「悪戯っ子」
ま〜たお風呂会です。
兄弟と聖霊達を仲良く遊ばせたかっただけなので、飛ばしても問題ないかと思います。
あの後、食事を終えた僕達はお風呂場に居た。
カホちゃんがフィリの子守を買って出てくれたので今お風呂場には僕達二人の他にハレくんとナギちゃんも居る。
義兄に服を脱がせて貰い椅子に座らされる。その時ザパンッと音がした。
後ろを振り返ると聖霊の2匹が湯船にダイブしていた……
今日はドライハーブやらレモンやら入れてるからお風呂を楽しみにしていたようだ。2匹は風と水の魔法を使い無邪気に遊び始める。
……何だかお湯が浮いてるけどちゃんと元に戻すよね?それ。
……正面に向き直り、義兄に身体を預ける事にする。
優しくお湯を肌に掛けられると次に髪と頭を濡らして泡立てた石鹸で洗われる。
彼の洗い方は優しく、とても気持ち良い。
指の腹でくるくると頭を撫でられると身体の力が抜けてしまう。ホッと肩の力を抜き、頭を上に向けてお湯で泡を流して貰う。
シャンプーの後はリンスだ。
柔軟剤を応用して作った手作りリンスをお湯を入れた桶に垂らし、これを髪に馴染ませていく。
こちらの材料もシンプルでレモン汁にヤシ油、精油をブレンドした物だ。優しく揉み込み、お湯を掛けてよく洗い流す。
次に義兄はスポンジを手に取り泡立て始めた。
この後身体を洗うのだが……僕の身体を洗いたい義兄vs自分で洗いたい僕の熾烈な攻防の末、背中を洗って貰い後は自分で行う。という所に落ち着いた。
いや、初めての兄弟喧嘩がこんな事ってある……?
お風呂は彼が来た初日の出来事もあって余計に恥ずかしいというか……気まずく思っていたのだがそんな事関係なしにぐいぐい迫って来たからね、家のお兄ちゃんは。
それに背中だけと言いつつ毎回首やら耳の裏やら丁寧に洗われてる気が……
そんな事を考えていると首をにゅるっと泡越しに撫でられる感触を感じて、思わず体を固くする。
うぅ、首は弱いんですよ〜…早く終われぇ〜…
首を窄め足をパタパタさせて刺激に耐えていると次は耳の裏を指で撫でられる。
ひぇぇ〜………早く終わって………
ーー終わったよと言う彼の声に安堵の息をそっと吐きながら手早く身体を洗っていく。ざぶっとお湯を浴びたら次は僕の番だ。
義兄に椅子に座って貰い足元からお湯を掛ける。
お湯が体に馴染んだら頭にもお湯を掛け、石鹸をもこもこに泡立てる。
指を手早く動かしてきめ細かい泡を作ると彼の髪を洗っていく。
こうするとふわふわの彼の髪が更にもふっとなるのだ。
ふふふ、乾いたらまた思う存分もふるぞ〜。
だがそれと同時に寝癖も酷くなるので朝から笑ってしまう事も多い。
ツノみたく左右の髪が立ってた時があったからね。毎日寝癖を見るのが楽しみだよ。
泡を洗い流して先程のリンスを彼の髪にも使っていく。明日の朝纏まりやすくなるように気持ち多めにリンスを使っておく。
リンスも濯いだら石鹸を新しく泡立て彼の背中を洗い始める。
本当に大きい背中だなぁ……僕はまだ全然大きくならないや。
やっぱり6歳にしては成長が早い。同じ物を食べてる筈なのにどうしてこんなに大きくなれるのか。
牛乳を飲めば良いのか??
そんな事を考えていると腰までを洗い終える。
彼にスポンジを手渡して僕は湯船に先に浸かった。
ふふ、ハレくんがお風呂に浮かんでる。
湯船なので水嵩は深いけれど水鳥みたいに器用に浮かんでいた。ハレくんの嘴をちょんちょんと突くと擽ったそうに逃げる。
えぃ、えぃ…………ふはっ!
突然脇腹を擽られる感触に身を捩ると、僕の身体の陰からナギちゃんがすい〜っと泳いできた。
ナギちゃん脇腹は駄目だって………
なんか今世でも僕、擽りに弱くない???
前世で散々友達に擽られた時を思い出すよ………
生まれ変わっても擽ったがりは克服できなかったか………
ナギちゃんの口を指で突きながら遠い目をする。すると洗い終えた義兄が湯船に入ってきた。
「また聖霊様達と遊んでたの?」
「うん!見て、ハレくんお湯に浮かぶの上手くなったんだよ」
「……聖霊様にそんな気安く接するのはお前位なものだぞ。聖霊様達、遊んで貰ってすみません」
その言葉にふるふると首を振る2匹。
するとナギちゃんが水面に顔を出したと思ったらうるうるの瞳で義兄の顔を一心に見つめ出した。
あ……
その様子に、ん?と不思議そうに顔を寄せた彼だったが何事か問いかける前にナギちゃんの口から勢い良く水鉄砲が吹き出したーー
…予想通り、思いっきり彼の顔に掛かる水飛沫。
その場には一瞬沈黙が降りた。
………あ〜ぁ。
ナギちゃんはムードメーカーというか、まぁ楽しい事大好きっ子だからなぁ。僕も去年やられたよ……。
そう思い義兄の顔を見上げると、呆然とした口元とぐっしょり濡れた前髪に顔半分を覆われた姿が目に入り、思わずふはっと吹き出した。
ナギちゃん……っ!
これ狙ってやったの…………っ?
下を向くと得意げな様子のナギちゃんの姿があり僕は堪らず笑い転げた。彼は僕達のその様子にムスッとしながら未だ雫の垂れる前髪をかき上げる。
顔が露わになったがそれでも収まらない笑いにこのやろ。と言いながら彼が襲いかかって来た。
抱きつかれ脇腹を擽られ更に笑いが止まらなくなってしまう。
「や、ははは、ちょ、ごめんなさ、ふはっ」
「すげー笑いやがってこの野郎っ」
「ごめ、ごめんって、うはは、や、本当に…っ」
お風呂場には子供達の笑い声が絶えず響き渡っていたーーーー