「鑑定の使い方。」
あれから細やかな話し合いも終え、後は商会の店舗契約を後日行うという事で話は纏まった。
ウォルターさん達の方でも新たな商会立ち上げという事で商会の設備準備に工場と店舗の人員手配をしてくれる事となった。
本当に何から何までありがとうございます………。
もうテナー商会さんには足を向けて眠れません。
立ち上げの必要資金は僕の貯金からある程度出せるし町の管理する金融機関に申請すれば融資も受けられるそうだ。その点は前世のような仕組みが整えられていて安心した。
これで無事商会での経営が軌道に乗ったらこれまでの収入とは比べ物にならない位のお金が僕の収入として手元に入る事になる。
実はこれまで頂いていた僕のお給料、殆どは金融に預けている状態だ。
全体売上の3割弱が僕の受け取る金額ではあるのだがこれの殆どをもしもの為の貯金として金融に預けていた。生活費位にしか使わないからね。
組紐の収入も安定しているので正直それと義兄の見習いの給料とで生活費の不足分は賄えている状況だ。
それでちまちま貯めていたのだが配当金月半金貨4枚(200万)があった事でこれが一気に貯まり続けています……。
でも経営となると扱う金額がまた桁違いになる。
そこでこれからの経営の為に諸々の見積り額をニールさんと共に出してみたのだが、収益が仮に半分に落ち込んだとしても丸2年は融資とこれまでプールしていた資金で遣り繰り出来るという事が分かった。
いやまぁ貯金していたとは言えここまで安泰だとは思いませんでしたよ……。
何より驚いたのが今回の商会立ち上げ、提案したのはニールさんだった事だ。
何でもニールさんはテナー商会前会頭………お祖父様の初孫という事もあり経営の知識を幼い頃から教えられていたらしい。
お祖父様は何れはテナー商会の跡取りに……と考えていたそうなのだが、オルガちゃんも商会経営に前向きな姿勢である上にニールさんは自分で一から商会経営をしてみたいという夢があったそうで今回の話を提案したそうだ。
それならオルガちゃんの夢もニールさんの夢も両方叶えられる。成る程、商会の跡取り問題に発展する前の解決案も兼ねていたらしい。
そんなテナー家の事情もあり、今回の至れり尽くせりなお膳立てという事なのだが……それでも経営未経験な僕にとっては大変有難いです……本当にありがとうございます。
そんな事をニールさんへ伝えると、
「貴方のお陰で私もオルガも夢を諦めずに済んだのですから、寧ろ此方がお礼を申し上げたい位です。」
と、逆にお礼を返されてしまった。
なんだかニールさんは人が出来ているというか、卒のない人だな。
鑑定の加護持ちでもあるのでその気になれば相手の情報を色々と探れるのに、人となりを知る為には信頼関係が大切です。との事でニールさんと今度一緒にカフェに行く約束をした。
出逢った瞬間、鑑定の加護を発動させた自分の立場がない………大変申し訳ございませんでした。貴方の体重とかスリーサイズとか趣味とかの情報は絶対に誰にも漏らしません。
鑑定と言えば、ウォルターさん達には僕が愛し子だという事は商品の取引を求めた当時既にカミングアウトしている。
というのも鑑定の加護は人物に対しても有効だ。つまり僕に対して鑑定の加護を使えば僕が愛し子だと一発でバレてしまう。
義父さんはそこを踏まえてウォルターさんに商品の取り引きを求めた。僕が愛し子だという事を共通の秘密とする事も含めての他言無用の契約だったのだ。
当時、ウォルターさんから鑑定の加護持ちに注意して下さい。という助言を貰った僕は鑑定情報を誤認させる魔法を開発しておいた。
これもカモフラージュの魔法の一種で、相手が鑑定の画面を開いたと同時に僕が予め魔力で記載しておいた僕の偽情報が画面に映るというものだ。
ーー魔法の基礎の話になるが魔法はイメージが大事だ。
イメージが上手く出来ていないと魔法は発動しないか暴発してしまう。逆に言えば、イメージさえしっかり出来ていれば万能な能力だ。
僕は鑑定の使い方も鑑定の画面も分かっているので後は他者がそれを使用する場面を想像すれば簡単だった。
ウォルターさんに試して貰いキチンと僕の魔法が発動しているのは確認済みだ。これで安心して街中も出歩けているのである。
魔力操作も大分慣れて来たし今は外に出る時は認識阻害の魔法×2の重ね掛けに加え3つの魔力を使用するカモフラージュの魔法も展開できるようになった。
聖霊の皆んなや義父さんのアドバイスに従い魔力の流れを意識しながら魔法のイメージを構築した所カモフラージュの魔法を発動させる事が出来たのだ。
これをもっと練習すれば複数の属性を組み合わせた複雑な魔法も使えるようになるかもしれない。折角フィリも3属性の魔力持ちなのだ。また一緒に色々と試してみよう。
と思ったのだけれど………なんだか僕が使える魔法は隠す事に特化して来ていないかな?
えぇと、髪と瞳の色を変える・印象に残らなくする認識阻害の魔法に透明化出来る隠密魔法、義父さん直伝の防音魔法、それにカモフラージュの魔法に………
………どうしよう。このままだと僕、スパイかアサシンになれるかもしれない………
素性を隠さないといけないのは分かるのだけれどもうちょっと生活に役立つ魔法も開発してみたいな。
これから商会経営を始めるとなると忙しくなるかもしれないけど、魔法の勉強も続けていたい。
その辺も含めて今度ニールさんに会う時相談してみようかな。
ーーとまぁそんなこんなで決まった商会経営なのですが………困った事が一つ。
…………商会の名前が決まりません。




