてもさっきまでの敵意は一体何処に………


不思議に思いながらもユニコーンの生態について記憶を辿っていると、不意に背後から重たい溜め息が聞こえて来た。


「……だから嫌だったんだ。」


「ディル?」


「お前も知ってるだろ。……一角獣(ユニコーン)は処女の懐に抱かれて大人しくなる。」


「あ。」


「へ。」


「え?」


……………

………………………

………………………………あぁ〜


………そういえば僕、処女でした。



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